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皇帝陛下は思春期
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「で!で!で!どうだった?」
明け方ようやく眠りについた皇帝陛下を叩き起こせるのは、皇太后だけだろう。
「どうだったもなにも…」
母はこんなにテンション高い性格じゃなかったはずなのにと違和感を持ちながら、回らない頭で答えを続ける。
「会って2秒でふられて、仕事を紹介するって連れてきた」
「あら、あなたそのものを見て彼女がふったんなら仕方ないわね!」
「うるさいな」
堯舜は虫の居所が悪かった。自分が大恋愛だと思っていた相手は強姦したようなものという事実を思い出して自己嫌悪に再び陥ったし、皇帝の衣装を脱いだら流氓呼ばわりされ、妓楼に女を紹介する女衒と罵られたのも、そう見えるのかもしれないと思い、2秒でふられた事実も今更だが気を重たくさせる。
俺そのものを愛してくれる女なんて本当はいないのかもしれない。皇帝陛下だから色目を下心で使われて、モテるなんて今まで勘違いしていたんだなあと自信をなくす。
そもそも、あの新娘との逢瀬以外に経験はなかった。もしかしたら自分が思っているより、ずっと醜男なのかもしれない。
「いやあ、俺ってそんなに魅力ないかな」
溜め息をつく息子に母は思わず笑ってしまう。
「見た目によってくる娘じゃないってことよ。彼女が気になるならちゃんと誠心誠意口説くのね」
自分を嫌がる女に無理に迫る気には全くなれなかった。それでは飯店で絡んできた派手な男と一緒じゃないか。
全国におふれを出して翡翠のかんざしを持つ女を探すように小黒には命令したが、良く考えてみればルルーだかリリーだかランランにとっては2度と会いたくない男なのかもしれない。
それを権力やエゴで探し出して謝罪したいなどと自己満足だけかもしれない。困っていたら絶対に助ける義務があるとは思うが、果たして見つかったところで、皇后になってくれなど今さら恥ずかしくて言えないだろう。
ふと母の髪に翡翠のかんざしを見つける。聞かねば
「母上のその翡翠のかんざしはこの世に一つしかないのか?」
「ふたつあるのよ、これ」
いよいよわからなくなったが、母はもうひとつをつけているのだと解釈した俺はやはり全国中、翡翠のかんざしを探すことにした。
明け方ようやく眠りについた皇帝陛下を叩き起こせるのは、皇太后だけだろう。
「どうだったもなにも…」
母はこんなにテンション高い性格じゃなかったはずなのにと違和感を持ちながら、回らない頭で答えを続ける。
「会って2秒でふられて、仕事を紹介するって連れてきた」
「あら、あなたそのものを見て彼女がふったんなら仕方ないわね!」
「うるさいな」
堯舜は虫の居所が悪かった。自分が大恋愛だと思っていた相手は強姦したようなものという事実を思い出して自己嫌悪に再び陥ったし、皇帝の衣装を脱いだら流氓呼ばわりされ、妓楼に女を紹介する女衒と罵られたのも、そう見えるのかもしれないと思い、2秒でふられた事実も今更だが気を重たくさせる。
俺そのものを愛してくれる女なんて本当はいないのかもしれない。皇帝陛下だから色目を下心で使われて、モテるなんて今まで勘違いしていたんだなあと自信をなくす。
そもそも、あの新娘との逢瀬以外に経験はなかった。もしかしたら自分が思っているより、ずっと醜男なのかもしれない。
「いやあ、俺ってそんなに魅力ないかな」
溜め息をつく息子に母は思わず笑ってしまう。
「見た目によってくる娘じゃないってことよ。彼女が気になるならちゃんと誠心誠意口説くのね」
自分を嫌がる女に無理に迫る気には全くなれなかった。それでは飯店で絡んできた派手な男と一緒じゃないか。
全国におふれを出して翡翠のかんざしを持つ女を探すように小黒には命令したが、良く考えてみればルルーだかリリーだかランランにとっては2度と会いたくない男なのかもしれない。
それを権力やエゴで探し出して謝罪したいなどと自己満足だけかもしれない。困っていたら絶対に助ける義務があるとは思うが、果たして見つかったところで、皇后になってくれなど今さら恥ずかしくて言えないだろう。
ふと母の髪に翡翠のかんざしを見つける。聞かねば
「母上のその翡翠のかんざしはこの世に一つしかないのか?」
「ふたつあるのよ、これ」
いよいよわからなくなったが、母はもうひとつをつけているのだと解釈した俺はやはり全国中、翡翠のかんざしを探すことにした。
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