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2 夫と再会した後の私のそれから
18 二度目の結婚式直前の控室にて
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「改めて結婚式をする必要はあるのかしら?」
「だって、私達は前回の結婚式を見てないですし。まぁ、ご当主様……じゃなくて旦那様の晴れ姿はどうでもいいんですけど。奥様ったら、やっぱりまるでお姫様みたいじゃないですか! ホラ、あまりイベントのない村だから、子ども達も結婚式とか喜びますし。お二人の節目としてもいいんじゃないですか?」
いそいそとドレスを着着けて、髪を整え、化粧を施すアンの方が主役のアイリーンより浮かれた様子だ。一度目の結婚式の時より、質素でシンプルなドレスをアイリーンはなでた。
前回は次期公爵夫婦の結婚ということで、豪華な衣装を身にまとっていた。その時は、宝石やこの国の特産品である繊細なレースをふんだんに使った素晴らしいドレスだった。今日、アイリーンが身にまとっているのは、シンプルな形のドレスで、装飾と言えば、ドレスの裾に入っている銀糸で施された刺繍だけだ。でも、その刺繍はアンやタニアをはじめとした村人達が一針一針刺してくれたもので、薔薇の花をかたどった模様はずっと見ていられるくらい美しい。香り袋の袋を縫うのでさえ器用にできなかったアイリーンには一体どうやってこんな見事な刺繍を刺せるのかわからないけど、皆がかけてくれた手間と気持ちがうれしい。
「結局、なんだか都合のいいようにおさまっちゃったのよね……」
アンに化粧の仕上げをしてもらいながら、嵐の夜にクリストファーが転がり込んできてからの顛末を思い返す。クリストファーの叔父との話し合いの後、クリストファーは一旦、王都の公爵邸に戻り、叔父に公爵家に関することの引き継ぎをした。
その後、クリストファーとアイリーンは亡くなったことになっている。元々、病気療養中という名目の第一夫人のアイリーンの訃報は特に問題がなかった。クリストファーの死を偽装するのは、大変なのではないか?と思ったが、さすが公爵家。特に混乱もなかった。僻地にいたアイリーンは詳細は知らないが、世の中、大抵の事はお金と権力があればなんとかなるということを知った。
レッドフォード公爵家は、すんなり叔父が跡を継ぎ、悲劇の第二夫人のアンジェリカがスライドして妻となり、二人で公爵家をまわしている。長男に続き、双子の女の子も生まれて、賑やかに暮らしているようだ。
アイリーンとクリストファーは、死亡を偽装した後、顔を変えることもなく名前を変えることもなく、アイリーンが幽閉されている村の小さな屋敷で変わらずに暮らしている。レッドフォードという姓がなくなっただけで、驚くほど変わらない生活を送っていた。
そしてなぜか、この村の教会でクリストファーと結婚式をもう一度挙げることになったのだ。
「奥様、いつも美しいですけど、今日は更に輝きを増していますね」
「奥様、顔を動かさないでください! あと、部外者は出てってください! 旦那様より先に花嫁を見ないでください!」
ひょっこり現れた神父と鏡越しに目が合う。真剣に化粧をしているアンからアイリーンや神父に叱責が飛ぶ。
「はー。あわよくばと思っていたけど、奥様の一途さに神様が味方したんですかねぇ……本当にクリストファーでいいんですか?」
「ふふっ。誰になんて言われても、クリストファーがいいの」
「神父様、結婚式当日の花嫁になんて質問してるんですか……」
神父からの問いかけにアイリーンは迷いなく答える。アイリーンとクリストファーの間にあるのは愛なんて綺麗なものじゃなくて、執着とか依存なのかもしれない。それでもクリストファーがアイリーンにとってかけがえのない存在なのには変わりがない。
「あなたはその、大丈夫なの? えーと、血縁上の父親が同じくらいの年頃の女生と結婚したり子どもができたりっていう……」
「僕はこの村で色々な人から愛情を受けて育ったんです。あなたが以前言ったように、僕はこの村も村に住む人を愛しているし、感謝している。血縁上の父親になにもしてもらわなかったとしてもね。それに、前にも言ったでしょう? 僕は反省し、悔い改めた人には幸せが降り注いでも良いと思っているんですよ。例えそれが、身勝手な血縁上の父親だとしてもね」
