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第二十六話 婚約者③
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「お話ですか? でもわたしにはお花のお手入れが」
「まぁた白々しい嘘を。あのね、わかるでしょ。キュロットとヒーシスは婚約してて、さっきまで二人きりで甘い時間を過ごしてたわけ。要するに私たちはお邪魔なの」
簡単に諦めるとは思えないが、牽制のためにそう告げた。
ところが、反発の声は予期せぬところから上がる。
「そんな! シエザが邪魔なんて、とんでもございませんわ!」
「あぁ、全くだ! そんなことに気を回す必要はない!」
うぇぇ、何で二人が反論すんの!?
そこは甘い一時を過ごしてたでいいじゃん!
二人の仲睦まじい様子をアピールしなければ、ミリシアは俄然勢い付いてしまう。
私は必死に言葉を続けた。
「でもほら、キュロットはヒーシスと二人きりで喋れてうれしいでしょ?」
「それほどでもないですわ」
「この子ちょっと正直すぎるかな!? そこがいいとこなんだけど、素直すぎるかな!?
ええと、でもヒーシスは二人きりの時間を求めてるだろうし! そうよねヒーシス!!」
「いやん、二人きりだと会話途切れちゃう」
「ぼっちコミュ障が!」
あんたそれでも王子なわけ!? この国ほんと大丈夫!?
私はミリシアの方をちらりと窺ってみた。
ミリシアはヒーシスの口からオネエ言葉が飛び出したことで脳がバグったらしく、しばし固まっていたが、どうやら聞き間違いだと判断したらしい。その上で、キュロットとヒーシスの仲がそれほど深くないと感じたようで、不敵な笑みを浮かべる。
「お二人がそう仰るなら、わたしがここにいても問題ないみたいですね。
あぁ、そうそう。お花のお手入れをしないと。清き光よ不浄を照らせ。ホーリーライト!」
神聖魔法『ホーリーライト』は、アンデッド系の魔物を一瞬で浄化する聖なる光を発する魔法だ。
擬似的な太陽ともいえるその光は草花の育成にも効果的で、ゲーム内ではバックガーデンの薔薇に照射して育てることで、ステータスが一定数アップするという隠しイベントもあった。
パアァァァ!
まばゆい光が花壇の薔薇というより、私めがけて照射された。ホーリーライトは人間には無害だが、真夏の太陽で肌をジリジリと焼かれるような感覚に襲われる。
要するに、クッソ暑い。
「うわ眩しい! 熱い痛い! ちょっと、何してんのよ!? 花壇あっちでしょ!」
「あらこめんなさい。間違って雑草に当てちゃったみたいです」
「おほぉ、あんた言ってくれるじゃないの! そっちがその気ならぁ……白銀よ埋め尽くせ、ホワイトブリザード!」
私が唱えた暴雪魔法はしかし、ミリシアがさらなる魔力を注いだホーリーライトの光に屈し、霧雨と化して辺りを漂った。
ミリシアは勝ち誇ったように口角を上げる。
「お花に水をあげる手間が省けました。ご協力感謝しますわ」
「ふぐぐぐぐぅ……!」
駄目だ。地力が違う。モブとヒロインの間には、どうあがいても覆せないほどの実力差がある。
このままではミリシアはヒーシスの傍にのうのうと居座り続けてしまう。その結果、ヒーシスはキュロットとの婚約破棄、そしてキュロットは処刑台に……。
「まぁた白々しい嘘を。あのね、わかるでしょ。キュロットとヒーシスは婚約してて、さっきまで二人きりで甘い時間を過ごしてたわけ。要するに私たちはお邪魔なの」
簡単に諦めるとは思えないが、牽制のためにそう告げた。
ところが、反発の声は予期せぬところから上がる。
「そんな! シエザが邪魔なんて、とんでもございませんわ!」
「あぁ、全くだ! そんなことに気を回す必要はない!」
うぇぇ、何で二人が反論すんの!?
そこは甘い一時を過ごしてたでいいじゃん!
二人の仲睦まじい様子をアピールしなければ、ミリシアは俄然勢い付いてしまう。
私は必死に言葉を続けた。
「でもほら、キュロットはヒーシスと二人きりで喋れてうれしいでしょ?」
「それほどでもないですわ」
「この子ちょっと正直すぎるかな!? そこがいいとこなんだけど、素直すぎるかな!?
ええと、でもヒーシスは二人きりの時間を求めてるだろうし! そうよねヒーシス!!」
「いやん、二人きりだと会話途切れちゃう」
「ぼっちコミュ障が!」
あんたそれでも王子なわけ!? この国ほんと大丈夫!?
私はミリシアの方をちらりと窺ってみた。
ミリシアはヒーシスの口からオネエ言葉が飛び出したことで脳がバグったらしく、しばし固まっていたが、どうやら聞き間違いだと判断したらしい。その上で、キュロットとヒーシスの仲がそれほど深くないと感じたようで、不敵な笑みを浮かべる。
「お二人がそう仰るなら、わたしがここにいても問題ないみたいですね。
あぁ、そうそう。お花のお手入れをしないと。清き光よ不浄を照らせ。ホーリーライト!」
神聖魔法『ホーリーライト』は、アンデッド系の魔物を一瞬で浄化する聖なる光を発する魔法だ。
擬似的な太陽ともいえるその光は草花の育成にも効果的で、ゲーム内ではバックガーデンの薔薇に照射して育てることで、ステータスが一定数アップするという隠しイベントもあった。
パアァァァ!
まばゆい光が花壇の薔薇というより、私めがけて照射された。ホーリーライトは人間には無害だが、真夏の太陽で肌をジリジリと焼かれるような感覚に襲われる。
要するに、クッソ暑い。
「うわ眩しい! 熱い痛い! ちょっと、何してんのよ!? 花壇あっちでしょ!」
「あらこめんなさい。間違って雑草に当てちゃったみたいです」
「おほぉ、あんた言ってくれるじゃないの! そっちがその気ならぁ……白銀よ埋め尽くせ、ホワイトブリザード!」
私が唱えた暴雪魔法はしかし、ミリシアがさらなる魔力を注いだホーリーライトの光に屈し、霧雨と化して辺りを漂った。
ミリシアは勝ち誇ったように口角を上げる。
「お花に水をあげる手間が省けました。ご協力感謝しますわ」
「ふぐぐぐぐぅ……!」
駄目だ。地力が違う。モブとヒロインの間には、どうあがいても覆せないほどの実力差がある。
このままではミリシアはヒーシスの傍にのうのうと居座り続けてしまう。その結果、ヒーシスはキュロットとの婚約破棄、そしてキュロットは処刑台に……。
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