28 / 44
まずは巣作り、そしてお茶会
しおりを挟む
翌朝、私は魔王ルートの知識を交えて、アンリに今後の対策を話した。
「でも、まずは清潔な巣作りですわ」
魔王退治には随分と素っ頓狂な対策だと思われるだろう。
「魔王はまだ復活しておりませんし、序盤の魔王はとても弱いのです。人々の疑心暗鬼や悪しき心の隙間に入り込みますの。それから周りの人の負の感情を飲み込んで肥大化し、止められないほどの力を得ます」
なるほどといった表情でアンリは聞いている。
「まずは公爵家の大掃除をしますのよ、少なくとも我が家が円満で幸福な気に満ちていれば魔王は入ってこられません」
その説明でアンリは充分に理解したようだった。というか既にリストアップはすんでいたらしい。信頼できるものだけをそばにおく為に、私のためにアンリは行動済みだったのである。
ただ解雇するわけにはいかない。うまく紹介状を持たせ、政敵の家に送る。使用人はずいぶん減ったが、そもそもが多すぎたとも言える。
王宮は大掃除出来ないんだろうなあ。
火種はどこにでもあるから、どこの誰が魔王の源になるかなんて分からない。小説で魔王となったのは王宮のハンスという取るに足らない小姓だった。見目の麗しさだけで、取り立てられることが多い飾り用の男性使用人のひとり。
ジュリアン王太子と仲良くするユティカに恋をしたハンスは結界が弱まったタイミングで侵入を許した魔王の魂のカケラに心と身体を支配される。
そして自分の体に魔王の受肉を許すのだ。
嫉妬や憎しみが渦巻く王宮で、魔王の魂のカケラが支配するのはハンスとは限らない。攻略本の魔王ルートと小説、それから今回のハルファティカの記憶の総合する限り、多分、ハンスはハルファティカの純潔を汚し降魔を完遂したはずだ。
漆黒の章は、その魔王をユティカが変えてゆくストーリーなのだがハルファティカ側からしたらたまったものではない。そもそも純潔なんてアンリに捧げちゃったもんね、ばーかばーか、ざまあみろだ。どの小説もハルファティカ側からしたら酷い話だった。
しかし、私が既に処女ではないことを加味すると魔王の力は既に増していてもおかしくないし、どこかに受肉をしていてもおかしくない。ジュリアン王太子のところにユティカが入りたびらなければ、ハンスがユティカに恋することは無いだろうから糸口がないのだ。
「それからねユティカの動向を探る為に、ナタリーをお茶会にまねくの!」
「そんな計画で魔王退治ができるのか」
アンリはドラゴン狩りの騎士のような覚悟を持って私の手伝いをすると申し出たのだろう。拍子抜けしたような顔で見ている。
「そうよ、美味しいお菓子に紅茶も必要よ」
私たちは買い物にいくことにした。
「でも、まずは清潔な巣作りですわ」
魔王退治には随分と素っ頓狂な対策だと思われるだろう。
「魔王はまだ復活しておりませんし、序盤の魔王はとても弱いのです。人々の疑心暗鬼や悪しき心の隙間に入り込みますの。それから周りの人の負の感情を飲み込んで肥大化し、止められないほどの力を得ます」
なるほどといった表情でアンリは聞いている。
「まずは公爵家の大掃除をしますのよ、少なくとも我が家が円満で幸福な気に満ちていれば魔王は入ってこられません」
その説明でアンリは充分に理解したようだった。というか既にリストアップはすんでいたらしい。信頼できるものだけをそばにおく為に、私のためにアンリは行動済みだったのである。
ただ解雇するわけにはいかない。うまく紹介状を持たせ、政敵の家に送る。使用人はずいぶん減ったが、そもそもが多すぎたとも言える。
王宮は大掃除出来ないんだろうなあ。
火種はどこにでもあるから、どこの誰が魔王の源になるかなんて分からない。小説で魔王となったのは王宮のハンスという取るに足らない小姓だった。見目の麗しさだけで、取り立てられることが多い飾り用の男性使用人のひとり。
ジュリアン王太子と仲良くするユティカに恋をしたハンスは結界が弱まったタイミングで侵入を許した魔王の魂のカケラに心と身体を支配される。
そして自分の体に魔王の受肉を許すのだ。
嫉妬や憎しみが渦巻く王宮で、魔王の魂のカケラが支配するのはハンスとは限らない。攻略本の魔王ルートと小説、それから今回のハルファティカの記憶の総合する限り、多分、ハンスはハルファティカの純潔を汚し降魔を完遂したはずだ。
漆黒の章は、その魔王をユティカが変えてゆくストーリーなのだがハルファティカ側からしたらたまったものではない。そもそも純潔なんてアンリに捧げちゃったもんね、ばーかばーか、ざまあみろだ。どの小説もハルファティカ側からしたら酷い話だった。
しかし、私が既に処女ではないことを加味すると魔王の力は既に増していてもおかしくないし、どこかに受肉をしていてもおかしくない。ジュリアン王太子のところにユティカが入りたびらなければ、ハンスがユティカに恋することは無いだろうから糸口がないのだ。
「それからねユティカの動向を探る為に、ナタリーをお茶会にまねくの!」
「そんな計画で魔王退治ができるのか」
アンリはドラゴン狩りの騎士のような覚悟を持って私の手伝いをすると申し出たのだろう。拍子抜けしたような顔で見ている。
「そうよ、美味しいお菓子に紅茶も必要よ」
私たちは買い物にいくことにした。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
後宮物語〜身代わり宮女は皇帝に溺愛されます⁉︎〜
菰野るり
キャラ文芸
寵愛なんていりません!身代わり宮女は3食昼寝付きで勉強がしたい。
私は北峰で商家を営む白(パイ)家の長女雲泪(ユンルイ)
白(パイ)家第一夫人だった母は私が小さい頃に亡くなり、家では第二夫人の娘である璃華(リーファ)だけが可愛がられている。
妹の後宮入りの用意する為に、両親は金持ちの薬屋へ第五夫人の縁談を準備した。爺さんに嫁ぐ為に生まれてきたんじゃない!逃げ出そうとする私が出会ったのは、後宮入りする予定の御令嬢が逃亡してしまい責任をとって首を吊る直前の宦官だった。
利害が一致したので、わたくし銀蓮(インリェン)として後宮入りをいたします。
雲泪(ユンレイ)の物語は完結しました。続きのお話は、堯舜(ヤオシュン)の物語として別に連載を始めます。近日中に始めますので、是非、お気に入りに登録いただき読みにきてください。お願いします。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる