正しい悪役令嬢の育て方

犬野派閥

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第十二話 バトります⑤

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 キュロットは躊躇うように口を噤むが、それも僅かな時間だった。キュロットは何かを必死に堪えるように、押し殺した声で告げる。

「……わかりました。シエザを信じますわ」
「ちょっと待ってくれ。二人だけで洞窟を進ませるなんてあまりにも危険だ。やはりここはどうにかして合流すべきじゃないだろうか」

 そう割って入ってきたのはヒーシスの声だ。ここで押し問答を続けても埒が明かないのにと焦れていると、ブラドが横合いから言う。

「僕もシエザを信じるよ。それに、今の崩落の音で魔物たちがもっと集まってくるかもしれない。この場から一刻も早く離れるべきだよ」
「そ、それはそうだが……」

 まだ踏ん切りがつかない様子のヒーシスの声に、ブラドがきゅっと唇を噛んだ。彼の表情には歯痒さというよりも、なぜか深い後悔が滲んでいる。
 ブラドは悲痛な声を絞り出して訴えた。

「……お願いだよ、ヒーシス。六年前のような過ちはもう繰り返したくないんだ」

 ヒーシスがはっと息を呑むのが伝わってきた。いったい何の話だろうと疑問を抱いたとき、ルフォートが叫ぶ。

「新手が来たぞ! ヒーシス、ここはシエザたちを信じて一旦退こう!」
「くっ……仕方ない。一度戻って先生方の助力を得よう。ブラド、シエザ、無理はするなよ!」

 その言葉を最後に、魔法で運ばれていた音が遠ざかっていった。魔物の群れをいなしながら崩落現場から離れていったのだろう。

「私達も行きましょう。こっちよ、ついてきて」

 私はそうブラドを促し、先ほどの青白い焔が見えていた方向へと駆け出した。
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