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告白

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雪風シュンホワを厩戸にもどすと蕣花シュンホワの腕を掴んだまま、月華宮へ戻る道をゆく。

「離せ」
離したら、2度と会えない気がして、堯舜ヤオシュンはその手を緩めなかった。
「今すぐ逃げないと困ったことになる。こんなとこ見られたらお前殺されるぞ、あたり一面血の海になる」
「ならない。俺の宮で誰にもそんなことをさせない」

月華宮に堯舜ヤオシュンは辿り着く。厩戸係を見咎めた月華宮の衛兵が止めに来る。
「厩戸係が来て良い場所ではないぞ!」
堯舜ヤオシュンは顔色ひとつかえず言い放つ。
「跪け」
堯舜ヤオシュンの顔を見た衛兵は真っ青になり、即座に跪き、自分自身の頬をビンタし始めた。
「ご慈悲を!ご慈悲を!」
「良い。朕が紛らわしい格好をしていたからな。打つな」
「ありがとうございます。万歳万歳万々歳」
衛兵は涙ながらに頭を地面に打ちつけるように土下座を続ける。
「うるさい。あたりに誰も近づかせるな」
堯舜ヤオシュンはそういうと、振り返りもせず蕣花シュンホワを連れ、扉の内側へ入っていった。

「強すぎる。痛い」
「ごめん」
慌てて堯舜ヤオシュンは手の力を抜く。
「話は何?万歳爺」
「その呼び方はやめてくれ、俺は堯舜ヤオシュンだ」
姚舜ヤオシュン、もっと長い名前もあるんだろう」
2人の間に気まずい沈黙が流れる。ずっとみつめあっている。

蕣花シュンホワの前では、ただの堯舜ヤオシュンのままでいたい。これからも」

蕣花シュンホワが先に目を逸らした。
「ふん、分からなくもない。それで話はなんだ。人を散々待たせて、謁見を出し惜しみやがって」
「申し訳なかった。ちゃんと本当の君が知りたかったから」

堯舜ヤオシュンは迷いなく跪く。
「やめろ、なんだそれは。そこまで謝る意味がわからないだろう、立てよ」
「いや、君に謝らねばならないことはそれだけじゃない。償いに朕に嫁いでくれないだろうか」

蕣花シュンホワは心底びっくりした。

「はー?なんでそうなる!」

「3年前、朦朧としていたとは言え、君の純潔を奪い婚約を破談させ実家にも帰れぬ身にやつしたのは、何もか朕のせいだ。償いのためには何でも言ってくれ。正妃に迎える準備がこちらにはある」

「何を言ってるんだ、いきなり気でも狂ったのか。私はまだ処女だぞっ!」
いうなり顔を真っ赤に染めている。
「薬を盛られて何も覚えていないかもしれないが、その髪の翡翠のかんざしは確かに3年前朕が必ず迎えにいくとの誓いで渡した…」
「これは!」
真っ赤になりながら、蕣花シュンホワは言い返した。
「物心ついたときから持っている母の形見だ。お前にもらったわけなどない!」

堯舜ヤオシュンは、時が止まったかのように瞬きひとつせず、掠れた声で聞き返す。

「母の形見…?」

「そうだ、訳わからないことを言うな。つまり?なんだ?人違いか?」

あまりにもあまり、に堯舜ヤオシュンは頷くしか出来なかった。
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