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第3話
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「私が吸血鬼であることは、ご理解いただけていますよね?」
「ええ! コウモリ化して宙に舞えるなんて、とっても素晴らしい能力ですわね!」
「はは、それはどうも……。でしたら話は早い。吸血鬼というものは、太陽の光のもとでは生きられないのです」
「……? はい、もちろん吸血鬼の方々の特性は存じ上げておりますわ」
吸血鬼一族は、ここヴァーリハ公国の歴史を語るうえで欠かせない存在である。そのため公国の子女は必ず吸血鬼について学ぶ。ベアグレルもまた、家庭教師にひと通り習ったことがあった。
ベアグレルが張りきって返事した途端、伯爵が切なげに目を細めた。
「さきほど私は『貴女の修行姿を見守らせていただいていた』と申しましたが、木陰から密かに貴女を見るたびに思っていたのです。『貴女は日の光が本当によく似合う』、と。まばゆい日差しを浴びて、いきいきと野を駆けまわるお姿、とても輝いていた。百年以上生きてきて、あれほどまでに心躍る光景を見たのは初めてです」
「それは恐れ入ります……。それにしても伯爵様は、すいぶんと長いこと、わたくしの修行の様子を見張られていらっしゃったのですね」
「ええ! 川で水浴びをなさる姿も一度だけ拝見したことがあります。弾ける水滴がきらきら光って本当に綺麗だったなあ……」
「えっ」
うっとりとした顔で語る内容に、ベアグレルは愕然とせずにはいられなかった。
「あの~伯爵様? わたくしが水浴びしていたところまでご覧になっていたんですの?」
「ええ、ええ! 見てましたとも! 実に美しい光景でした……! 今でも目に焼きついておりますからね」
「……!」
聞き捨てならない発言に、ベアグレルはわなわなと身を震わせはじめた。
「あの~、クラウラド・エンヴィアープ伯爵様? そのとき、わたくし裸じゃありませんでした?」
「あーっ! そ、それはその……!」
色白な顔が一瞬にして真っ赤に染まる。あたふたと両手で口を押さえた伯爵は、ベアグレルと目が合った途端、がばっと土下座した。
石畳に額をこすりつけて、焦り声を庭に響かせる。
「ご無礼をお許しくださいベアグレル嬢! ですが言い訳をさせてください、あまりの美しさに始めは妖精だと本気で思っていて! 妖精に会えるなんてラッキーだな、と見とれていたのです!」
ばっと音が鳴るほどに素早く頭を起こす。
額にすり傷を作った伯爵は必死な形相でベアグレルを見上げると、涙目で弁解を続けた。
「いつもはまとめていらっしゃる髪を下ろされていましたし、お召し物を身に着けられるまでずっと、貴女だったと気付けなかったのです! みずみずしく健康的な素肌、しなやかで引きしまった肢体、どこからどう見ても妖精そのものでしたので……!」
「んがっ。そ、そんなっ、詳しく形容なさらないで……」
例えば夜会で料理をむさぼる姿を注目されたところで、恥じらいを感じたことなど今までに一度もない。しかし家族以外の男性に裸を見られたという事実は、ベアグレルを大いに動揺させた。
兄たちに裸を見られてもなんともないのに、相手がこれほど魅力的な人であれば恥ずかしくなるらしい。そんな自身のうろたえっぷりにすら困惑させられる。
「とにかく! 嫁入り前の乙女の裸を見るなんて、とんでもないことでございますわよ!?」
「はい、本当に、おっしゃる通りでございます……」
先ほどまで赤面していた顔が、見る間に青ざめていく。
伯爵は、打ちひしがれた表情をしてしおしおとうなだれた。
ベアグレルはヒールの音を鳴らしながらその前に歩み寄って腕組みすると、伯爵の後頭部を見下ろした。
「責任、取っていただけますこと?」
「うう~本当に申し訳ございませんでしたあ。どのように責任を取ればよろしいでしょうかあ」
今にも泣きだしそうな声で問いかけてきた伯爵の腕を引いて、強引に立ち上がらせる。
脱力しきった様子の伯爵は、首をがくんとのけぞらせた。白い喉が夜の闇に浮かび上がる。
ベアグレルはもう一度腕を引いて無理やり顔を起こさせると、赤い瞳を覗きこみ、にっこりと微笑んでみせた。
「クラウラド様。わたくしの旦那さまになってくださいませ!」
「え! いやその、ですから私は貴女にふさわしくないと……」
「そんなことございませんわ! 自信をお持ちになって!」
伯爵の肩をつかんで前後に揺さぶる。その動きに合わせてぐらぐらと頭を揺らす伯爵は、撫でつけてあった黒髪がすっかり乱れていた。
「白状します、ベアグレル嬢。私は貴女が初めて山にお越しになったときからずっと、山へ修行に来られるたびに、こっそり見守らせていただいてきたのです」
「わたくしが山へ行くたびに、ですか!?」
レウムクス家の伝統で、十六歳から成人するまでの四年間、年に一度、山で修行をしなければならない。ベアグレルは兄との手合わせで負け続きで、悔しさのあまり月に一度は山ごもりをし続けてきたのだった。しかも、そもそも成人を迎えれば終了のはずの修行を二十一歳になった今でも続けている。
思いのほか長期間に渡って見られていたらしい。ベアグレルが呆気に取られていると、力なく首を傾けたままの伯爵が弱々しくつぶやいた。
「あなたの頑張る姿をひそかに見守らせていただくだけで、充分だったのに……」
ベアグレルは再び伯爵の肩を引いて頭を起こさせると、寂しげな表情を浮かべる顔をじっと見つめた。
「クラウラド様。わたくしがおそばにいては迷惑ですか?」
「迷惑なものですか。私はただ、こっそり見守ってきた貴女とお話しできただけで天にも昇る気持ちだというのに、その上結婚だなんて……。ああもう体を保つの無理ぃ……」
つかんでいた肩の手ごたえが、ふっと消え失せる。伯爵の体がばらばらになっていき、人型を描くコウモリの群れと化す。
「逃がしませんわ、クラウラド様」
「はひぃ……」
ベアグレルはコウモリのうちの一羽の羽を難なく捕らえると、すぐに伯爵を人間の姿に戻した。
しりもちをついた姿勢になった伯爵の首根っこを、がしっとつかみあげる。
「家族に紹介いたしますね! ささ、参りましょう!」
「え! いやまだ心の準備が……!」
座り込んだままの伯爵の襟を引っぱり、マントに乗った体をずるずると引きずって室内に戻る。
周囲の注目を一身に浴びても気にせずに、ベアグレルは晴れやかな気持ちで腹の底から息を吸い込むと、遠くに見える父親に大声で呼びかけた。
「お父さま~! 獲物……ではなくて旦那さまをゲットしましたわ~!」
「おお! でかしたぞベアグレル! さすが私の娘だ!」
父と、そのそばにいる家族がすぐさま振り返る。
鍛え抜かれた肉体が自慢の父は、タキシードのはち切れそうな胸を張って笑い声を響かせた。
その隣には、ベアグレルと同様に小柄な母が優しい笑みを浮かべている。
騎士として名高い三人の兄も、みな一斉に笑顔になった。
家族の前に到着し、伯爵をつかんでいた手を離す。すると伯爵はよろよろと立ち上がり、膝に手を突いて肩で息をしはじめた。いつの間にかマントがなくなっている。ベアグレルが引きずるうちに取れてしまったらしい。
マントはひとまずあとで探そうと思いつつ、ベアグレルが未来の夫となる人を一同に紹介しようとした矢先、顔の前を手で遮られた。
「お待ちくださいベアグレル嬢! 私が貴女と結婚するだなんて、おこがましいにもほどがあります」
「おこまがしい? なぜです?」
「私は吸血鬼なのですよ? 陽光のもとにいるべき貴女を、夜の闇に閉じ込めるわけにはいきません」
「あら、クラウラド様。それだけが理由であれば理由にもなりませんわ。私、月夜も大好きですのよ?」
山ごもりをしはじめた当初は夜の暗さにおびえていたこともあった。しかし幾晩もひとりで過ごすうちに、月明かりに照らされる世界の美しさを知ったのだった。
伯爵が、困った風な笑みを浮かべる。
「知っておりますよ、貴女が月夜も好きなことだって」
「え?」
「貴女は満月の晩、顔をほころばせて月を見上げていたではないですか。綺麗、と呟いて」
「……!」
「ええ! コウモリ化して宙に舞えるなんて、とっても素晴らしい能力ですわね!」
「はは、それはどうも……。でしたら話は早い。吸血鬼というものは、太陽の光のもとでは生きられないのです」
「……? はい、もちろん吸血鬼の方々の特性は存じ上げておりますわ」
吸血鬼一族は、ここヴァーリハ公国の歴史を語るうえで欠かせない存在である。そのため公国の子女は必ず吸血鬼について学ぶ。ベアグレルもまた、家庭教師にひと通り習ったことがあった。
ベアグレルが張りきって返事した途端、伯爵が切なげに目を細めた。
「さきほど私は『貴女の修行姿を見守らせていただいていた』と申しましたが、木陰から密かに貴女を見るたびに思っていたのです。『貴女は日の光が本当によく似合う』、と。まばゆい日差しを浴びて、いきいきと野を駆けまわるお姿、とても輝いていた。百年以上生きてきて、あれほどまでに心躍る光景を見たのは初めてです」
「それは恐れ入ります……。それにしても伯爵様は、すいぶんと長いこと、わたくしの修行の様子を見張られていらっしゃったのですね」
「ええ! 川で水浴びをなさる姿も一度だけ拝見したことがあります。弾ける水滴がきらきら光って本当に綺麗だったなあ……」
「えっ」
うっとりとした顔で語る内容に、ベアグレルは愕然とせずにはいられなかった。
「あの~伯爵様? わたくしが水浴びしていたところまでご覧になっていたんですの?」
「ええ、ええ! 見てましたとも! 実に美しい光景でした……! 今でも目に焼きついておりますからね」
「……!」
聞き捨てならない発言に、ベアグレルはわなわなと身を震わせはじめた。
「あの~、クラウラド・エンヴィアープ伯爵様? そのとき、わたくし裸じゃありませんでした?」
「あーっ! そ、それはその……!」
色白な顔が一瞬にして真っ赤に染まる。あたふたと両手で口を押さえた伯爵は、ベアグレルと目が合った途端、がばっと土下座した。
石畳に額をこすりつけて、焦り声を庭に響かせる。
「ご無礼をお許しくださいベアグレル嬢! ですが言い訳をさせてください、あまりの美しさに始めは妖精だと本気で思っていて! 妖精に会えるなんてラッキーだな、と見とれていたのです!」
ばっと音が鳴るほどに素早く頭を起こす。
額にすり傷を作った伯爵は必死な形相でベアグレルを見上げると、涙目で弁解を続けた。
「いつもはまとめていらっしゃる髪を下ろされていましたし、お召し物を身に着けられるまでずっと、貴女だったと気付けなかったのです! みずみずしく健康的な素肌、しなやかで引きしまった肢体、どこからどう見ても妖精そのものでしたので……!」
「んがっ。そ、そんなっ、詳しく形容なさらないで……」
例えば夜会で料理をむさぼる姿を注目されたところで、恥じらいを感じたことなど今までに一度もない。しかし家族以外の男性に裸を見られたという事実は、ベアグレルを大いに動揺させた。
兄たちに裸を見られてもなんともないのに、相手がこれほど魅力的な人であれば恥ずかしくなるらしい。そんな自身のうろたえっぷりにすら困惑させられる。
「とにかく! 嫁入り前の乙女の裸を見るなんて、とんでもないことでございますわよ!?」
「はい、本当に、おっしゃる通りでございます……」
先ほどまで赤面していた顔が、見る間に青ざめていく。
伯爵は、打ちひしがれた表情をしてしおしおとうなだれた。
ベアグレルはヒールの音を鳴らしながらその前に歩み寄って腕組みすると、伯爵の後頭部を見下ろした。
「責任、取っていただけますこと?」
「うう~本当に申し訳ございませんでしたあ。どのように責任を取ればよろしいでしょうかあ」
今にも泣きだしそうな声で問いかけてきた伯爵の腕を引いて、強引に立ち上がらせる。
脱力しきった様子の伯爵は、首をがくんとのけぞらせた。白い喉が夜の闇に浮かび上がる。
ベアグレルはもう一度腕を引いて無理やり顔を起こさせると、赤い瞳を覗きこみ、にっこりと微笑んでみせた。
