上 下
88 / 120

第87話 宿とクラリと実年齢

しおりを挟む
「凶夜さん、凶夜さん」

「・・・」

「凶夜さんてば」

「・・・」

「クエストに行きましょうよー、ねぇーってばぁ」

「だぁぁぁーーもう、うっせーな! そんなに行きたきゃ1人で行ってこいよ! 俺は病み上がりなんだから寝てたいんだよ!」

「そんなこと言ったって、フォリンさんの所からこの宿に来て、もう何日も経ってるじゃないですか」

「つーかなんでお前はここにいるんだよ、ミールの奴は実家があるからそっちに帰ってるし、こっちはお前の分の宿代まで払ってるんですけど!?」

凶夜も負けじとクラリへ反論する、本音を言えば単純にだるいのだ、この世界の冬?は寒い
ただひたすらに寒い、こんな時に何を好き好んでクエストなんてやらにゃーならんのだ、幸いちょむちょむ(実際はどぅむどぅむだったが)の討伐報酬に余裕があるし

「ふふ、私は天蓋孤独の身…大いなる宿命を背負っているのデス!」

クラリは天井を指さし、遠くを見つめるが

「要するに、住所不定のフリーターって事か」

「ちが、違いますよ! フリーターがなんなのかは分かりませんが、すごく失礼な事を言われた気がします! それに」

と、クラリは相変わらずベッドから出ようとしない凶夜を見下ろす

「凶夜さんだって、こんな’美’少女と同じ宿に泊まっていて、なんかこうもんもんとしたりしてるんじゃないですかぁ? 外に出て発散しましょうよ」

(はぁ…こっちに来てから本当に碌な事が無い、こいつはポンコツだし)

さして興味なさそうに、クラリを見返す

「な、なんですかその目はぁっ! いいでしょう表に出なさい、魔眼の餌食にしてくれる!」

「あーはいはい、俺はロリには手を出さないの、ノータッチなの」

それをさらりとあしらう、いちいち相手していられるか、つーか以前の似非魔眼ならともかく、クラリは今や本物の魔眼を習得している、そんなもんかけられたら死ぬ自信がある

「な、、今ロリと言いましたね、言ってはならないことをっ、こう見えても成人してるんですよ! 取り消してください!」

ん?今何か聞き捨てならないことを…

「今なんつった?」

そういえば、こいつに会ってから今まで歳なんて気にした事なかったな…

「だから、成人です18歳ですよっ」

むふー、と鼻息荒くつっかかってくる

「なっ…18歳…だと?」

(馬鹿なっ、この世界の理(ことわり)はどうなっているんだ!?)

「なんですか、黙りこくって文句ですか?文句があるんですか?いいでしょう、その勝負受けて立ちますよ」

「いや、なんか18歳って言われると急に」

「急に?」

「意識して…」

突如、クラリの顔が赤く染まり、自身を庇うように抱きしめて後ずさりする

「ややや、やめてくださいよ!こっちまで恥ずかしくなるじゃないですか!!」

「ば、ばっかお前、そもそもお前が先に言ったんだろ!」

「そ、それはそうですけど…」

「なぁ、一旦この話題は辞めにしないか?」

「そうですね…それがお互いのためな気がします」

「よし、じゃあ寝るか」

「なんのまねですか」

凶夜は、スッと布団を広げクラリを見る

「いや?この前、布団に潜り込んで来たことがあったろ?」

「何を言っているんですか?そんなことした事ありませんよ!もうだめだ、部屋を変えてもらおう」

「あっ、テメェずるいぞ!」

「ずるくないですよ!そもそも、ずるいってなんですか、ずるいって! だいたい、凶夜さんは怠(なま)けすぎなんですよ! 朝から晩まで布団に籠(こも)って…」

「うっせぇ! いいだろ働きたくねーんだよ、金もあるんだし、限界までだらだらしてたって良いじゃねーか!」

「よくありませんよ、なんですかその退廃主義者的な考えは」

「ぐぬぬ、そういうクラリだって初日は床に寝そべって「あー、ここの宿屋の床はぬくいですね、幸せです」とか言ってたじゃねーか」

「…我が問いに答えるものよ……」

「おいっ!?何してるんだ、魔眼使うんじゃない! 洒落になってねーからやめろぉぉぉぉぉぉ」

気が付いたら一日が終わってた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...