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第二十八話 公開告白するんですか?④
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私はしばし悩んだすえに腹を決めた。モザンが痺れを切らす前にと、スッと手を挙げて告げる。
「私がキュロット・アドバリテよ」
ブラドとルフォートが声を上げかけるのが視界の隅に映った。
私が目顔でそれを制すと、二人はキュッと唇を噛んで押し黙る。
「お前がか? 情報とだいぶ違うようだが」
「髪を切ったのよ。バッサリと」
「なるほど。一応筋は通るが、果たして本当かな。髪を切ったと言うが、何か嫌なことでもあったのかい、お嬢ちゃん」
「それは……こ、告白して振られたのよ。失恋から立ち直るためにイメチェンしたの。ええと……」
ここは以心伝心で、仲のいい友人に話を合わせてもらおう。
そう思った私は、ブラドのことを指して言った。
「あいつよ! あいつにこっぴどくフラれたの!!」
クラスメイトの視線がブラドに集中した。ルフォートに至っては迫真の演技で、私の代わりに怒ってくれているかのように、責めるような眼差しで睨みつけている。
いい感じの雰囲気だ。これで説得力は充分。あとはブラドが、俺様に似つかわしくない女だったとかなんとか、私を振ったように話をしてくれればいいだけ。
だったのだが……。
「ば、馬鹿を言うな! 俺様が振るわけないだろう! むしろ、その……す、末永くお願いする!!」
何かOKしちゃったんですけどこの人おぉぉ!
ごめん馬鹿なの話聞いてた!? 私のこと気遣ってくれたんだろうけどさ、今その流れじゃないのわかんないかな!?
駄目だ。根が素直なブラドに演技は向いていない。ここは冷静な判断力を持つルフォートに代わってもらおう。
「いけない、指差す人を間違えちゃった! 私を振ったのはルフォートよ! そうよね!?」
私は念押しするように、モザンに気付かれないよう、ルフォートにウインクで合図を送る。
私の意図を正確に汲み取って、小さく頷き返してくれる……と思っていた。しかしルフォートは、私のウインクを受けて顔を真っ赤にする。
いやそれどころか、しばしモジモジしたあと、照れくさそうにウインクを返してきた。
……仲いいなコレ!
フラれたどころかむしろ恋人同士がさり気なく合図送ってる感じだな! しかもルフォートの位置からだと皆に丸見えなんですけど!?
テンパった私は、もうやけだとばかりにキュロットを指し示して言った。
「私がフラれたのは彼女よ! 私、かわいい女の子が大好きなの!!」
最初に反応したのはクラスメイトだった。それまで怯えきった様子で目立たぬよう息を潜めていたというのに、オオッと歓声が起こる。そして口々に交わされる言葉。
「きゃあ素敵! 二人はいつも一緒にいたものね!」
「お似合いのカップルって感じだよな!」
「でもフラれたって話よね!? なぜかしら!?」
「そこんとこ詳しくお願いします!!」
何か盛り上がってますね皆さん!
まあおかげで信憑性も上がるけどさ!
後はキュロットが話を合わせてくれればいい。
祈るような気持ちでキュロットのことを見やると、彼女は困惑顔を浮かべ、声を振り絞る。
「あなたのことが本当にわかりませんわ。振られたのはむしろわたくしですのに……」
「私がキュロット・アドバリテよ」
ブラドとルフォートが声を上げかけるのが視界の隅に映った。
私が目顔でそれを制すと、二人はキュッと唇を噛んで押し黙る。
「お前がか? 情報とだいぶ違うようだが」
「髪を切ったのよ。バッサリと」
「なるほど。一応筋は通るが、果たして本当かな。髪を切ったと言うが、何か嫌なことでもあったのかい、お嬢ちゃん」
「それは……こ、告白して振られたのよ。失恋から立ち直るためにイメチェンしたの。ええと……」
ここは以心伝心で、仲のいい友人に話を合わせてもらおう。
そう思った私は、ブラドのことを指して言った。
「あいつよ! あいつにこっぴどくフラれたの!!」
クラスメイトの視線がブラドに集中した。ルフォートに至っては迫真の演技で、私の代わりに怒ってくれているかのように、責めるような眼差しで睨みつけている。
いい感じの雰囲気だ。これで説得力は充分。あとはブラドが、俺様に似つかわしくない女だったとかなんとか、私を振ったように話をしてくれればいいだけ。
だったのだが……。
「ば、馬鹿を言うな! 俺様が振るわけないだろう! むしろ、その……す、末永くお願いする!!」
何かOKしちゃったんですけどこの人おぉぉ!
ごめん馬鹿なの話聞いてた!? 私のこと気遣ってくれたんだろうけどさ、今その流れじゃないのわかんないかな!?
駄目だ。根が素直なブラドに演技は向いていない。ここは冷静な判断力を持つルフォートに代わってもらおう。
「いけない、指差す人を間違えちゃった! 私を振ったのはルフォートよ! そうよね!?」
私は念押しするように、モザンに気付かれないよう、ルフォートにウインクで合図を送る。
私の意図を正確に汲み取って、小さく頷き返してくれる……と思っていた。しかしルフォートは、私のウインクを受けて顔を真っ赤にする。
いやそれどころか、しばしモジモジしたあと、照れくさそうにウインクを返してきた。
……仲いいなコレ!
フラれたどころかむしろ恋人同士がさり気なく合図送ってる感じだな! しかもルフォートの位置からだと皆に丸見えなんですけど!?
テンパった私は、もうやけだとばかりにキュロットを指し示して言った。
「私がフラれたのは彼女よ! 私、かわいい女の子が大好きなの!!」
最初に反応したのはクラスメイトだった。それまで怯えきった様子で目立たぬよう息を潜めていたというのに、オオッと歓声が起こる。そして口々に交わされる言葉。
「きゃあ素敵! 二人はいつも一緒にいたものね!」
「お似合いのカップルって感じだよな!」
「でもフラれたって話よね!? なぜかしら!?」
「そこんとこ詳しくお願いします!!」
何か盛り上がってますね皆さん!
まあおかげで信憑性も上がるけどさ!
後はキュロットが話を合わせてくれればいい。
祈るような気持ちでキュロットのことを見やると、彼女は困惑顔を浮かべ、声を振り絞る。
「あなたのことが本当にわかりませんわ。振られたのはむしろわたくしですのに……」
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