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第九話 そのアイテムは!④
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私は笑みを零す。
「よし、決まりね!」
シエザのステータスも魔力量の低さは気になるところだったから、これで多少はレベルアップするに違いない。
それに、こういった共同作業のイベントを経ると、キャラ同士の親密度も上がったはず。
私はモブなので関係ないだろうが、キュロットが二人と仲良くなれば、私の地位も今以上に盤石となるだろう。
着々と人生イージーモードの道を歩んでいるという手応えにほくそ笑んでいると、
「ローリント伯爵家のシエザ嬢はいるだろうか?」
と、どうやら私のことを探している様子の声が耳に入ってきた。
何だろうと教室の入口を見やれば、そこにはヒーシスの姿がある。
ヒーシスは私の姿を認めると、気品溢れる笑みを零してやってきた。
「このクラスだったか。見つかってよかった」
「殿下、いったいどうして……」
そう問いを放ちかけたが、私の抱く疑問よりも重要なことに思い至り、すぐさま言った。
「あぁ、ちょうどよかった! 殿下にお見せしたいものがあったんです!」
「! 何と、シエザもわたしにもう一度会いたいと、そう思ってくれていたのだな!」
「ええもちろん。お呼び立てする手間が省けました」
「そうかそうか! それで見せたいものとは?」
「ふっふっふっ。こちらです、どうぞ!」
そう言うなり私は半歩横にズレて、背後に隠れるような位置にいたキュロットを押しやった。
キュロットとヒーシスは婚約者同士。キュロットは豪奢かつ麗美な縦ロール姿を見てもらいたいだろうし、ヒーシスも彼女の麗しい姿を目前にすればきっと心躍ることだろう。
キュロットは虚をつかれた様子で目をぱちくりさせたあと、私の方をちらりと見やり、なぜだか少し不満げにぷくぅと頬を膨らませてみせた。
「うん? どうしたの?」
「何でもありませんわ!」
キュロットはふいっと顔を反らしてヒーシスに向き直ると、制服のスカートを軽く摘んで優雅に一礼してみせた。
「ご機嫌麗しゅう、殿下」
ヒーシスは目を丸くしてキュロットの縦ロール姿を眺めていたが、やがてはたと我に返る。
「何と言うか……懐かしい姿だな。幼少の頃以来か、その髪型は」
「はい。殿下が髪をいたわってくださいましたのに、勝手に元の髪型に戻してしまい申し訳ありませんわ」
「気にすることはない。よく似合っている」
「ありがとうございます」
……うーん。思ってたような反応と違うな。
二人とも照れてんのかな?
釈然としないでいると、ヒーシスがそっと私の方へと近付いてきた。
自分の身体でキュロットからの死角を作るようにすると、密やかな声で訊いてくる。
「わたしに会いたかった理由というのは、キュロットの髪型のことだろうか?」
「ええ、そうですけど」
「そうか……」
より可愛くなったキュロットに会えたというのに、ヒーシスはなぜだか瞳を翳らせている。
「よし、決まりね!」
シエザのステータスも魔力量の低さは気になるところだったから、これで多少はレベルアップするに違いない。
それに、こういった共同作業のイベントを経ると、キャラ同士の親密度も上がったはず。
私はモブなので関係ないだろうが、キュロットが二人と仲良くなれば、私の地位も今以上に盤石となるだろう。
着々と人生イージーモードの道を歩んでいるという手応えにほくそ笑んでいると、
「ローリント伯爵家のシエザ嬢はいるだろうか?」
と、どうやら私のことを探している様子の声が耳に入ってきた。
何だろうと教室の入口を見やれば、そこにはヒーシスの姿がある。
ヒーシスは私の姿を認めると、気品溢れる笑みを零してやってきた。
「このクラスだったか。見つかってよかった」
「殿下、いったいどうして……」
そう問いを放ちかけたが、私の抱く疑問よりも重要なことに思い至り、すぐさま言った。
「あぁ、ちょうどよかった! 殿下にお見せしたいものがあったんです!」
「! 何と、シエザもわたしにもう一度会いたいと、そう思ってくれていたのだな!」
「ええもちろん。お呼び立てする手間が省けました」
「そうかそうか! それで見せたいものとは?」
「ふっふっふっ。こちらです、どうぞ!」
そう言うなり私は半歩横にズレて、背後に隠れるような位置にいたキュロットを押しやった。
キュロットとヒーシスは婚約者同士。キュロットは豪奢かつ麗美な縦ロール姿を見てもらいたいだろうし、ヒーシスも彼女の麗しい姿を目前にすればきっと心躍ることだろう。
キュロットは虚をつかれた様子で目をぱちくりさせたあと、私の方をちらりと見やり、なぜだか少し不満げにぷくぅと頬を膨らませてみせた。
「うん? どうしたの?」
「何でもありませんわ!」
キュロットはふいっと顔を反らしてヒーシスに向き直ると、制服のスカートを軽く摘んで優雅に一礼してみせた。
「ご機嫌麗しゅう、殿下」
ヒーシスは目を丸くしてキュロットの縦ロール姿を眺めていたが、やがてはたと我に返る。
「何と言うか……懐かしい姿だな。幼少の頃以来か、その髪型は」
「はい。殿下が髪をいたわってくださいましたのに、勝手に元の髪型に戻してしまい申し訳ありませんわ」
「気にすることはない。よく似合っている」
「ありがとうございます」
……うーん。思ってたような反応と違うな。
二人とも照れてんのかな?
釈然としないでいると、ヒーシスがそっと私の方へと近付いてきた。
自分の身体でキュロットからの死角を作るようにすると、密やかな声で訊いてくる。
「わたしに会いたかった理由というのは、キュロットの髪型のことだろうか?」
「ええ、そうですけど」
「そうか……」
より可愛くなったキュロットに会えたというのに、ヒーシスはなぜだか瞳を翳らせている。
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