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宴は踊る、お馬は跳ねる

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「嫌よ、だるいもの。体調悪いって言って」
雲泪ユンレイはにべもなく断った。
堯舜ヤオシュンは母上の無責任さが心底羨ましかった。

「あたし、南安の宋将軍苦手なのよ」
「そんな理由通用しません、母上」
「ホラ怪我してるし、欠席」
「面子つぶさないように俺がこんな犠牲を払ってるんだから、母上も少しは我慢してください。なんなら怪我を理由に少し待たせる分にはいい」

堯舜ヤオシュンにも先送りにしたい気持ちがあった。宴が終われば、宋将軍は帰ってしまう。娘をどうするか、考えると頭が痛い。

「3日後…3日後に宴を設定しますからね」
言い捨てると堯舜ヤオシュンは牡丹坊を出る。母の傍には奕世イースがいて離れようともしないのも気に入らない。

皇帝陛下なのに何にも自由にならない苛立ちがつのる。月華宮に戻ると人払いをして、厩戸係の衣装に着替える。どうしても、宋家の娘を受け入れなければならないなら、バランスを考えても国中の名家が差し出す娘は受け入れなければならないだろう。つまり、後宮を開かなければ、政がまわらない局面に来ている。

もう避けられないのならば、堯舜ヤオシュンは誠実でありたかった。蕣花シュンホワに皇帝であること、3年前の謝罪をし、自分は責任をとるつもりがあること、彼女は一番最初に宮にはいる権利があることを伝えなければと思った。

厩戸係の準備は整い、紫微宮の東へ向かう。だが、西側に要人がいるせいで警備がいつもより厳重だ。厩戸で待っていれば会えるだろうか、そう考えて堯舜ヤオシュンは厩戸に急いだ。

すると、蕣花シュンホワ雪風シュエフェンに跨り、駆け出そうとしているところだった。

「おお、堯舜ヤオシュン!良かった、最後に会えて。挨拶できないのは残念と思っていたのだ」
「最後ってどうして」
「いや、待てども皇帝の謁見には呼ばれないし、それよりヤバい状況で逃げないとめんどくさいんだ」
蕣花シュンホワは形の良い眉を歪めて、眉間に皺をよせている。顎で厩戸の左側を示すと、黒曜の横に見慣れない青毛の馬が増えている。
「凄い馬だろ、青影だ。私が見間違えるわけない」
「ちょっと待って」
堯舜ヤオシュンはそばに駆け寄る。
「悪いが時間がない、もう行く。コイツがいるってことはアイツがいるってことだからな」

手綱を掴み、駆け出させようとするのを堯舜ヤオシュンは無理やり止める。
「お前!馬鹿か!」
バランスを崩し、落下しそうになるのを抱き止める。
「行かせない。話を聞いてくれ」

堯舜ヤオシュンの真剣な表情に鬼気迫るものを感じた蕣花シュンホワはただ頷いた。
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