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第九話 サポートキャラ
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翌朝、俺とセリスは王都を囲む城壁の外、牧歌的だが、モンスターの跋扈する森にいた。
魔族に対抗するためにも、まずは女神オカミ・サーンから授かったスキルの理解を深め、使いこなさなければならない。
そう結論付けた俺たちは、スキルの訓練を行うことにしたのだ。
「……とりあえず、獲得したスキルの詳細を知らないとな。
ええと、相談窓口。俺の声聞こえてるか? 聞こえてたら返事してくれ」
〈はい、もちろん聞こえておりますよ。営業時間中はいつもお客様に寄り添い、完璧なサポートを。『相談窓口』でございます〉
「営業時間あんの!? もうホント、消費者金融のイメージしかなくなっちゃうよ!?」
俺が女神の奇跡に対して声を荒げていると、セリスが残念な人を見るような眼差しで問いかけてくる。
「どうしたの、レン。何もないところに話しかけたりして。
異世界に来たばかりで情緒も不安定になるでしょうけど、まずは落ち着いて。深呼吸しましょう」
どうやら相談窓口の声は俺にしか届いてないらしい。
見ず知らずの相手に奇異な目で見られるくらいなら我慢もできるが、セリスにドン引きされるのは精神衛生上よろしくない。
「いや、違うんだ。女神の奇跡の一端で、サポート役の声が聞こえてて。
ああもう、何かの姿をとったりできないのか?」
〈お客様のご要望とあらば、それくらい造作もないですよ〉
「えっ、できんの? それじゃ頼む!」
〈かしこまりました。では……〉
相談窓口が言葉を切った途端、俺の目の前に強い光を発する球体が現れた。
思わず目を細めるが、その光は徐々に収まり、やがてはっきりとした輪郭が見えてくる。
まず目にとまったのは、綿毛のような白い体毛だ。こちらを見つめてくるのは、くりっとしたつぶらな瞳。
マリモに翼が生えたものというべきか、まん丸に太ったシマエナガと評するべきか。とにかく、モフモフとした球体の生き物が、ふわふわと空中に浮いていた。
その姿を目にして、セリスが歓声をあげる。
「わっ、可愛い精霊獣ね!」
「精霊獣……?」
「ええ。知恵や力をつけた精霊が実体を得たものよ。
女神の使いとして幸福をもたらすとも言われていて、精霊獣に懐かれることは一種のステータスになっているわ」
「へえ。こっちの世界ではそんなのいるんだ」
どうやら精霊獣とは、高級なペットといった位置付けにあるらしい。
それならばまあ、変に目立つこともないだろう。
「こいつ、俺のサポート役として女神が遣わしたらしいんだ。
さっきは頭ん中でこいつと会話してたんだよ」
「言葉も喋るの? そこまで知恵をつけた精霊獣は稀よ。」
セリスはそう言うと、相談窓口に目線を合わせて話しかける。
「始めまして、精霊獣さん。レンと会話してるならもう知ってるでしょうけど、私はセリスよ。よろしくね」
〈わたくしは相談窓口と申します。以後お見知りおきを〉
「本当だ。流暢に喋るのね。というか、相談窓口って……」
セリスは俺の方をジト目で見やる。
俺は顔の前でパタパタと手を振り、慌てて否定した。
「いや違う! そのヘンテコな名前は俺がつけたわけじゃ――」
「変わってていい名前ね! わかるわ、あえて妙な名前をつけて、当人が恥をかきやすくするのが巷でも流行ってるから」
「そんなキラキラネームの末路みたいなこと流行ってんの? 子供グレない?」
俺はカルチャーショックを受けつつも、コホンと空咳を挟んで本題に戻る。
魔族に対抗するためにも、まずは女神オカミ・サーンから授かったスキルの理解を深め、使いこなさなければならない。
そう結論付けた俺たちは、スキルの訓練を行うことにしたのだ。
「……とりあえず、獲得したスキルの詳細を知らないとな。
ええと、相談窓口。俺の声聞こえてるか? 聞こえてたら返事してくれ」
〈はい、もちろん聞こえておりますよ。営業時間中はいつもお客様に寄り添い、完璧なサポートを。『相談窓口』でございます〉
「営業時間あんの!? もうホント、消費者金融のイメージしかなくなっちゃうよ!?」
俺が女神の奇跡に対して声を荒げていると、セリスが残念な人を見るような眼差しで問いかけてくる。
「どうしたの、レン。何もないところに話しかけたりして。
異世界に来たばかりで情緒も不安定になるでしょうけど、まずは落ち着いて。深呼吸しましょう」
どうやら相談窓口の声は俺にしか届いてないらしい。
見ず知らずの相手に奇異な目で見られるくらいなら我慢もできるが、セリスにドン引きされるのは精神衛生上よろしくない。
「いや、違うんだ。女神の奇跡の一端で、サポート役の声が聞こえてて。
ああもう、何かの姿をとったりできないのか?」
〈お客様のご要望とあらば、それくらい造作もないですよ〉
「えっ、できんの? それじゃ頼む!」
〈かしこまりました。では……〉
相談窓口が言葉を切った途端、俺の目の前に強い光を発する球体が現れた。
思わず目を細めるが、その光は徐々に収まり、やがてはっきりとした輪郭が見えてくる。
まず目にとまったのは、綿毛のような白い体毛だ。こちらを見つめてくるのは、くりっとしたつぶらな瞳。
マリモに翼が生えたものというべきか、まん丸に太ったシマエナガと評するべきか。とにかく、モフモフとした球体の生き物が、ふわふわと空中に浮いていた。
その姿を目にして、セリスが歓声をあげる。
「わっ、可愛い精霊獣ね!」
「精霊獣……?」
「ええ。知恵や力をつけた精霊が実体を得たものよ。
女神の使いとして幸福をもたらすとも言われていて、精霊獣に懐かれることは一種のステータスになっているわ」
「へえ。こっちの世界ではそんなのいるんだ」
どうやら精霊獣とは、高級なペットといった位置付けにあるらしい。
それならばまあ、変に目立つこともないだろう。
「こいつ、俺のサポート役として女神が遣わしたらしいんだ。
さっきは頭ん中でこいつと会話してたんだよ」
「言葉も喋るの? そこまで知恵をつけた精霊獣は稀よ。」
セリスはそう言うと、相談窓口に目線を合わせて話しかける。
「始めまして、精霊獣さん。レンと会話してるならもう知ってるでしょうけど、私はセリスよ。よろしくね」
〈わたくしは相談窓口と申します。以後お見知りおきを〉
「本当だ。流暢に喋るのね。というか、相談窓口って……」
セリスは俺の方をジト目で見やる。
俺は顔の前でパタパタと手を振り、慌てて否定した。
「いや違う! そのヘンテコな名前は俺がつけたわけじゃ――」
「変わってていい名前ね! わかるわ、あえて妙な名前をつけて、当人が恥をかきやすくするのが巷でも流行ってるから」
「そんなキラキラネームの末路みたいなこと流行ってんの? 子供グレない?」
俺はカルチャーショックを受けつつも、コホンと空咳を挟んで本題に戻る。
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