神父の顔はとても穏やかで、柔らかい笑みを浮かべている。
「奥様にお祝いにいい事を教えてあげましょう。公爵夫人としてあなたに足りなかったのは、黒さですよ。かつてのあなたの傲慢さや人を利用して自分を良く見せようとする所も、表裏のある所も、人の懐に入るのが上手い所も、公爵夫人としては悪くない。むしろ、それぐらいでないと人の上に立てない。ただ、上手く立ち回れなかっただけですよ。ちょっぴり浅はかで腹黒さや賢さが足りなかっただけですよ。むしろ、そんなあなたを先代公爵夫婦は利用したんです。あなたがどんな人であれ、最終的に公爵夫人になるのはアンジェリカ様というのが規定路線だった。あなたがうまい事やっていても、結局、振り落とされていたんです。だから、もう公爵家への罪悪感も持たなくていいし、自分を責めなくていいんです。幸せになってください」
「黒さが足りない……?」
「物事を一つの方向からだけ見るのではなく、色々な方向から見たほうがいいですよ。とにかく、皆が納得するところに落ち着いたから、これからは自分が幸せになることだけ考えればいいんですよ」
「ちゃんと理解できていないけど、気持ちはうれしいわ。ありがとう」
神父はアイリーンの手を取ると、手袋越しにキスを落した。
「だから、お前は距離感が近いんだよ。私のアイリーンに近寄るな」
突然現れたクリストファーが、神父をアイリーンから引きはがして、アイリーンを抱き寄せる。
「クリストファーにもお祝いにいい事を教えてあげましょう。僕の奥様に対する想いは、どちらかというと母親を求めるような気持ちだったんです。母親の絵姿を見たことがあるのですが、奥様にそっくりなんです。しかも、あなたのようなクズの全てを受け止める母性。僕は、奥様に母親を重ねて恋い慕っていたのかもしれません。まぁ、あなたの気持ちも綺麗なものではないかもしれないですけどね……気持ちの重さでは全然負けているので、潔く身を引きますよ」
「ちょっと、旦那様、ドレスが皺になりますって! もう、関係ない人は出て行ってください! 最高の状態で奥様を結婚式に挑ませたいんです!」
ちっとも化粧の作業が進まなくて苛立ったアンに、神父とクリストファーは控室から追い出された。
「だって、私達は前回の結婚式を見てないですし。まぁ、ご当主様……じゃなくて旦那様の晴れ姿はどうでもいいんですけど。奥様ったら、やっぱりまるでお姫様みたいじゃないですか! ホラ、あまりイベントのない村だから、子ども達も結婚式とか喜びますし。お二人の節目としてもいいんじゃないですか?」
いそいそとドレスを着着けて、髪を整え、化粧を施すアンの方が主役のアイリーンより浮かれた様子だ。一度目の結婚式の時より、質素でシンプルなドレスをアイリーンはなでた。
前回は次期公爵夫婦の結婚ということで、豪華な衣装を身にまとっていた。その時は、宝石やこの国の特産品である繊細なレースをふんだんに使った素晴らしいドレスだった。今日、アイリーンが身にまとっているのは、シンプルな形のドレスで、装飾と言えば、ドレスの裾に入っている銀糸で施された刺繍だけだ。でも、その刺繍はアンやタニアをはじめとした村人達が一針一針刺してくれたもので、薔薇の花をかたどった模様はずっと見ていられるくらい美しい。香り袋の袋を縫うのでさえ器用にできなかったアイリーンには一体どうやってこんな見事な刺繍を刺せるのかわからないけど、皆がかけてくれた手間と気持ちがうれしい。
「結局、なんだか都合のいいようにおさまっちゃったのよね……」
アンに化粧の仕上げをしてもらいながら、嵐の夜にクリストファーが転がり込んできてからの顛末を思い返す。クリストファーの叔父との話し合いの後、クリストファーは一旦、王都の公爵邸に戻り、叔父に公爵家に関することの引き継ぎをした。
その後、クリストファーとアイリーンは亡くなったことになっている。元々、病気療養中という名目の第一夫人のアイリーンの訃報は特に問題がなかった。クリストファーの死を偽装するのは、大変なのではないか?と思ったが、さすが公爵家。特に混乱もなかった。僻地にいたアイリーンは詳細は知らないが、世の中、大抵の事はお金と権力があればなんとかなるということを知った。
レッドフォード公爵家は、すんなり叔父が跡を継ぎ、悲劇の第二夫人のアンジェリカがスライドして妻となり、二人で公爵家をまわしている。長男に続き、双子の女の子も生まれて、賑やかに暮らしているようだ。
アイリーンとクリストファーは、死亡を偽装した後、顔を変えることもなく名前を変えることもなく、アイリーンが幽閉されている村の小さな屋敷で変わらずに暮らしている。レッドフォードという姓がなくなっただけで、驚くほど変わらない生活を送っていた。
そしてなぜか、この村の教会でクリストファーと結婚式をもう一度挙げることになったのだ。
「奥様、いつも美しいですけど、今日は更に輝きを増していますね」
「奥様、顔を動かさないでください! あと、部外者は出てってください! 旦那様より先に花嫁を見ないでください!」
ひょっこり現れた神父と鏡越しに目が合う。真剣に化粧をしているアンからアイリーンや神父に叱責が飛ぶ。
「はー。あわよくばと思っていたけど、奥様の一途さに神様が味方したんですかねぇ……本当にクリストファーでいいんですか?」
「ふふっ。誰になんて言われても、クリストファーがいいの」
「神父様、結婚式当日の花嫁になんて質問してるんですか……」
神父からの問いかけにアイリーンは迷いなく答える。アイリーンとクリストファーの間にあるのは愛なんて綺麗なものじゃなくて、執着とか依存なのかもしれない。それでもクリストファーがアイリーンにとってかけがえのない存在なのには変わりがない。
「あなたはその、大丈夫なの? えーと、血縁上の父親が同じくらいの年頃の女生と結婚したり子どもができたりっていう……」
「僕はこの村で色々な人から愛情を受けて育ったんです。あなたが以前言ったように、僕はこの村も村に住む人を愛しているし、感謝している。血縁上の父親になにもしてもらわなかったとしてもね。それに、前にも言ったでしょう? 僕は反省し、悔い改めた人には幸せが降り注いでも良いと思っているんですよ。例えそれが、身勝手な血縁上の父親だとしてもね」
神父の顔はとても穏やかで、柔らかい笑みを浮かべている。
「奥様にお祝いにいい事を教えてあげましょう。公爵夫人としてあなたに足りなかったのは、黒さですよ。かつてのあなたの傲慢さや人を利用して自分を良く見せようとする所も、表裏のある所も、人の懐に入るのが上手い所も、公爵夫人としては悪くない。むしろ、それぐらいでないと人の上に立てない。ただ、上手く立ち回れなかっただけですよ。ちょっぴり浅はかで腹黒さや賢さが足りなかっただけですよ。むしろ、そんなあなたを先代公爵夫婦は利用したんです。あなたがどんな人であれ、最終的に公爵夫人になるのはアンジェリカ様というのが規定路線だった。あなたがうまい事やっていても、結局、振り落とされていたんです。だから、もう公爵家への罪悪感も持たなくていいし、自分を責めなくていいんです。幸せになってください」
「黒さが足りない……?」
「物事を一つの方向からだけ見るのではなく、色々な方向から見たほうがいいですよ。とにかく、皆が納得するところに落ち着いたから、これからは自分が幸せになることだけ考えればいいんですよ」
「ちゃんと理解できていないけど、気持ちはうれしいわ。ありがとう」
神父はアイリーンの手を取ると、手袋越しにキスを落した。
「だから、お前は距離感が近いんだよ。私のアイリーンに近寄るな」
突然現れたクリストファーが、神父をアイリーンから引きはがして、アイリーンを抱き寄せる。
「クリストファーにもお祝いにいい事を教えてあげましょう。僕の奥様に対する想いは、どちらかというと母親を求めるような気持ちだったんです。母親の絵姿を見たことがあるのですが、奥様にそっくりなんです。しかも、あなたのようなクズの全てを受け止める母性。僕は、奥様に母親を重ねて恋い慕っていたのかもしれません。まぁ、あなたの気持ちも綺麗なものではないかもしれないですけどね……気持ちの重さでは全然負けているので、潔く身を引きますよ」
「ちょっと、旦那様、ドレスが皺になりますって! もう、関係ない人は出て行ってください! 最高の状態で奥様を結婚式に挑ませたいんです!」
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