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第十六話 高笑い①
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「なーんか物足りないのよね」
その呟きが漏れたのは、王立学園の食堂で昼食をとっている時だった。
同じテーブルを囲むキュロットが、まぁと声を上げてにこやかに微笑む。
「シエザ、よければこちらも召し上がってくださいな」
キュロットはそう言い、白身魚のソテーをフォークに刺して差し出してきた。
私が反射的にあーんをして魚を頬張ると、同じくテーブルを共にするブラドが、勢い込んで聞いてくる。
「俺様のもなにか食べるか? チキンが残っているし、デザートもまだ手を付けていない」
「よければわたしのサラダもどうだろうか。お肌にいい」
「食いしん坊な子猫ちゃんだな。それとも俺に餌付けされたいのかな?」
ヒーシスとルフォートも同調し、私に食べ物を勧めてきた。
私は白身魚をごくりと飲み込みながら、ブンブンと頭を振る。
「んむむ。私のことどれだけ大食いだと思ってるのよ。というか、物足りないっていうのは別に、まだ食べ足りないってことじゃなくて」
「でしたら、何が物足りないんですの?」
「それがよくわかんないというか。なーんかしっくりこないのよね」
私は腕組みし、うーんと唸りつつキュロットを見やった。
キュロットは目をぱちくりさせている。
(しっくりこないっていったら、やっぱキュロットに関することだと思うんだけどなぁ。な~んに引っかかってるんだろ)
見た目に関して言えば、非の打ち所のない悪役令嬢に仕上がっていると胸を張れる。
それはやはり、お嬢様の代名詞、ドリル頭がこなれてきたのが大きいだろう。私たちが手ずからセットしているため、最初こそ形の歪な縦ロールが目立っていたものの、一ヶ月もの間毎日セットを続けた結果、ドリル頭の完成度は満足のいくレベルに達している。
(おかげで私達の魔力操作も上達して、ブラドなんてフレイムソード扱えるようになったし。キュロット様々よね)
そんなわけで、キュロットの外見に関しては言うことはない。
内面については、それはまあ『王立学園の聖女』に出てきた彼女とは隔たりがあるものの、性格は一朝一夕で劇的な変化が起こるものでもなし。そこに不満を抱くほど私も傲慢ではないと思うのだ。
「となると、髪型みたいにすぐ変えれて、なおかつキュロットに欠かせないものが何かあったような……」
ぶつぶつと独り言を呟いていたとき、食堂のどこかから「お待たせー」という声が聞こえてきた。
ふとそちらを見やれば、一人の女子生徒が朝食の載ったトレイを手に奥のテーブルへと向かっている。どうやら昼食を一緒にとる友達を待たせていたようで、到着を大きな声で伝えたらしい。
先にテーブルに着いていた友人たちも、「おっそーい。もうお腹ペコペコだよ」と、不満を漏らしつつもにこやかに迎えている。
その何気ない日常のワンシーンを目にした私は、ハッとなって声を上げた。
「そうか! 登場シーンの高笑いだ!」
『高笑い?』
キュロットたちが声を揃え、怪訝な顔を見せた。
私はこくこくと頷いて続ける。
「そうそう。何かしっくりこないなと思ったら、キュロットの高笑いを聞いてないからよ」
その呟きが漏れたのは、王立学園の食堂で昼食をとっている時だった。
同じテーブルを囲むキュロットが、まぁと声を上げてにこやかに微笑む。
「シエザ、よければこちらも召し上がってくださいな」
キュロットはそう言い、白身魚のソテーをフォークに刺して差し出してきた。
私が反射的にあーんをして魚を頬張ると、同じくテーブルを共にするブラドが、勢い込んで聞いてくる。
「俺様のもなにか食べるか? チキンが残っているし、デザートもまだ手を付けていない」
「よければわたしのサラダもどうだろうか。お肌にいい」
「食いしん坊な子猫ちゃんだな。それとも俺に餌付けされたいのかな?」
ヒーシスとルフォートも同調し、私に食べ物を勧めてきた。
私は白身魚をごくりと飲み込みながら、ブンブンと頭を振る。
「んむむ。私のことどれだけ大食いだと思ってるのよ。というか、物足りないっていうのは別に、まだ食べ足りないってことじゃなくて」
「でしたら、何が物足りないんですの?」
「それがよくわかんないというか。なーんかしっくりこないのよね」
私は腕組みし、うーんと唸りつつキュロットを見やった。
キュロットは目をぱちくりさせている。
(しっくりこないっていったら、やっぱキュロットに関することだと思うんだけどなぁ。な~んに引っかかってるんだろ)
見た目に関して言えば、非の打ち所のない悪役令嬢に仕上がっていると胸を張れる。
それはやはり、お嬢様の代名詞、ドリル頭がこなれてきたのが大きいだろう。私たちが手ずからセットしているため、最初こそ形の歪な縦ロールが目立っていたものの、一ヶ月もの間毎日セットを続けた結果、ドリル頭の完成度は満足のいくレベルに達している。
(おかげで私達の魔力操作も上達して、ブラドなんてフレイムソード扱えるようになったし。キュロット様々よね)
そんなわけで、キュロットの外見に関しては言うことはない。
内面については、それはまあ『王立学園の聖女』に出てきた彼女とは隔たりがあるものの、性格は一朝一夕で劇的な変化が起こるものでもなし。そこに不満を抱くほど私も傲慢ではないと思うのだ。
「となると、髪型みたいにすぐ変えれて、なおかつキュロットに欠かせないものが何かあったような……」
ぶつぶつと独り言を呟いていたとき、食堂のどこかから「お待たせー」という声が聞こえてきた。
ふとそちらを見やれば、一人の女子生徒が朝食の載ったトレイを手に奥のテーブルへと向かっている。どうやら昼食を一緒にとる友達を待たせていたようで、到着を大きな声で伝えたらしい。
先にテーブルに着いていた友人たちも、「おっそーい。もうお腹ペコペコだよ」と、不満を漏らしつつもにこやかに迎えている。
その何気ない日常のワンシーンを目にした私は、ハッとなって声を上げた。
「そうか! 登場シーンの高笑いだ!」
『高笑い?』
キュロットたちが声を揃え、怪訝な顔を見せた。
私はこくこくと頷いて続ける。
「そうそう。何かしっくりこないなと思ったら、キュロットの高笑いを聞いてないからよ」
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