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2 夫と再会した後の私のそれから
15 嵐の日に聞いた嵐のような真実
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もうすぐクリストファーが会いに来るわね……
アイリーンは複雑な気持ちで暖炉の炎を眺めた。外では季節外れの嵐のせいで風がゴーゴーと唸る音が聞こえる。
クリストファーが母の墓参りに連れて行ってくれて、アンジェリカが訊ねて来て、この一週間でアイリーンは精神的に疲れていた。墓参りの日も母の墓の前で錯乱し、帰りの馬車では自分から迫ってしまい、縋ってしまった。次にクリストファーに会った時にどんな顔をしたらいいのかわからない。でも、二枚のメッセージカードを見ると、会いたいと思う。ただ、顔を見るだけでもいいから……
でも、アンジェリカがアイリーンに釘を刺したからには、クリストファーにも苦言を呈しているだろう。しばらくは、会いに来ないかもしれない。いや、会う約束をしているわけではないから、クリストファーが会いたいと思わなければ、いつでも、断ち切られてしまう関係だ。その事実に、胸がずきりと痛くなる。
外では雨風が強いようで、窓枠がガタガタと揺れて、窓に雨が打ち付けている。
この嵐が続いたら、どのみち、会いには来られないだろう……
その時、廊下をバタバタと走る足音がしたかと思ったら、アイリーンの部屋の扉がバタンッと開いた。
「えっ? クリストファー?」
アイリーンの夫はなぜ、いつもなんの前触れもなく突然現れるのだろう?
部屋の扉を開いたまま、クリストファーが佇んでいた。
馬に乗って駆けてきたのか、黒い乗馬服には跳ねた泥があちこちついていて、雨水を吸って重そうだ。いつもはサラリと揺れている金髪もぐっしょりと水を含んでいて、服から水が滴っていて、足元に水たまりを作っている。
なによりその表情は、暗い。最近は少し表情が明るくなってきたかと思ったのに、空色の瞳には絶望しかないように見えた。
「どうしたの? クリストファー? なんでこんな嵐の中を?」
クリストファーのただ事ではない様子にたまらなくなって、アイリーンは駆け寄った。
目の前に来たアイリーンをクリストファーはきつく抱きしめた。
「私は生まれてくるべきではなかったんだ……」
アイリーンにしがみつくように抱き着いているクリストファーが小さく呟いた。
「クリストファー……」
クリストファーはアイリーンを抱きしめたまま、ズルズルと床にへたり込んでいった。腰から足へとアイリーンを囲う腕も下へと下がっていく。
「私は、父と母の子ではなかった。祖父と母の子だったんだ」
アイリーンの足を縋るように抱きしめながら、クリストファーが告げる。あまりの衝撃にアイリーンは何を言っていいのかわからない。
「うわぁぁぁぁぁーーー」
クリストファーはアイリーンから手を離すと、床に突っ伏して、悲鳴のような慟哭をあげた。床に蹲るクリストファーをアイリーンは覆いかぶさるように、ただ抱きしめる事しかできなかった。抱きしめるアイリーンの服がクリストファーの服の水分を吸って、水が染みてくる。その様がまるでクリストファーの苦しい胸の内を現しているようで、アイリーンの胸まできしんだ。
「アイリーン……私が気持ち悪くないか?」
クリストファーがふいに顔を上げて、アイリーンに問いかける。
「えっ? 驚いたし、お義父様やお義母様の心情を思うと複雑だけど、別に気持ち悪くはないわよ。それに公爵家の血を引いているのだから堂々としていたらいいのよ」
「……滑稽だろ。私は祖父と母の子で、私の第二夫人の子どもは叔父が父親だ。私はなんのためにいるんだろうな……」
「他の人の気持ちは知らない。でも、私はクリストファーがいないと生きていけないわよ。だって、他の人が当主になっちゃたら、お祓い箱で、ご飯を食べてぬくぬくと生きていけないでしょ。それにあなたのせいであなたの体なしでは生きていけない体になっちゃったのよ」
「ふっふっふっ。それもそうか」
二人して床に座り込んだまま話していたら、クリストファーがキスをして、アイリーンを抱きしめた。
「アイリーンは私のものだ。公爵家のものじゃない。私だけのものだ」
「そうよ。あなただけのものよ。ご主人様」
アイリーンは冗談めかして答えたけど、クリストファーの孤独と心の傷を思うと、やるせなくなる。
改めて公爵家が背負う物の重さを感じた。血を繋ぐとはこれほど、シビアな事なのか?
自分に子種がないからと、自分の近しい血縁者と妻が交わる事を割り切らなければいけないのか?
クリストファーは自分と公爵家の重荷を一緒に背負ってくれると信じていた妻のアイリーンが張りぼてだった。
そして、娶った第二夫人が産んだ子どもは自分の叔父との間の子どもで、自分には子種がないと知る。
さらには、自分は祖父と母との間の子どもだった。
支えてくれる人も信じられる人もいない中で、ボロボロに傷つきながらここまで、公爵家を一人で背負ってきたのだろう。その気持ちが折れてしまっても仕方がないのかもしれない。
クリストファーが公爵家当主としてがんばってくれていたおかげで、アイリーンは自分や過去と向き合う時間を得て、なに不自由なくぬくぬくと暮らしてこれたのだ。
「本当に、あなたの言う通り、私は自分の事しか考えていなかったわね……」
あの後、クリストファーとアイリーンは家令と侍女に諭されて、それぞれ風呂に入り着替えて、今は客間の広いベッドに二人で一緒に横になっている。ベッドに入るなり、クリストファーは眠ってしまった。
アイリーンは寝つけなくて、ベッドから体を起こし、クリストファーの目を瞑っていても綺麗な顔立ちをぼんやりと眺める。
「婚約者が私じゃなかったなら……」
思い返してみれば、クリストファーは幼少時からしっかりしていて正義感と責任感のある少年だった。あの頃から、自分が貴族であるということ、公爵家を担っていくという事を理解していたのだろう。
自分にも他人にも厳しい所もあったが、婚約者としてアイリーンを気遣ってくれていたし、アンジェリカなどの粉をかけてくる他の女には見向きもしなかった。
「そりゃ、こんな女なんて見捨てて当然よね……」
レッドフォード公爵家にはクリストファーしか子どもがいない。自分が将来、家督を背負う事へのプレッシャーはかなりのものだっただろう。優秀で支えてくれると思っていた伴侶は嘘つきな見栄っ張りでただの張りぼてだった。怒りも湧いてくるし、見捨てて当然だろう。
「それとも、私がちゃんと努力していて、ちゃんと公爵夫人として隣に立てていたらよかったのかしら
?」
アイリーンが苦手な部分の学習を妹に丸投げせず、自分で努力していたら、アンジェリカやマルティナほど出来は良くなかったかもしれないけど、公爵夫人としては次第点はもらえたかもしれない。そうしたら、堂々とクリストファーを妻として支えられたかもしれない。そうしたら、こんな風にクリストファーは孤独とプレッシャーに押しつぶされる事もなかったかもしれない。
今になって、自分のした事やしなかった事が自分に突き刺さる。ダメだった自分をいくら悔やんでも過去も今も変えられない。わかっていても考えずにいられない。
「まず、アイリーンが婚約者や妻じゃないという話は却下だ。君は昔は自分勝手だったが、私も自分の事と公爵家の事で手一杯で気づく事もフォローする事もできなかった。お互い様だ」
「え?」
「あと、アイリーンがちゃんとしてて、公爵夫人として本宅にいたら、アイリーンが叔父と寝る事になったかもしれない。そんなことになっていたら、私は狂う。だから、それも却下だ」
「え?」
「だから、今が一番いいんだ。これでいいんだ。アイリーンは私だけのものだ」
眠っていると思っていたクリストファーの声がして、そちらをむくと、空色の瞳が真剣な色を湛えてアイリーンを射抜いていた。
「むぐっ、クリストファー、今日は……色々あって……んっ、疲れてるでしょ……」
後頭部に手を添えられて顔ごと引き寄せられると、クリストファーが激しいキスをする。キスの合間に抗議の声をあげる。
「疲れている可哀そうな夫を慰めるのは、妻の仕事だろ?」
からかうように言われて、抵抗したくなるけど、その間にも胸や腰をまさぐられて、アイリーンの体に火がついていく。
「あっ、あっ……あう」
「妻をこんなにいやらしい体にした責任をとらないとな」
