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第十七話 歌のレッスン?②
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「まあそう深く考えることでもないさ。ほら、呪文の詠唱と同じだよ。魔法を発動するとき、体内で練った魔力を呪文の詠唱で高めて放出するだろう?
キュロットは正直、規格外と言っていいレベルの魔力量の持ち主だから。恐らく普段から体内で魔力を練るという過程を省いて魔法を使ってるんじゃないかな」
「うそ。キュロットってそんな化け物じみたことしてんの?」
驚きも顕に問いかけると、キュロットは少しむくれた様子で答える。
「化け物って、それは言い過ぎじゃございませんこと? 確かにルフォートが仰った、魔力を練るという感覚はよくわかりませんけども。魔法を使う際は、湧き出る魔力をそのまま放出しているという感じですから」
うわぁ、出たよ。凡人には理解できない感覚の話。
それってアレでしょ? 無詠唱で魔法使うとかと似たようなレベルでしょ?
(そういうのってむしろ、転生者である私が持ってなきゃいけないようなチート能力なんですけど。私ってつくづく単なる取り巻きだわー)
落ち着くわー。
平凡万歳と胸中で唱えていると、ヒーシスが釈然としない様子で訊ねる。
「しかし、詠唱と大差ないのなら、魔力を声に乗せたままでも問題ないのでは?
わたしも魔力を練るというより、内から生じるままに扱っている。キュロットと同様、魔力が漏れ出している状態の時もあるかもしれないが……」
「そこは何の属性魔法を使用しているかで大きく変わってくるだろう。キュロットが得意としているのは精神魔法だ。キュロットの発声は図らずも精神攻撃に繋がっているんだよ」
ジャイアン声帯こっわ!
そういえばゲームでも、キュロットの高笑いが聞こえた途端、
「この笑い声は……!」
「あのお方が来たぞ! テーブルの下に隠れろ!」
って、学園の生徒たちが怯えてたもんなぁ。
あれってわがままな侯爵令嬢を敬遠してたんじゃなくて、知らず知らずのうちに精神魔法で圧迫されてたのかな。
まるで絵本に出てくる、心は清いのに恐れられている怪物のような扱いだ。
私はううっと涙ぐみ、キュロットを激励する。
「キュロット、頑張って音程の取り方と魔力の抑え方を練習しよう。私もできる限りサポートするから」
「な、なんで泣いてますの? でも、シエザがそう言うならわたくしも全力で取り組みますわ。
ええと、声を張り上げないよう力を抜くんですわよね。そして魔力をセーブしながら……」
ぼえぇ~。
ぼぇっ、ぼぇっ。
ぼえぇぇ~♪
大した変化の見られないだみ声に、私は悲鳴を押し殺して両耳を塞いだ。ヒーシスとブラドも同じような格好をとり、嵐をやり過ごしているように身を伏せる。
そんななか、こちらも耳を塞いだルフォートが、歯を食いしばりつつ私達の元に歩み寄ってきた。ルフォートはキュロットが気持ち良さげに発声練習を続けているのを確認したあと、内緒話をするように言う。
「この様子じゃしばらくはレッスンの間中オレたちは精神攻撃に晒されることになる! オレたちはオレたちで、自分の身を守る方策を立てないとな!」
「いったいどうするの!? 耳栓でもしておく!?」
「これは言わば魔力による攻撃だ! 耳栓なんかじゃ意味がない! 魔力耐性を上げる方法なら授業で習ったろう!」
キュロットは正直、規格外と言っていいレベルの魔力量の持ち主だから。恐らく普段から体内で魔力を練るという過程を省いて魔法を使ってるんじゃないかな」
「うそ。キュロットってそんな化け物じみたことしてんの?」
驚きも顕に問いかけると、キュロットは少しむくれた様子で答える。
「化け物って、それは言い過ぎじゃございませんこと? 確かにルフォートが仰った、魔力を練るという感覚はよくわかりませんけども。魔法を使う際は、湧き出る魔力をそのまま放出しているという感じですから」
うわぁ、出たよ。凡人には理解できない感覚の話。
それってアレでしょ? 無詠唱で魔法使うとかと似たようなレベルでしょ?
(そういうのってむしろ、転生者である私が持ってなきゃいけないようなチート能力なんですけど。私ってつくづく単なる取り巻きだわー)
落ち着くわー。
平凡万歳と胸中で唱えていると、ヒーシスが釈然としない様子で訊ねる。
「しかし、詠唱と大差ないのなら、魔力を声に乗せたままでも問題ないのでは?
わたしも魔力を練るというより、内から生じるままに扱っている。キュロットと同様、魔力が漏れ出している状態の時もあるかもしれないが……」
「そこは何の属性魔法を使用しているかで大きく変わってくるだろう。キュロットが得意としているのは精神魔法だ。キュロットの発声は図らずも精神攻撃に繋がっているんだよ」
ジャイアン声帯こっわ!
そういえばゲームでも、キュロットの高笑いが聞こえた途端、
「この笑い声は……!」
「あのお方が来たぞ! テーブルの下に隠れろ!」
って、学園の生徒たちが怯えてたもんなぁ。
あれってわがままな侯爵令嬢を敬遠してたんじゃなくて、知らず知らずのうちに精神魔法で圧迫されてたのかな。
まるで絵本に出てくる、心は清いのに恐れられている怪物のような扱いだ。
私はううっと涙ぐみ、キュロットを激励する。
「キュロット、頑張って音程の取り方と魔力の抑え方を練習しよう。私もできる限りサポートするから」
「な、なんで泣いてますの? でも、シエザがそう言うならわたくしも全力で取り組みますわ。
ええと、声を張り上げないよう力を抜くんですわよね。そして魔力をセーブしながら……」
ぼえぇ~。
ぼぇっ、ぼぇっ。
ぼえぇぇ~♪
大した変化の見られないだみ声に、私は悲鳴を押し殺して両耳を塞いだ。ヒーシスとブラドも同じような格好をとり、嵐をやり過ごしているように身を伏せる。
そんななか、こちらも耳を塞いだルフォートが、歯を食いしばりつつ私達の元に歩み寄ってきた。ルフォートはキュロットが気持ち良さげに発声練習を続けているのを確認したあと、内緒話をするように言う。
「この様子じゃしばらくはレッスンの間中オレたちは精神攻撃に晒されることになる! オレたちはオレたちで、自分の身を守る方策を立てないとな!」
「いったいどうするの!? 耳栓でもしておく!?」
「これは言わば魔力による攻撃だ! 耳栓なんかじゃ意味がない! 魔力耐性を上げる方法なら授業で習ったろう!」
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