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まずは巣作り、そしてお茶会

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翌朝、私は魔王ルートの知識を交えて、アンリに今後の対策を話した。

「でも、まずは清潔な巣作りですわ」
魔王退治には随分と素っ頓狂な対策だと思われるだろう。

「魔王はまだ復活しておりませんし、序盤の魔王はとても弱いのです。人々の疑心暗鬼や悪しき心の隙間に入り込みますの。それから周りの人の負の感情を飲み込んで肥大化し、止められないほどの力を得ます」

なるほどといった表情でアンリは聞いている。

「まずは公爵家の大掃除をしますのよ、少なくとも我が家が円満で幸福な気に満ちていれば魔王は入ってこられません」

その説明でアンリは充分に理解したようだった。というか既にリストアップはすんでいたらしい。信頼できるものだけをそばにおく為に、私のためにアンリは行動済みだったのである。

ただ解雇するわけにはいかない。うまく紹介状を持たせ、政敵の家に送る。使用人はずいぶん減ったが、そもそもが多すぎたとも言える。

王宮は大掃除出来ないんだろうなあ。

火種はどこにでもあるから、どこの誰が魔王の源になるかなんて分からない。小説で魔王となったのは王宮のハンスという取るに足らない小姓だった。見目の麗しさだけで、取り立てられることが多い飾り用の男性使用人のひとり。

ジュリアン王太子と仲良くするユティカに恋をしたハンスは結界が弱まったタイミングで侵入を許した魔王の魂のカケラに心と身体を支配される。

そして自分の体に魔王の受肉を許すのだ。

嫉妬や憎しみが渦巻く王宮で、魔王の魂のカケラが支配するのはハンスとは限らない。攻略本の魔王ルートと小説、それから今回のハルファティカの記憶の総合する限り、多分、ハンスはハルファティカの純潔を汚し降魔を完遂したはずだ。

漆黒の章は、その魔王をユティカが変えてゆくストーリーなのだがハルファティカ側からしたらたまったものではない。そもそも純潔なんてアンリに捧げちゃったもんね、ばーかばーか、ざまあみろだ。どの小説もハルファティカ側からしたら酷い話だった。

しかし、私が既に処女ではないことを加味すると魔王の力は既に増していてもおかしくないし、どこかに受肉をしていてもおかしくない。ジュリアン王太子のところにユティカが入りたびらなければ、ハンスがユティカに恋することは無いだろうから糸口がないのだ。

「それからねユティカの動向を探る為に、ナタリーをお茶会にまねくの!」
「そんな計画で魔王退治ができるのか」

アンリはドラゴン狩りの騎士のような覚悟を持って私の手伝いをすると申し出たのだろう。拍子抜けしたような顔で見ている。

「そうよ、美味しいお菓子に紅茶も必要よ」

私たちは買い物にいくことにした。

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