「クラウラド様。わたくしの旦那さまになってくださいませ!」
「え! いやその、ですから私は貴女にふさわしくないと……」
「そんなことございませんわ! 自信をお持ちになって!」
伯爵の肩をつかんで前後に揺さぶる。その動きに合わせてぐらぐらと頭を揺らす伯爵は、撫でつけてあった黒髪がすっかり乱れていた。
「白状します、ベアグレル嬢。私は貴女が初めて山にお越しになったときからずっと、山へ修行に来られるたびに、こっそり見守らせていただいてきたのです」
「わたくしが山へ行くたびに、ですか!?」
レウムクス家の伝統で、十六歳から成人するまでの四年間、年に一度、山で修行をしなければならない。ベアグレルは兄との手合わせで負け続きで、悔しさのあまり月に一度は山ごもりをし続けてきたのだった。しかも、そもそも成人を迎えれば終了のはずの修行を二十一歳になった今でも続けている。
思いのほか長期間に渡って見られていたらしい。ベアグレルが呆気に取られていると、力なく首を傾けたままの伯爵が弱々しくつぶやいた。
「あなたの頑張る姿をひそかに見守らせていただくだけで、充分だったのに……」
ベアグレルは再び伯爵の肩を引いて頭を起こさせると、寂しげな表情を浮かべる顔をじっと見つめた。
「クラウラド様。わたくしがおそばにいては迷惑ですか?」
「迷惑なものですか。私はただ、こっそり見守ってきた貴女とお話しできただけで天にも昇る気持ちだというのに、その上結婚だなんて……。ああもう体を保つの無理ぃ……」
つかんでいた肩の手ごたえが、ふっと消え失せる。伯爵の体がばらばらになっていき、人型を描くコウモリの群れと化す。
「逃がしませんわ、クラウラド様」
「はひぃ……」
ベアグレルはコウモリのうちの一羽の羽を難なく捕らえると、すぐに伯爵を人間の姿に戻した。
しりもちをついた姿勢になった伯爵の首根っこを、がしっとつかみあげる。
「家族に紹介いたしますね! ささ、参りましょう!」
「え! いやまだ心の準備が……!」
座り込んだままの伯爵の襟を引っぱり、マントに乗った体をずるずると引きずって室内に戻る。
周囲の注目を一身に浴びても気にせずに、ベアグレルは晴れやかな気持ちで腹の底から息を吸い込むと、遠くに見える父親に大声で呼びかけた。
「お父さま~! 獲物……ではなくて旦那さまをゲットしましたわ~!」
「おお! でかしたぞベアグレル! さすが私の娘だ!」
父と、そのそばにいる家族がすぐさま振り返る。
鍛え抜かれた肉体が自慢の父は、タキシードのはち切れそうな胸を張って笑い声を響かせた。
その隣には、ベアグレルと同様に小柄な母が優しい笑みを浮かべている。
騎士として名高い三人の兄も、みな一斉に笑顔になった。
家族の前に到着し、伯爵をつかんでいた手を離す。すると伯爵はよろよろと立ち上がり、膝に手を突いて肩で息をしはじめた。いつの間にかマントがなくなっている。ベアグレルが引きずるうちに取れてしまったらしい。
マントはひとまずあとで探そうと思いつつ、ベアグレルが未来の夫となる人を一同に紹介しようとした矢先、顔の前を手で遮られた。
「お待ちくださいベアグレル嬢! 私が貴女と結婚するだなんて、おこがましいにもほどがあります」
「おこまがしい? なぜです?」
「私は吸血鬼なのですよ? 陽光のもとにいるべき貴女を、夜の闇に閉じ込めるわけにはいきません」
「あら、クラウラド様。それだけが理由であれば理由にもなりませんわ。私、月夜も大好きですのよ?」
山ごもりをしはじめた当初は夜の暗さにおびえていたこともあった。しかし幾晩もひとりで過ごすうちに、月明かりに照らされる世界の美しさを知ったのだった。
伯爵が、困った風な笑みを浮かべる。
「知っておりますよ、貴女が月夜も好きなことだって」
「え?」
「貴女は満月の晩、顔をほころばせて月を見上げていたではないですか。綺麗、と呟いて」
「……!」
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