軽いやり取りからはじまったが、行為の最中、クリストファーはうわごとのようにアイリーンの名前を呟き続けた。いつもは体位を変えていくのに、ずっと正面から抱き合っていて、時折、アイリーンの存在を確かめるように、ぎゅっと抱きしめられた。そんなクリストファーになぜかアイリーンは泣きたい気持ちになった。
クリストファーのアイリーンへの気持ちは執着とか依存というものなのだろう。
それでも、婚約者だった時や、つかの間の結婚生活の時より、クリストファーを近くに感じて、心の奥が満たされて行った。
アイリーンは複雑な気持ちで暖炉の炎を眺めた。外では季節外れの嵐のせいで風がゴーゴーと唸る音が聞こえる。
クリストファーが母の墓参りに連れて行ってくれて、アンジェリカが訊ねて来て、この一週間でアイリーンは精神的に疲れていた。墓参りの日も母の墓の前で錯乱し、帰りの馬車では自分から迫ってしまい、縋ってしまった。次にクリストファーに会った時にどんな顔をしたらいいのかわからない。でも、二枚のメッセージカードを見ると、会いたいと思う。ただ、顔を見るだけでもいいから……
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「えっ? クリストファー?」
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馬に乗って駆けてきたのか、黒い乗馬服には跳ねた泥があちこちついていて、雨水を吸って重そうだ。いつもはサラリと揺れている金髪もぐっしょりと水を含んでいて、服から水が滴っていて、足元に水たまりを作っている。
なによりその表情は、暗い。最近は少し表情が明るくなってきたかと思ったのに、空色の瞳には絶望しかないように見えた。
「どうしたの? クリストファー? なんでこんな嵐の中を?」
クリストファーのただ事ではない様子にたまらなくなって、アイリーンは駆け寄った。
目の前に来たアイリーンをクリストファーはきつく抱きしめた。
「私は生まれてくるべきではなかったんだ……」
アイリーンにしがみつくように抱き着いているクリストファーが小さく呟いた。
「クリストファー……」
クリストファーはアイリーンを抱きしめたまま、ズルズルと床にへたり込んでいった。腰から足へとアイリーンを囲う腕も下へと下がっていく。
「私は、父と母の子ではなかった。祖父と母の子だったんだ」
アイリーンの足を縋るように抱きしめながら、クリストファーが告げる。あまりの衝撃にアイリーンは何を言っていいのかわからない。
「うわぁぁぁぁぁーーー」
クリストファーはアイリーンから手を離すと、床に突っ伏して、悲鳴のような慟哭をあげた。床に蹲るクリストファーをアイリーンは覆いかぶさるように、ただ抱きしめる事しかできなかった。抱きしめるアイリーンの服がクリストファーの服の水分を吸って、水が染みてくる。その様がまるでクリストファーの苦しい胸の内を現しているようで、アイリーンの胸まできしんだ。
「アイリーン……私が気持ち悪くないか?」
クリストファーがふいに顔を上げて、アイリーンに問いかける。
「えっ? 驚いたし、お義父様やお義母様の心情を思うと複雑だけど、別に気持ち悪くはないわよ。それに公爵家の血を引いているのだから堂々としていたらいいのよ」
「……滑稽だろ。私は祖父と母の子で、私の第二夫人の子どもは叔父が父親だ。私はなんのためにいるんだろうな……」
「他の人の気持ちは知らない。でも、私はクリストファーがいないと生きていけないわよ。だって、他の人が当主になっちゃたら、お祓い箱で、ご飯を食べてぬくぬくと生きていけないでしょ。それにあなたのせいであなたの体なしでは生きていけない体になっちゃったのよ」
「ふっふっふっ。それもそうか」
二人して床に座り込んだまま話していたら、クリストファーがキスをして、アイリーンを抱きしめた。
「アイリーンは私のものだ。公爵家のものじゃない。私だけのものだ」
「そうよ。あなただけのものよ。ご主人様」
アイリーンは冗談めかして答えたけど、クリストファーの孤独と心の傷を思うと、やるせなくなる。
改めて公爵家が背負う物の重さを感じた。血を繋ぐとはこれほど、シビアな事なのか?
自分に子種がないからと、自分の近しい血縁者と妻が交わる事を割り切らなければいけないのか?
クリストファーは自分と公爵家の重荷を一緒に背負ってくれると信じていた妻のアイリーンが張りぼてだった。
そして、娶った第二夫人が産んだ子どもは自分の叔父との間の子どもで、自分には子種がないと知る。
さらには、自分は祖父と母との間の子どもだった。
支えてくれる人も信じられる人もいない中で、ボロボロに傷つきながらここまで、公爵家を一人で背負ってきたのだろう。その気持ちが折れてしまっても仕方がないのかもしれない。
クリストファーが公爵家当主としてがんばってくれていたおかげで、アイリーンは自分や過去と向き合う時間を得て、なに不自由なくぬくぬくと暮らしてこれたのだ。
「本当に、あなたの言う通り、私は自分の事しか考えていなかったわね……」
あの後、クリストファーとアイリーンは家令と侍女に諭されて、それぞれ風呂に入り着替えて、今は客間の広いベッドに二人で一緒に横になっている。ベッドに入るなり、クリストファーは眠ってしまった。
アイリーンは寝つけなくて、ベッドから体を起こし、クリストファーの目を瞑っていても綺麗な顔立ちをぼんやりと眺める。
「婚約者が私じゃなかったなら……」
思い返してみれば、クリストファーは幼少時からしっかりしていて正義感と責任感のある少年だった。あの頃から、自分が貴族であるということ、公爵家を担っていくという事を理解していたのだろう。
自分にも他人にも厳しい所もあったが、婚約者としてアイリーンを気遣ってくれていたし、アンジェリカなどの粉をかけてくる他の女には見向きもしなかった。
「そりゃ、こんな女なんて見捨てて当然よね……」
レッドフォード公爵家にはクリストファーしか子どもがいない。自分が将来、家督を背負う事へのプレッシャーはかなりのものだっただろう。優秀で支えてくれると思っていた伴侶は嘘つきな見栄っ張りでただの張りぼてだった。怒りも湧いてくるし、見捨てて当然だろう。
「それとも、私がちゃんと努力していて、ちゃんと公爵夫人として隣に立てていたらよかったのかしら
?」
アイリーンが苦手な部分の学習を妹に丸投げせず、自分で努力していたら、アンジェリカやマルティナほど出来は良くなかったかもしれないけど、公爵夫人としては次第点はもらえたかもしれない。そうしたら、堂々とクリストファーを妻として支えられたかもしれない。そうしたら、こんな風にクリストファーは孤独とプレッシャーに押しつぶされる事もなかったかもしれない。
今になって、自分のした事やしなかった事が自分に突き刺さる。ダメだった自分をいくら悔やんでも過去も今も変えられない。わかっていても考えずにいられない。
「まず、アイリーンが婚約者や妻じゃないという話は却下だ。君は昔は自分勝手だったが、私も自分の事と公爵家の事で手一杯で気づく事もフォローする事もできなかった。お互い様だ」
「え?」
「あと、アイリーンがちゃんとしてて、公爵夫人として本宅にいたら、アイリーンが叔父と寝る事になったかもしれない。そんなことになっていたら、私は狂う。だから、それも却下だ」
「え?」
「だから、今が一番いいんだ。これでいいんだ。アイリーンは私だけのものだ」
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後頭部に手を添えられて顔ごと引き寄せられると、クリストファーが激しいキスをする。キスの合間に抗議の声をあげる。
「疲れている可哀そうな夫を慰めるのは、妻の仕事だろ?」
からかうように言われて、抵抗したくなるけど、その間にも胸や腰をまさぐられて、アイリーンの体に火がついていく。
「あっ、あっ……あう」
「妻をこんなにいやらしい体にした責任をとらないとな」
軽いやり取りからはじまったが、行為の最中、クリストファーはうわごとのようにアイリーンの名前を呟き続けた。いつもは体位を変えていくのに、ずっと正面から抱き合っていて、時折、アイリーンの存在を確かめるように、ぎゅっと抱きしめられた。そんなクリストファーになぜかアイリーンは泣きたい気持ちになった。
クリストファーのアイリーンへの気持ちは執着とか依存というものなのだろう。
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◇画像はGirly Drop様からお借りしました
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