24 / 102
第一章
24 知らなかった悦び(☆)
しおりを挟む※18歳未満閲覧禁止
---
賢者ダリオが、ゆるゆると腰を揺らしてヒナリの弱点を的確に攻め立ててくる。
「……っ!」
この上ない心地よさにヒナリがびくびくと震え上がっていると、賢者ダリオが甘える風な声でヒナリの耳をくすぐった。
「ね、教えて? 気持ちいい?」
「っ……、はい、気持ちいい、です……」
「ここ、突かれるの、好き?」
「好き、です……」
「もっと、欲しい?」
「もっと、欲しいです……!」
その言葉が本気であると訴えるべく、必死で賢者ダリオの腰に手を回して引き寄せる。
ぴったりと合わせた肌を自ら擦り付けておねだりすれば、一番欲しいところをとんとんと優しく小突いてくれた。
聖女ヒナリの素直さに、ダリオは興奮を覚えずにはいられなかった。
衝動に任せて攻め立てたくなる気持ちをぐっとこらえて、最もオーラが飛び出す一点を己が切っ先で捏ね回す。
(本当は、全部見えてるんだよね)
ハート型をしたオーラは、今や部屋中に飛び散っていた。聖女ヒナリに抱き付いて顔を伏せてみせたところでシーツの上にすらハートがばらまかれていて、いかに心地よさを感じてくれているかがはっきりと伝わってくる。
なんと愛らしいことか――。
(でもこのことを正直に話したら嫌がるだろうから、内緒にしておこう)
ダリオの腰を必死に引き寄せていた聖女ヒナリの手が、はたとシーツの上に落ちた。
「あ、ふああ、あ、はあああ……!」
熱い体内を一度貪る度に、とろけきった声が放たれる。
ダリオは体を起こすと、聖女ヒナリを悦ばせる動きに没頭した。
このまま絶頂に向けて駆け上っていきたかったというのに――ふと苦い過去が脳裏をよぎってしまった。
(こんなに心地よい行為だったっけ、これ)
心が沈み掛けた瞬間。
温かな手のひらが、ダリオの頬に添えられた。
「あなたは……」
「ん?」
「あなたは、この儀式を、気持ちいいって思ってくれてますか?」
「……! もちろん」
聖女ヒナリの手をぎゅっと握り締めて、心の底からの笑みを浮かべてみせる。
「こんなに素敵なものだったんだね。教えてくれてありがとう、ヒナリ」
「はい」
紫色の瞳が温かな光を湛える。
「ヒナリ。僕のことも、名前で呼んで欲しい」
「はい、ダリオ」
温かな声が、心に染み込んでいく。
「うん、いいね。君のその清らかな声で名を呼ばれるのは」
今更ながらに名前で呼び合い、繋げた体がさらに強く結び付いた気がした。
ヒナリの手が頬から離れていき、再びダリオの腰に回される。
「ねえ、ダリオ」
「うん」
「これからたくさん知っていってくださいね。私たちのするこの行為は、悦びに溢れているものだって」
「……!」
その瞬間、ダリオは制御できないほどの情欲に心と体を支配された。
この子をもっと乱れさせたい――生まれて初めて抱く衝動に、理性が失われていく。
「ヒナリ……! もっともっと、気持ちよくなって……!」
「あ! はうっ! ダリオっ、ダリオっ……! 気持ちいっ……!」
腰を叩き付けてヒナリの体内を貪れば、高らかな啼き声が歓喜を伝えてくる。
その後自分がどうしたかはほとんど憶えていない。
ヒナリの奥深くに魔力を注ぐその瞬間までの記憶を失くすほどに、そしてヒナリの気を失わせてしまうほどに、ダリオはただただ途方もない悦びを得られる行為に没頭したのだった。
◇◇◆◇◇
ソファーでヒナリと並んで座るダリオを、不機嫌な顔をしたクレイグが向かい側から睨み付ける。
「ほら、貴方だってそうなるではありませんか。昨日まではあからさまにヒナリから距離をとっていたくせに」
ダリオとの儀式を終えた次の日、朝食後にヒナリが居間で茶を飲みながらくつろいでいると、後からやって来たダリオが昨日のクレイグ以上にぴったりとヒナリの横に座って腰に手を回してきたのだった。
まるで自分のものだと宣言するかのような振るまいに、ヒナリは気恥ずかしくなってうつむいた。
ダリオがヒナリの腰を抱く手に力を込めつつ、クレイグに返事を投げ返す。
「昨日までは君たちに遠慮していたから。だいたい、ヒナリと一夜を共にして、心を奪われずにいられる男がこの世に存在すると思う?」
「居るはずがなかろう」
一人掛けの方のソファーに座るアルトゥールが即答した。
たった今聞かされたダリオの発言に、ヒナリはどきどきして硬直した。
(ダリオってこういうことも言うんだ……)
意外な一面に驚いていると、至近距離から呼び掛けられた。
「ヒナリ」
その声に返事するより先に、ダリオの指先がヒナリの顎をすくう。強引に振り向かせられた途端に赤い瞳と目が合った。魔眼の美しい輝きについ見とれてしまう。
ヒナリを見据える目が、ふと熱を帯びる。
「……次の儀式、今から楽しみにしてる。次もたくさん愛してあげるから」
「っ……!」
色気を孕んだ声に、たちまち昨晩の儀式を思い出してしまって腹の奥が疼く。今思い出しても体が熱を帯びるくらい、ダリオとの儀式は夢のように心地よかった。
「お、お手柔らかにお願いします……」
童顔から繰り出される甘い言葉の破壊力が凄まじい。顎は固定されてしまっているので視線だけをおずおずと逸らしていく。
すると、ベルトランが笑顔で肩をすくめた。
「なーんか僕の十八番が奪われた感じがするねえ」
「なるほど、そのように愛を囁けばいいのか……」
目を丸くしたアルトゥールが感心したように何度も頷いた。
途端にヒナリの顎から指先を外したダリオが、アルトゥールに鋭い視線を送る。
「君はいたずらに欲望をぶつけるばかりでなく、もっとヒナリを悦ばせることに注力すべきだ」
「うむ、面目ない」
アルトゥールが頭に手をやり、気まずげな表情を浮かべる。
反省の色を見せるその様子を不憫に思ったヒナリは反射的に叫んだ。
「アルトゥール! そんなことない!」
アルトゥールとの儀式の際、挿入後は激しかったもののそこに至るまでの手と口とで啼かされたひとときに一切の不満はなかった。
「あなたのしてくれた前戯はとても気持ち良かっ……」
ほとんど明言してしまったところで賢者四人に凝視されていることに気付き、しおしおと項垂れる。
「……。……なんでもないです……。うう……」
両手で顔を覆い隠す。
(なんてこと言っちゃったんだろう私……!)
ヒナリが手の中で頬を燃え上がらせていると、アルトゥールの弾んだ声が聞こえてきた。
「そうか、私の指と舌とで貴女に愛撫を施した際、貴女は乱れに乱れてくれていたな。あの時の貴女は実になまめかしかった」
「ほう? その手管、今後の参考のために詳しくお聞かせ願いましょうか」
とクレイグが興味津々と尋ねたところでヒナリは素早く顔を上げた。
「わあああ!? ダメダメ! 話しちゃダメー!」
「はっはっはっ、照れるヒナリは本当に愛らしいな。クレイグ、後ほど詳しくお聞かせしようではないか」
「ええ、期待してますよ」
「ホントにダメだってばー!」
いくら頼み込んでも笑い声であしらわれてしまう。涙目になったヒナリは再び両手を顔に押し当てると深く項垂れた。
賢者四人との儀式が終わり、いよいよ世界を浄化する役目を果たすときを迎える。
(こんなに浮ついた気持ちで大丈夫かなあ。しっかりしなくちゃだよね)
ヒナリはしきりにまばたきをして恥じらいの涙を抑え込むと、両手をぎゅっと頬に押し付けて、気を引き締め直したのだった。
4
お気に入りに追加
753
あなたにおすすめの小説
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ヤンデレ義父に執着されている娘の話
アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。
色々拗らせてます。
前世の2人という話はメリバ。
バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。
櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。
ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。
気付けば豪華な広間。
着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。
どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。
え?この状況って、シュール過ぎない?
戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。
現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。
そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!?
実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。
完結しました。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる