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最終話
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「お察しのとおり! これからまた主サマとセックスしちゃいまーす♪ 昨日は明け方まで抱き尽くさせてもらったけど、まだまだ俺のカタチを主サマの体に覚えさせられたとは言えないんでね。これから毎日毎晩、主サマにたっぷり愛情を注いで、たくさん気持ちよくなってもらって、ますます美貌に磨きが掛かる予定なんで♪ そうだなあ……ひと月くらいかな? 魔女さん、しばらく来なくていいからね」
「うう……やめてくださいよう、そういうこと言うの……」
テレシュナは、これ以上はないほどに顔が熱くなり、足元がふらついてしまった。途端に淫魔に腰を抱き寄せられる。服越しに伝わる体温に、ますます熱が上がっていく。
腰を撫でる卑猥な手付きにびくびくと震えあがっていると、開けっ放しの玄関ドアからドラヒポがぱたぱたと出て来た。
「おまえら! ご主人さまと淫魔さんが励んでる最中は、この家に近付くんじゃないぞー! おまえらに、ご主人さまの可愛い声は絶対に聞かせないんだからなー!」
「ぎゃああ!? ドラヒポちゃん!? なんてことを言うんですか!」
ドラヒポの今の発言はつまり、【家の外までテレシュナの最中の声が聞こえるかを確認しに出て、実際に聞こえてきた】ということを意味していた。
「いいねえ。もっと言ってやって小型ドラゴン君」
テレシュナの腰を抱く腕に力がこもり、今度は背後から両腕をテレシュナの腹に回してぎゅっと抱きついてきた。頭の上に顎を乗せ、軽く首を振って髪に顎をこすり付けてくる。
ふたりの使い魔に翻弄される。激しく動揺したテレシュナが目を回していると、高い所から泣き声のようなうなり声が聞こえてきた。
顔を真っ赤にしたハピニルは、碧眼に涙を浮かべていた。
「くううううう……! ハレンチ! ハレンチだわ! あんた、うぶなふりして好き者だったのね!?」
「いいや? 主サマはホントにうぶだったぜ? 恥じらう主サマには最高にそそられたなあ……」
「うう、もう本当に、勘弁してください……」
恥ずかしさのあまり、膝から崩れ落ちそうになる。
テレシュナがすっかり淫魔に体重を預けていると、ハピニルがぎゅっと目を閉じて金切り声を上げた。
「もういいわよ! 当分来てやらないんだからー!」
足をぶんぶんと振ってゴーレムの胸をかかとで蹴る。乱暴な合図を受けた石人形はその場でゆっくりと背中を向けると、またどしーん、どしーん……と足音を鳴らしながら歩き出した。
その頭には、ハピニルが抱きついている。ゴーレムはおもむろに腕をもたげると、慎重な手付きで主人の背中を撫で出した。
森の木々にゴーレムの後ろ姿が隠れたところで、テレシュナの頭に顎を置いていた淫魔が、髪に頬ずりしてきた。
「さてさて。邪魔者は去ったし。今日も励むとしますかね、主サマ♪」
「ほ、本当に、今すぐに始めるんですか? せめてご飯を食べてからの方がいいんじゃないですか?」
「あー、勝手に台所にあったもん食ったから大丈夫」
「じゃ、じゃあ、いったんシャワーを浴びて来ては?」
「もう浴びて来た。準備万端」
テレシュナの手が片方拾い上げられて、淫魔の髪に触れさせられる。そこは確かに湿り気を帯びていて、湯あみをしたばかりだということを示していた。
もう先延ばしさせる材料がない。テレシュナが素直に応じられずにいると、ドラヒポがぱたぱたと目の前にやってきた。
「観念しなよ、ご主人さま。相手はただの悪魔じゃなくて、淫魔さんなんだよ? ご主人さまは昨日の時点でいっぱいいっぱいだったみたいだけどさ。淫魔さんは、まだ本気じゃなかったかも知れないのに、今からそんなんじゃ先が思いやられるね」
「ご明察、小型ドラゴンくん。実は俺、まだぜーんぜん本気出してないんだよね。本気を出すのは充分に俺に慣れてもらうまで我慢するから、怖がらなくていいぜ、主サマ。ではでは~♪ 寝室へと参りましょう♪」
と言って、膝裏をさらわれてあっという間にお姫様抱っこされる。これからされることを思えば、途端に腹の底が疼き出す。
気持ちはついていけていないにもかかわらず、体は既に淫魔を求めてしまっている。そんな自分に気付いたテレシュナは、涙が浮かぶほどに顔が熱くなった。
「うう、本当に、お手柔らかに、お願いします……」
「任せとけって。一緒にたくさん気持ちよくなろうな、主サマ」
「ご主人さま、がんばれー!」
ドラヒポの無邪気な応援が、一層恥じらいを増幅させていった。
(これからどうなっちゃうんでしょう、私)
しっかりと体を支えてくれる頼もしい腕の上で、そっと目だけで淫魔を見上げる。上機嫌な使い魔はすぐに主人の視線に気付くと、テレシュナを見つめ返して幸せそうな笑みを浮かべた。
「なあ、主サマ。俺、あんたに呼び出せてもらえて良かったって、心の底から思ってる」
「そう、ですか」
「あんたにも、『淫魔リウミオスを召喚できて良かった』って思ってもらえるように頑張るから。期待しとけ」
「は、はい」
とっさに返事しながらも、テレシュナは、既にそう思っていた。
(ありがとうございます、淫魔リウミオスさん。もう私、眼鏡を掛けなくても、人様と向き合えそうです)
まだ声には出したことのない淫魔の名前を呼びながら、その首にすがりつく。熱い体をぎゅっと抱きしめる。
途端にぴたりと足を止めた淫魔の反応を気にせず、テレシュナは感謝の気持ちを込めて、そっと淫魔に頬ずりした。
その仕草は、淫魔に火をつけてしまったようで――。
『我慢する』などという宣言はどこへやら、このあとテレシュナは、淫魔の本気を思い知らされる羽目になったのだった。
〈了〉
「うう……やめてくださいよう、そういうこと言うの……」
テレシュナは、これ以上はないほどに顔が熱くなり、足元がふらついてしまった。途端に淫魔に腰を抱き寄せられる。服越しに伝わる体温に、ますます熱が上がっていく。
腰を撫でる卑猥な手付きにびくびくと震えあがっていると、開けっ放しの玄関ドアからドラヒポがぱたぱたと出て来た。
「おまえら! ご主人さまと淫魔さんが励んでる最中は、この家に近付くんじゃないぞー! おまえらに、ご主人さまの可愛い声は絶対に聞かせないんだからなー!」
「ぎゃああ!? ドラヒポちゃん!? なんてことを言うんですか!」
ドラヒポの今の発言はつまり、【家の外までテレシュナの最中の声が聞こえるかを確認しに出て、実際に聞こえてきた】ということを意味していた。
「いいねえ。もっと言ってやって小型ドラゴン君」
テレシュナの腰を抱く腕に力がこもり、今度は背後から両腕をテレシュナの腹に回してぎゅっと抱きついてきた。頭の上に顎を乗せ、軽く首を振って髪に顎をこすり付けてくる。
ふたりの使い魔に翻弄される。激しく動揺したテレシュナが目を回していると、高い所から泣き声のようなうなり声が聞こえてきた。
顔を真っ赤にしたハピニルは、碧眼に涙を浮かべていた。
「くううううう……! ハレンチ! ハレンチだわ! あんた、うぶなふりして好き者だったのね!?」
「いいや? 主サマはホントにうぶだったぜ? 恥じらう主サマには最高にそそられたなあ……」
「うう、もう本当に、勘弁してください……」
恥ずかしさのあまり、膝から崩れ落ちそうになる。
テレシュナがすっかり淫魔に体重を預けていると、ハピニルがぎゅっと目を閉じて金切り声を上げた。
「もういいわよ! 当分来てやらないんだからー!」
足をぶんぶんと振ってゴーレムの胸をかかとで蹴る。乱暴な合図を受けた石人形はその場でゆっくりと背中を向けると、またどしーん、どしーん……と足音を鳴らしながら歩き出した。
その頭には、ハピニルが抱きついている。ゴーレムはおもむろに腕をもたげると、慎重な手付きで主人の背中を撫で出した。
森の木々にゴーレムの後ろ姿が隠れたところで、テレシュナの頭に顎を置いていた淫魔が、髪に頬ずりしてきた。
「さてさて。邪魔者は去ったし。今日も励むとしますかね、主サマ♪」
「ほ、本当に、今すぐに始めるんですか? せめてご飯を食べてからの方がいいんじゃないですか?」
「あー、勝手に台所にあったもん食ったから大丈夫」
「じゃ、じゃあ、いったんシャワーを浴びて来ては?」
「もう浴びて来た。準備万端」
テレシュナの手が片方拾い上げられて、淫魔の髪に触れさせられる。そこは確かに湿り気を帯びていて、湯あみをしたばかりだということを示していた。
もう先延ばしさせる材料がない。テレシュナが素直に応じられずにいると、ドラヒポがぱたぱたと目の前にやってきた。
「観念しなよ、ご主人さま。相手はただの悪魔じゃなくて、淫魔さんなんだよ? ご主人さまは昨日の時点でいっぱいいっぱいだったみたいだけどさ。淫魔さんは、まだ本気じゃなかったかも知れないのに、今からそんなんじゃ先が思いやられるね」
「ご明察、小型ドラゴンくん。実は俺、まだぜーんぜん本気出してないんだよね。本気を出すのは充分に俺に慣れてもらうまで我慢するから、怖がらなくていいぜ、主サマ。ではでは~♪ 寝室へと参りましょう♪」
と言って、膝裏をさらわれてあっという間にお姫様抱っこされる。これからされることを思えば、途端に腹の底が疼き出す。
気持ちはついていけていないにもかかわらず、体は既に淫魔を求めてしまっている。そんな自分に気付いたテレシュナは、涙が浮かぶほどに顔が熱くなった。
「うう、本当に、お手柔らかに、お願いします……」
「任せとけって。一緒にたくさん気持ちよくなろうな、主サマ」
「ご主人さま、がんばれー!」
ドラヒポの無邪気な応援が、一層恥じらいを増幅させていった。
(これからどうなっちゃうんでしょう、私)
しっかりと体を支えてくれる頼もしい腕の上で、そっと目だけで淫魔を見上げる。上機嫌な使い魔はすぐに主人の視線に気付くと、テレシュナを見つめ返して幸せそうな笑みを浮かべた。
「なあ、主サマ。俺、あんたに呼び出せてもらえて良かったって、心の底から思ってる」
「そう、ですか」
「あんたにも、『淫魔リウミオスを召喚できて良かった』って思ってもらえるように頑張るから。期待しとけ」
「は、はい」
とっさに返事しながらも、テレシュナは、既にそう思っていた。
(ありがとうございます、淫魔リウミオスさん。もう私、眼鏡を掛けなくても、人様と向き合えそうです)
まだ声には出したことのない淫魔の名前を呼びながら、その首にすがりつく。熱い体をぎゅっと抱きしめる。
途端にぴたりと足を止めた淫魔の反応を気にせず、テレシュナは感謝の気持ちを込めて、そっと淫魔に頬ずりした。
その仕草は、淫魔に火をつけてしまったようで――。
『我慢する』などという宣言はどこへやら、このあとテレシュナは、淫魔の本気を思い知らされる羽目になったのだった。
〈了〉
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