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第十四話 共闘

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「えと……ゴルドフ、大丈夫か? ヤズにユズも、その、急にどうした? 俺で良ければ相談にのるぞ?」

 おっかなびっくり声をかけると、ゴルドフがくるりと振り返り、俺の前に立った。その瞳に狂気はうかがえないが、どこか遠い目をしている。

「……冒険者の多くは、モンスターたちからご褒美のような痛みを得るために冒険に出ている。
 かくいう吾輩もそうだ。レン、お前もそれを目当てに冒険者になった口だろう?」

「いや、違いますけど……」

「隠すな隠すな。恥ずかしいことじゃないんだからな」

「どう考えても恥ずかしいことですけど……」

 しかし俺の反論はゴルドフの耳に届かない。
 ゴルドフはひとり納得するように頷き、言葉を続けていく。

「ルーキーの頃はいい。がむしゃらにモンスターに挑むだけで、打撃に魔法、果ては毒攻撃と、新鮮な痛みを味わえるんだからな。
 しかし、戦闘を重ねるうちに、経験値というものは勝手に積み上がっていくもんだ。
 レベルも上がり、耐性もつき、モンスターがこのベビーヒュドラのように、弱々しく感じられたとき。悲しいかな、吾輩たちはこう考えるようになる」

 ゴルドフは天を仰ぐと、目尻からツウッと一筋の涙を伝わせ、ぽつりと呟いた。

「……あぁ。こいつはもうご褒美をくれないのか。
 だったら単なる害獣と変わらないし、さっさと殺そ」

「ひぃっ! 考え方がもはやサイコパス!!」

 怖気をふるう俺の肩にぽんと手を置き、ゴルドフは教え諭すように告げる。

「レンも冒険者を続けるうちに、自分よりもレベルの低い、何のご褒美もくれないモンスターが増えていくことだろう。
 だが悲しむな。それが強くなるということなのだから……」

「わかったんで気安く触らないでくんない?」

 満足げに語り終えた直後、ゴルドフが顔をしかめ、よろりとバランスを崩した。
 どうしたのだろうと足元に視線を落とせば、脱臼でもしているのか、ゴルドフの足首が赤く腫れ上がっている。
 戦闘で強烈な攻撃を幾度となく受けていたし、その際に負傷していたのだろう。

「怪我してんじゃん。アシュミーに治療してもらおう」

「いや待て。この程度の怪我、どうということは……くっ」

「ほら無理すんなって。それにその足じゃ帰れないだろ。アシュミー、頼んだ」

「は、はい!」

 アシュミーは駆け寄ってきて、ゴルドフに回復魔法を施す。
 ゴルドフの負った怪我は見る間に癒え、軽くジャンプしても顔をしかめることすらない。

「どうでしょうか? もう痛みはありませんか?」

「あ、ああ。さすがアシュミーだ。相変わらず完璧な回復魔法だな」

「ありがとうございます!」

 アシュミーは弾んだ声を上げるが、ゴルドフは言葉とは裏腹に、どこか浮かない顔を浮かべていた。そしてその表情を隠すようにフイと背中を向けたあと、高らかに宣言する。

「よし、クエスト完了だ。王都に戻り、勝利の美酒で乾杯といこう!
 ガハハハハ!!」
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