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第10話
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「マジかよ、これ……。あんたの中、きつくて、熱くて、最高に気持ちいい……。もっと、強く動いていいか」
「は、はい」
淫魔はやんわりと笑みを浮かべていた。少なくとも不快な思いはさせていないのだと、テレシュナがほっとしたのも束の間。
「――はうっ!」
ずるっと芯を抜き出した淫魔が、その半身全体を一気に押し込んできた。ぱんっと肌の打ち合う音が鳴った瞬間、内臓が押し上げられる感覚と共に、それまで以上の夥しい快感に殴りつけられる。それは一度では終わらなかった。
「あっ! あうっ! はうっ! あ! あ! はああっ……!」
何度も何度も、昂ぶりを引き抜きかけては根元まで押し込む、その動きを繰り返す。硬い芯の切っ先に体内を擦られたときの快感と、一番奥を突き上げられたときの快感と。耐えがたい感覚に交互に襲われてテレシュナは今にも狂いそうになった。
(死んじゃう、怖い、怖い……!)
未知なる感覚が、ひっきりなしに上書きされていく。体が悦びに沸き立つ一方で、心が警鐘を鳴らし始める。それは涙となってあふれ出した。
「ひっ、ううっ、ひっく……」
泣きじゃくり始めた途端、淫魔が攻め立てる動きを止めた。
テレシュナが、眼鏡の内側に指を差し込んで涙をごまかそうとしていると、大きな手のひらが頭を撫で出した。
手を下ろし、涙の向こうを見る。淫魔は申し訳なさげに眉をひそめながらも、照れくさそうな笑みを浮かべていた。浅黒い頬は赤く染まっている。尖った耳も、真っ赤に染まっていた。
「悪い。ひとりで夢中になっちまって。使い魔のくせに、主サマのこと置いてけぼりにしちまった」
「いえ、私が、悪いんです。お邪魔しちゃってごめんなさい。どうぞ、続けてください」
「謝んなって。今度はちゃんと気持ちよくしてやるから」
「え、気持ちよくは、あるんですけど……あっあっ」
言葉を途中でさえぎられる。一番奥まで押し込まれた凶器は、さらに慎重に深みを目指すかのように、最奥を優しく、とんとんとん……と小突きだした。
「ふあ、あ、あっあっあっあっ……!」
ひと突きされるたびに、声を上げなければ耐えられない。
頭の先から指先までを完全に染め上げる快楽は、到底受け止めきれず、涙となってあふれだした。
宙を見上げているはずなのに、目に映るのは夥しい悦び、そしておぼろげな淫魔の顔だった。笑みを浮かべているように見える。
「はーっ……、はーっ……」
必死に呼吸を繰り返して、かろうじて意識を保ちながら、淫魔の昂ぶりと、与えられる快感とをただ受け止める。
ふと気が付くと、淫魔がじっと目を覗き込んできていることに気が付いた。
「眼鏡、取っていいか」
「え。あ、はい……」
本当は嫌だったが、淫魔の真剣な面持ちに逆らえず、おずおずと了承する。
これまで寝るとき以外は常に掛けっぱなしだった丸眼鏡が、そっと取り上げられた。眼鏡のつるが折りたたまれる音が、頭の先から聞こえてくる。枕元に置いてくれたらしい。
腕をシーツに突き直した淫魔が、再び主人をまっすぐに見る。汗ばむ手のひらがテレシュナの頬を包み込み、親指で目の下を横になぞる。
「あんたの、虹色の瞳……。本当に、綺麗だ」
「そう、なんですか……?」
人々から気味悪がられているはずの、変わった色の瞳。それを綺麗だと淫魔は言う。
「もっとよく見せてくれよ。俺から目、離すんじゃねえぞ。俺もあんたのこと、ずっと見てるから」
「は、はい、……あっあっ」
体内を暴かれる動きが再開されれば、悦びを受け止めきれず目を閉じてしまいそうになる。必死に淫魔を見上げて、縦長の瞳孔を持つ瞳を見つめ返す。粗暴な口調とは裏腹に、その目は慈しむような輝きを帯びていた。
(私のこと、気色悪いものを見る目で見ないんですね、淫魔さん。私、とても嬉しいです)
ずっと見つめあっていたい、ずっと夢心地に浸っていたいと心は願うのに――体はそれを許してくれなかった。
「あっ……。ちょっ、と、止まって、もらえ、ますか……」
「いいや。止まってやらねえよ? イキそうなんだろ。最高に気持ちよくしてやるから、そのまま俺のこと感じてろ」
「え、そんな、あっあっあっあっ……!」
細かく小突いていた動きが、次第に大きく、深くなっていく。
一度突き込まれるたびに快感が脳に突き刺さり、目の中に光が弾ける。受け止めきれない感覚が、体中を塗り替えていく。
「止まってえ、止まって、ください、本当に、もう、私、わたしっ、だめ、だめえっ……――きゃああっ!」
目の前が真っ白に染まる。
テレシュナは、知らない誰かのような自分の悲鳴を遠くに聞きながら、意識を失った。
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