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第118話 遭遇戦

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「いくぞ、野郎ども!!!!」

「「「おう!」」」

 ギルドメンバーを含む冒険者の俺達はアルクキヨジンを待ち受けるべく村の入り口に集まって突貫作業で心元無いバリケードを作成する。盗賊の職業を持つ罠を作成するスキルを持つ冒険者はせっせと罠を作っては仕掛けている。顔に悲壮感が漂っているところを見ると、自身の仕掛けている罠にあまり意味が無いと思っているのだろう。

「凶夜さん、まだですか」

「はぁ?何が」

 さっきまで罠を興味深く見ていたクラリがいつの間にか隣に来ていた。ソワソワした様子で草原の方を見ている。

「まさか、アルクキヨジンを早く見たいのか?お前正気か?俺は出来ればこのまま村に来ないで通り過ぎてくれればいいなって思ってるのに。というかここの奴ら全員そう思ってるぞ多分」

 アルクキヨジンに来て欲しいなんて思ってる奴はこの場にクラリを除いて1人もいないだろう。というかそんな事言ったら袋叩きにされるぞ。

「ち、違いますよ!流石に私もそんな不謹慎な事考えてませんよ!まぁ、例え遭遇しても私の魔眼で瞬殺ですけどね…瞬殺!」

 こいつはまったく…

「…まぁ、お前のポジティブの塊みたいな発言は、嫌いじゃないけどな」

「ふふん、やっと私の実力が分かりましたか、凶夜さんも大船に乗ったつもりで私にまかせると良いですよ」

「あぁ」

 クラリは相変わらずだが、ここまで来たら腹をくくるしかない。この村を捨てて逃げるって選択ももちろんあるし、いざとなったら全員逃げろと伝えてもいる。討伐作戦の内容は会議の際に粗方伝えたが、正直上手くいくかは五分五分といったところだ。まず、この超強力なモンスターであるアルクキヨジンは俺が知っているゲームでも存在している。但し異なっているのは名前。正式名称はグルヴェイグ、北欧神話にも登場する巨人だったはずだ。

(実物を見てみないと何とも言えないが…)

 実際のところ、普通に戦ってもまず勝ち目は無いだろう。そもそもこの巨人の正体は女神フレイヤだ。人間が神に勝てる訳が無い。じゃあ一体どうやってゲームでオチを付けたのか…?それは…

「キョウヤ、キョウヤ」

「ん?ミールか、どうした?」

 アルクキヨジンの攻略方について考えているとさっきまでうろちょろしていたクラリの姿は無く、今度はミールが隣に来ていた

「大丈夫?」

 心配そうにのぞき込んでくるミール、少し顔が強張っている様に見える、緊張してるんだろうか、そりゃそうかこの世界で恐れられている化け物とこれから戦うかもしれないんだ、しかも勝たなければ村は…

 気が付くと自分の手が僅かに震えていた、どうやら俺も緊張しているらしい

「…ちょっと柄にもなく緊張してる」

「なるようになるんだよ!ばぁーーーんってやって、ダメだったら逃げるんだよ!」

「あはは、そうだな。そうしよう、だがやるからには最善を尽くすつもりだ。……ところでクラリは何処にいるんだ?さっきまでそこに居たんだが…」

 ウーーーーーーカンカンカンカンッ!!

「く、来るぞ!!」

 突如、高台から周囲を監視していたギルドメンバーが鐘を鳴らし、叫んだ。

「うおおおおお、ついに来たのかぁぁぁ!?!?」

「この戦いが終わったら、俺結婚するんだ…俺に力をっ」

 周りの冒険者達が自らを鼓舞するかの様に叫び声を上げる。一部どう考えても死亡フラグを立てている奴がいるが気にしない…そんな事よりも…

「こんなに早く来るなんて…ミール!クラリを捜してくれ!さっきまでそこらに居たはずだ、この作戦はあいつがいないと成り立たないんだよっ!」

「そ、そそうなんだよ!クラリーーーー!こんな一大事に何処行ったんだよ!クラリィーーーーーー!!!」

 遠く離れた草原の向こうから、メタリックに輝く頭部が見えてきた。

 地面から軽い振動が感じられ、確かに大地が震えている。

「…あ、あ、あ、あ…あれが、デカすぎる…」

 俺の後ろで罠を作っていた誰かが震えた声で呟く

 確かに、想像していたよりも2倍…いや5倍はデカい、なんだこれ倒せるのか?

 一抹の不安が過るが今更どうしようもない

「なるようにしか、ならない…か」

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