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2 夫と再会した後の私のそれから
17 追い詰められて零れ出た私の本音
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お義母様から、公爵家に伝わるこの指輪を譲られた時に、即死できるものだと聞いた。苦しむのか、安らかなものなのかは教えられていない。できることなら、苦しまずにすぐにこと切れたい。公爵家を出る時にもこの指輪を取り上げられることはなかった。今ならわかる。お義母様は、きっとアイリーンにもっと早くにこの指輪を使って欲しかったのだろう。クリストファーをこんなに苦しめる前に。
「ぐぅっ」
アイリーンを拘束していた叔父が、その太い指をアイリーンの喉元に突っ込んできた。あまりの苦しさに嘔吐する。
「水だ、クリス!」
水を飲まされ、また指を突っ込まれ、それも吐き出させられる。なぜ、アイリーンを処分しろといった叔父が必死になって、アイリーンを救命するのかわからない。喉がひりつく感覚と、嘔吐した気持ち悪さで、涙目になり荒い息を繰り返す。
「クリス、解毒薬もってんだろよこせ」
「それには、及びません。奥様の指輪に仕込まれた毒は偽物とすり替えてありました。それは偽薬で、喉が少しヒリヒリするだけで、体に害はありません」
水差しを持ってきたダンが静かに告げる。その言葉に周りにほっとした空気が流れる。
「アイリーン、なんでこんなこと……」
アイリーンに血や吐瀉物の汚れがついているのも構わずに、クリストファーが抱きしめる。
「……して、しまったから」
喉がヒリヒリして掠れた声しかでない。
「あなたを愛してしまったから、あなたの足かせになるくらいなら、もう消えたかったの……お願い、それくらい許して……ここに隔離された時はあなたのこと私の付属物みたいに思ってたからのうのうと生きていられたわ。でも、今はもう耐えられない……あなたの重荷になることも、あなたと会えなくなることも」
「見誤ったな……君を追い詰めるつもりじゃなかったんだ」
叔父が、ポリポリと頭を掻きながらつぶやく。
「じゃあなんで、首を切ったんだ?」
クリストファーがアイリーンの首筋を確認しながら、問いただす。
「切ってないよ。アイリーンちゃんの首に当ててたのは、刃じゃない方だよ。切ったのは俺の指だよ。遠いし角度の関係で見えてなかったのか、お前も気づいてなかったな。まいったなー。揺さぶって、クリスの本音が聞きたかっただけなのに」
「いらない」
クリストファーが叔父を見ずに告げる。アイリーンの嗚咽が静かに部屋に響く。クリストファーの腕から抜け出そうともがくのに離してくれない。
「全部いらない。アイリーン以外は。サインする。叔父さんが背負ってくれるなら、公爵家も当主の座も第二夫人も子どもも全部譲る」
「クリストファー……なにをバカなことを……」
「ああ、私は馬鹿だ。目の前でアイリーンがいなくなるって状況になるまで、公爵家当主っていう自分を捨てられなかったんだから。殴っていいよ。アイリーンと公爵家を天秤にかけて迷ったんだよ。私は大馬鹿者だよ。ねぇ、アイリーンいなくならないで。私を置いていかないで」
クリストファーにきつく抱きしめられ、懇願されても、アイリーンにはすぐには受け入れられない。結局、アイリーンのために、クリストファーは公爵家当主の座を捨てることになるのだろうか?
「本当にお前は馬鹿だよ。ま、今回は間一髪だったけど。お前さ向いてなかったんだよ。このままがんばっても潰れていたし、不幸が連鎖してくだけさ。おじさんに任せておきな。時代はちょっとずつ変わってんだよ。この保守的な国の貴族に風穴あけてやるよ。そしたらもうちょっと、みんな生きやすくなるだろう?」
アイリーンに突き付けていたナイフをパチリと仕舞うと叔父はそう宣った。クリストファーとアイリーンを見る青色の目は優しい色をしていた。
◇◇
クリストファーもまだ本調子ではないし、アイリーンも色々あって混乱しているので、今後についての話し合いは明日、改めてということで解散になった。叔父はこの邸に泊まっていくらしい。風呂や食事を済ませて、いつもよりずいぶん早い時間にベッドに入っている。
「ねー、アイリーン。昼間のセリフをもう一回言ってよ」
「ふん、妻が刺されそうになってるのに見殺しにしようとした薄情な夫に言うことはありません」
本当はいつものようにクリストファーの腕の中で眠れることに幸せを感じているのに、出てくるのは憎まれ口だけだ。
「アイリーン」
「なによ?」
クリストファーの方を見るとアイリーンを真っすぐに空色の瞳が見つめている。
「愛してる」
「わ、わたしも愛してる、と言えないこともない」
やっぱり通常の生活に戻ると素直になれない。ふいと視線をそらす。
「愛してる」
唇が合わさる。クリストファーはそっとアイリーンのガウンを滑らすと耳元でささやく。クリストファーの少し低い声が体に直接響く。その言葉が体中に広がり、満ちていく。気がつくとアイリーンの両目から涙が伝わっていた。クリストファーは、その涙をすくい取るように舐める。
ゆっくりと唇を合わせるとお互い味わうようにキスをする。キスをしたところから、溶けそうになる。
気持ちが通じ合うとこんなにも全てが心地いいのだろうか?
いつもより一つ一つの行為に官能の火がつく。クリストファーもアイリーンという人間を確かめるように丁寧になぞっていく。クリストファーの視線が、体温が、触れているところが全て気持ちいい。
「クリストファー、クリストファー」
クリストファーが入ってきてからはただクリストファーを感じて、名前を繰り返すことしかできない。クリストファーもアイリーンを強く抱きしめて、何度も腰を打ち付ける。
「アイリーン、愛してる」
クリストファーがアイリーンの中に果てて、温かいものがお腹の中に広がるのを感じて、幸せを感じる。そのまましっかりと抱き合ったまま二人は眠りに落ちていった。
◇◇
「んー、あれ裸?」
クリストファーと何度も交わっているが、ベッドで交わった後、いつもは二人とも何か着ていたはず。しかも股の間になにか挟まっているような、違和感がある。
「んんん? 入れたままだった? クリストファー、ちょっと離れて。んんむ」
まだ寝ていると思っていたクリストファーがいきなり濃厚なキスをしたと思うと、アイリーンの中のクリストファーのものが固さを増した。
「ちょっとクリストファー! ねぼけてるの?」
「今起きた。あれも起きた」
「ちょっと離してって。あんっ!」
クリストファーが固くなったもので、アイリーンの中を掻きまわした。とたんに昨夜を思い出し、濃厚な官能の波に攫われそうになる。
「ちょっと叔父さんも泊まっているし、今後の話し合いをするんでしょう?」
「でもおさまりつかない。いいでしょアイリーン?」
「ちょっとだめぇ……」
アイリーンは拒もうと思うのに、ねだるように腰を押し付けてしまう。
クリストファーはアイリーンから一度引き抜いて、アイリーンをうつ伏せにすると腰を上げた。そのまま一気に後ろから突き刺して、激しく打ち付ける。
「あっあっあん、気持ちいい……」
「ほら、アイリーンのなかもぐちゃぐちゃで喜んでるよ。吸い付いて離れないじゃないか」
しばらく腰を打ち付けていたクリストファーの動きがふいに止まった。
「クリストファー?」
「アイリーン。約束して。なにがあっても、勝手に死のうとしないで」
「………あぅっ」
突然、奥を突かれて、アイリーンから嬌声が零れる。
「約束して、アイリーン。私の前から消えないって」
更に奥をぐりぐりと突かれて、気持ちよさで頭が真っ白になる。
「わかった、わかったからぁ。約束するから、続きして……」
クリストファーはアイリーンの首筋を甘噛みして、噛んだ後を一しきり舐めた後ようやく、行為を再開してくれた。
「ね、クリストファー、そろそろ行かないと……」
「えーどうしよっかな……」
散々アイリーンを翻弄し、中で果てた後、クリストファーはアイリーンからまだ自身のものを抜かずにアイリーンの背中に吸い付いて跡を残している。
「そうだよ。本当に猿だな。いつまでやってんだよ。叔父様がお待ちかねだぞ」
部屋の入口で腕を組んで佇む叔父を見て、二人の顔色がざっと青くなる。クリストファーは瞬時に、自身のものを抜くと、アイリーンをシーツでくるんだ。
「叔父さん! のぞき見すんなよ! アイリーンの裸を見るなよ!」
「だってさー、止めないと君たち、一日中交わってるでしょ? 早く着替えて、さっさと終わらせようぜー。俺だって早く帰って愛する女を抱きたいんだよ」
昨日の物騒さとは真逆で、叔父との話し合いは平和で淡々と進んだようだ。お互いの思いや希望を腹を割って話し、「納得のいく落としどころを見つけることができた」とクリストファーは話し合いの後に、すっきりとした顔で笑って言った。
「ぐぅっ」
アイリーンを拘束していた叔父が、その太い指をアイリーンの喉元に突っ込んできた。あまりの苦しさに嘔吐する。
「水だ、クリス!」
水を飲まされ、また指を突っ込まれ、それも吐き出させられる。なぜ、アイリーンを処分しろといった叔父が必死になって、アイリーンを救命するのかわからない。喉がひりつく感覚と、嘔吐した気持ち悪さで、涙目になり荒い息を繰り返す。
「クリス、解毒薬もってんだろよこせ」
「それには、及びません。奥様の指輪に仕込まれた毒は偽物とすり替えてありました。それは偽薬で、喉が少しヒリヒリするだけで、体に害はありません」
水差しを持ってきたダンが静かに告げる。その言葉に周りにほっとした空気が流れる。
「アイリーン、なんでこんなこと……」
アイリーンに血や吐瀉物の汚れがついているのも構わずに、クリストファーが抱きしめる。
「……して、しまったから」
喉がヒリヒリして掠れた声しかでない。
「あなたを愛してしまったから、あなたの足かせになるくらいなら、もう消えたかったの……お願い、それくらい許して……ここに隔離された時はあなたのこと私の付属物みたいに思ってたからのうのうと生きていられたわ。でも、今はもう耐えられない……あなたの重荷になることも、あなたと会えなくなることも」
「見誤ったな……君を追い詰めるつもりじゃなかったんだ」
叔父が、ポリポリと頭を掻きながらつぶやく。
「じゃあなんで、首を切ったんだ?」
クリストファーがアイリーンの首筋を確認しながら、問いただす。
「切ってないよ。アイリーンちゃんの首に当ててたのは、刃じゃない方だよ。切ったのは俺の指だよ。遠いし角度の関係で見えてなかったのか、お前も気づいてなかったな。まいったなー。揺さぶって、クリスの本音が聞きたかっただけなのに」
「いらない」
クリストファーが叔父を見ずに告げる。アイリーンの嗚咽が静かに部屋に響く。クリストファーの腕から抜け出そうともがくのに離してくれない。
「全部いらない。アイリーン以外は。サインする。叔父さんが背負ってくれるなら、公爵家も当主の座も第二夫人も子どもも全部譲る」
「クリストファー……なにをバカなことを……」
「ああ、私は馬鹿だ。目の前でアイリーンがいなくなるって状況になるまで、公爵家当主っていう自分を捨てられなかったんだから。殴っていいよ。アイリーンと公爵家を天秤にかけて迷ったんだよ。私は大馬鹿者だよ。ねぇ、アイリーンいなくならないで。私を置いていかないで」
クリストファーにきつく抱きしめられ、懇願されても、アイリーンにはすぐには受け入れられない。結局、アイリーンのために、クリストファーは公爵家当主の座を捨てることになるのだろうか?
「本当にお前は馬鹿だよ。ま、今回は間一髪だったけど。お前さ向いてなかったんだよ。このままがんばっても潰れていたし、不幸が連鎖してくだけさ。おじさんに任せておきな。時代はちょっとずつ変わってんだよ。この保守的な国の貴族に風穴あけてやるよ。そしたらもうちょっと、みんな生きやすくなるだろう?」
アイリーンに突き付けていたナイフをパチリと仕舞うと叔父はそう宣った。クリストファーとアイリーンを見る青色の目は優しい色をしていた。
◇◇
クリストファーもまだ本調子ではないし、アイリーンも色々あって混乱しているので、今後についての話し合いは明日、改めてということで解散になった。叔父はこの邸に泊まっていくらしい。風呂や食事を済ませて、いつもよりずいぶん早い時間にベッドに入っている。
「ねー、アイリーン。昼間のセリフをもう一回言ってよ」
「ふん、妻が刺されそうになってるのに見殺しにしようとした薄情な夫に言うことはありません」
本当はいつものようにクリストファーの腕の中で眠れることに幸せを感じているのに、出てくるのは憎まれ口だけだ。
「アイリーン」
「なによ?」
クリストファーの方を見るとアイリーンを真っすぐに空色の瞳が見つめている。
「愛してる」
「わ、わたしも愛してる、と言えないこともない」
やっぱり通常の生活に戻ると素直になれない。ふいと視線をそらす。
「愛してる」
唇が合わさる。クリストファーはそっとアイリーンのガウンを滑らすと耳元でささやく。クリストファーの少し低い声が体に直接響く。その言葉が体中に広がり、満ちていく。気がつくとアイリーンの両目から涙が伝わっていた。クリストファーは、その涙をすくい取るように舐める。
ゆっくりと唇を合わせるとお互い味わうようにキスをする。キスをしたところから、溶けそうになる。
気持ちが通じ合うとこんなにも全てが心地いいのだろうか?
いつもより一つ一つの行為に官能の火がつく。クリストファーもアイリーンという人間を確かめるように丁寧になぞっていく。クリストファーの視線が、体温が、触れているところが全て気持ちいい。
「クリストファー、クリストファー」
クリストファーが入ってきてからはただクリストファーを感じて、名前を繰り返すことしかできない。クリストファーもアイリーンを強く抱きしめて、何度も腰を打ち付ける。
「アイリーン、愛してる」
クリストファーがアイリーンの中に果てて、温かいものがお腹の中に広がるのを感じて、幸せを感じる。そのまましっかりと抱き合ったまま二人は眠りに落ちていった。
◇◇
「んー、あれ裸?」
クリストファーと何度も交わっているが、ベッドで交わった後、いつもは二人とも何か着ていたはず。しかも股の間になにか挟まっているような、違和感がある。
「んんん? 入れたままだった? クリストファー、ちょっと離れて。んんむ」
まだ寝ていると思っていたクリストファーがいきなり濃厚なキスをしたと思うと、アイリーンの中のクリストファーのものが固さを増した。
「ちょっとクリストファー! ねぼけてるの?」
「今起きた。あれも起きた」
「ちょっと離してって。あんっ!」
クリストファーが固くなったもので、アイリーンの中を掻きまわした。とたんに昨夜を思い出し、濃厚な官能の波に攫われそうになる。
「ちょっと叔父さんも泊まっているし、今後の話し合いをするんでしょう?」
「でもおさまりつかない。いいでしょアイリーン?」
「ちょっとだめぇ……」
アイリーンは拒もうと思うのに、ねだるように腰を押し付けてしまう。
クリストファーはアイリーンから一度引き抜いて、アイリーンをうつ伏せにすると腰を上げた。そのまま一気に後ろから突き刺して、激しく打ち付ける。
「あっあっあん、気持ちいい……」
「ほら、アイリーンのなかもぐちゃぐちゃで喜んでるよ。吸い付いて離れないじゃないか」
しばらく腰を打ち付けていたクリストファーの動きがふいに止まった。
「クリストファー?」
「アイリーン。約束して。なにがあっても、勝手に死のうとしないで」
「………あぅっ」
突然、奥を突かれて、アイリーンから嬌声が零れる。
「約束して、アイリーン。私の前から消えないって」
更に奥をぐりぐりと突かれて、気持ちよさで頭が真っ白になる。
「わかった、わかったからぁ。約束するから、続きして……」
クリストファーはアイリーンの首筋を甘噛みして、噛んだ後を一しきり舐めた後ようやく、行為を再開してくれた。
「ね、クリストファー、そろそろ行かないと……」
「えーどうしよっかな……」
散々アイリーンを翻弄し、中で果てた後、クリストファーはアイリーンからまだ自身のものを抜かずにアイリーンの背中に吸い付いて跡を残している。
「そうだよ。本当に猿だな。いつまでやってんだよ。叔父様がお待ちかねだぞ」
部屋の入口で腕を組んで佇む叔父を見て、二人の顔色がざっと青くなる。クリストファーは瞬時に、自身のものを抜くと、アイリーンをシーツでくるんだ。
「叔父さん! のぞき見すんなよ! アイリーンの裸を見るなよ!」
「だってさー、止めないと君たち、一日中交わってるでしょ? 早く着替えて、さっさと終わらせようぜー。俺だって早く帰って愛する女を抱きたいんだよ」
昨日の物騒さとは真逆で、叔父との話し合いは平和で淡々と進んだようだ。お互いの思いや希望を腹を割って話し、「納得のいく落としどころを見つけることができた」とクリストファーは話し合いの後に、すっきりとした顔で笑って言った。
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