9 / 31
川のほとりで
しおりを挟む
ズンズン歩いた白露は奇しくも、雲泪と出会った川のほとりで立ち止まった。
「本当に失礼な目に合わせてごめんなさい」
煌めく両の目からは涙が溢れそうだ。
「いや、俺は大丈夫だ。君こそ」
華奢な両腕に幼子を2人抱いている彼女をみると、不思議となんでもしてあげたくなった。母の言っていたやつはこれか。男の子の方を白露の腕から抱きあげると、男の子は母の頭を撫でた。
「ママ、泣かないで」
その光景に 堯舜は胸が締め付けられた。彼女たちを捨てた男に怒りすら湧いてきた。
「大丈夫だよ、これからは俺が守る…」
言いかけて自分に気持ち悪さを感じた 堯舜は慌てて言い直す。
「これからは俺が仕事場につれていく?母から紹介すると、ほら言われていただろ」
白露の顔がパァッと華やぐと、 堯舜はえもしれぬ多幸感を感じた。
「あの話、てっきりさっき私を連れ出す為の嘘かと」
「ママ良かったね」
「嬉しいね、笑ってるママ好き」
子供達が口々に喜びの声をあげる。
「嘘じゃないさ、今から行こう。住み込みで保育園もある。洗濯と繕いものと刺繍の仕事だ。持って行きたいものはあるか?」
白露が荷物をまとめる間、 堯舜は護衛の影に指示を飛ばす。まさか、母親の言うとおり、このまま連れ帰るとは思っても見なかった。
影の1人が先に月華宮に戻り、どうせ母と女官たちがわくわく準備をするだろう。白露たちはほとんど荷物という荷物がなく、すぐに戻ってきた。
「俺は馬の世話をしているんだー」などと嘯きながら、ゆっくり城下へ向かう。
宮につくと母付きの女官頭小青が迎えにきていた。もう後は任せれば大丈夫だろう。
「え、ここは…?」
宮で働くなどとは聞いていない白露が驚きの声をあげる。
「あ、あとは小青に聞けばわかるから、無愛想だがいい人だよ」
小青は無愛想どころか、見たことないような笑顔で出迎えている。
「じゃあ、俺は馬の世話があるから!」
「あの、お名前を…」
「舜でいい、またね」
足早に別れを告げ、 堯舜は軽い足取りで抜け道を駆け抜ける。胸が高揚しているのに気付かないまま。鼓動が走っているからだと勘違いしたまま。
「本当に失礼な目に合わせてごめんなさい」
煌めく両の目からは涙が溢れそうだ。
「いや、俺は大丈夫だ。君こそ」
華奢な両腕に幼子を2人抱いている彼女をみると、不思議となんでもしてあげたくなった。母の言っていたやつはこれか。男の子の方を白露の腕から抱きあげると、男の子は母の頭を撫でた。
「ママ、泣かないで」
その光景に 堯舜は胸が締め付けられた。彼女たちを捨てた男に怒りすら湧いてきた。
「大丈夫だよ、これからは俺が守る…」
言いかけて自分に気持ち悪さを感じた 堯舜は慌てて言い直す。
「これからは俺が仕事場につれていく?母から紹介すると、ほら言われていただろ」
白露の顔がパァッと華やぐと、 堯舜はえもしれぬ多幸感を感じた。
「あの話、てっきりさっき私を連れ出す為の嘘かと」
「ママ良かったね」
「嬉しいね、笑ってるママ好き」
子供達が口々に喜びの声をあげる。
「嘘じゃないさ、今から行こう。住み込みで保育園もある。洗濯と繕いものと刺繍の仕事だ。持って行きたいものはあるか?」
白露が荷物をまとめる間、 堯舜は護衛の影に指示を飛ばす。まさか、母親の言うとおり、このまま連れ帰るとは思っても見なかった。
影の1人が先に月華宮に戻り、どうせ母と女官たちがわくわく準備をするだろう。白露たちはほとんど荷物という荷物がなく、すぐに戻ってきた。
「俺は馬の世話をしているんだー」などと嘯きながら、ゆっくり城下へ向かう。
宮につくと母付きの女官頭小青が迎えにきていた。もう後は任せれば大丈夫だろう。
「え、ここは…?」
宮で働くなどとは聞いていない白露が驚きの声をあげる。
「あ、あとは小青に聞けばわかるから、無愛想だがいい人だよ」
小青は無愛想どころか、見たことないような笑顔で出迎えている。
「じゃあ、俺は馬の世話があるから!」
「あの、お名前を…」
「舜でいい、またね」
足早に別れを告げ、 堯舜は軽い足取りで抜け道を駆け抜ける。胸が高揚しているのに気付かないまま。鼓動が走っているからだと勘違いしたまま。
11
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
後宮物語〜身代わり宮女は皇帝に溺愛されます⁉︎〜
菰野るり
キャラ文芸
寵愛なんていりません!身代わり宮女は3食昼寝付きで勉強がしたい。
私は北峰で商家を営む白(パイ)家の長女雲泪(ユンルイ)
白(パイ)家第一夫人だった母は私が小さい頃に亡くなり、家では第二夫人の娘である璃華(リーファ)だけが可愛がられている。
妹の後宮入りの用意する為に、両親は金持ちの薬屋へ第五夫人の縁談を準備した。爺さんに嫁ぐ為に生まれてきたんじゃない!逃げ出そうとする私が出会ったのは、後宮入りする予定の御令嬢が逃亡してしまい責任をとって首を吊る直前の宦官だった。
利害が一致したので、わたくし銀蓮(インリェン)として後宮入りをいたします。
雲泪(ユンレイ)の物語は完結しました。続きのお話は、堯舜(ヤオシュン)の物語として別に連載を始めます。近日中に始めますので、是非、お気に入りに登録いただき読みにきてください。お願いします。
その手で、愛して。ー 空飛ぶイルカの恋物語 ー
ユーリ(佐伯瑠璃)
キャラ文芸
T-4ブルーインパルスとして生を受けた#725は専任整備士の青井翼に恋をした。彼の手の温もりが好き、その手が私に愛を教えてくれた。その手の温もりが私を人にした。
機械にだって心がある。引退を迎えて初めて知る青井への想い。
#725が引退した理由は作者の勝手な想像であり、退役後の扱いも全てフィクションです。
その後の二人で整備員を束ねている坂東三佐は、鏡野ゆう様の「今日も青空、イルカ日和」に出ておられます。お名前お借りしました。ご許可いただきありがとうございました。
※小説化になろうにも投稿しております。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
後宮の偽物~冷遇妃は皇宮の秘密を暴く~
山咲黒
キャラ文芸
偽物妃×偽物皇帝
大切な人のため、最強の二人が後宮で華麗に暗躍する!
「娘娘(でんか)! どうかお許しください!」
今日もまた、苑祺宮(えんきぐう)で女官の懇願の声が響いた。
苑祺宮の主人の名は、貴妃・高良嫣。皇帝の寵愛を失いながらも皇宮から畏れられる彼女には、何に代えても守りたい存在と一つの秘密があった。
守りたい存在は、息子である第二皇子啓轅だ。
そして秘密とは、本物の貴妃は既に亡くなっている、ということ。
ある時彼女は、忘れ去られた宮で一人の男に遭遇する。目を見張るほど美しい顔立ちを持ったその男は、傲慢なまでの強引さで、後宮に渦巻く陰謀の中に貴妃を引き摺り込もうとする——。
「この二年間、私は啓轅を守る盾でした」
「お前という剣を、俺が、折れて砕けて鉄屑になるまで使い倒してやろう」
3月4日まで随時に3章まで更新、それ以降は毎日8時と18時に更新します。
男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜
春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!>
宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。
しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——?
「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる