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第五話 裸の王様
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呆けたような俺を現実に引き戻したのは、ロニオスがついた深い溜め息だった。
「……これ以上の議論は無駄のようだな。セリスよ、女神の力を一国の王族が独断で行使したのだ。覚悟はできておるな」
「はい、お父様」
「よろしい。では……今この時をもって、ミレトニア王家からセリスを廃嫡する。王城を出て、どこへなりとも行くがよい」
玉座の間がどよめきに満ち、至るところで悲痛な声が渦巻く。
しかし、当の本人であるセリスほ気丈な姿を見せた。この先に待ち受ける苦難に挑むように宣言する。
「承知しました、ロニオス王。
私は私のやり方で魔族に抗し、人類の未来を切り開こうと思います」
他人事とはいえ、俺は少なからず動揺した。何とか取りなすことはできないものかと頭を巡らせるが、ロニオスはこの話題を続けるつもりはないようで、今度は俺に話しかけてくる。
「レンよ。こちらの不手際で大変な状況に置いてしまったな。
だが案ずるな。そなたには何の不自由もない生活を保障しよう」
どうやらロニオスは、俺の生活の面倒一切を見てくれるつもりのようだ。
こちらに来たばかりで寝る場所すらなかったので、正直ありがたい申し出だ。
ロニオスがぱんぱんと手を叩く。
すると玉座の間に、上半身裸で黒い覆面をした男が入ってくる。
覆面の男はマッチョな腕で俺の手を取り、
「さあ、レン様。こちらへ」
と、どこかに連れて行こうとする。
状況の飲み込めない俺は慌てて言った。
「え、ちょっと待って! 何この拷問吏みたいな人! 俺どこに連れてかれるの!?」
「地下にある独房をそなたの部屋として用意させた。ゆっくりと旅の疲れを癒やすといい」
「地下牢が俺の部屋!?」
何でと叫ぶ前に、家臣たちから羨むような声が上がる。
「地下牢ですって。すごいじゃない、国賓級の扱いね」
「朝は歯が欠けてしまうような硬いパン、夜は具のないスープが出るって噂だぞ」
「いいなぁ。オレも独房に入りたいなぁ」
馬鹿な、この世界ではVIP扱いだと!?
それでは何か? 日本に帰れなかった場合、俺は十年もの間、暗くてジメジメした地下牢で過ごすのか?
冗談じゃない!
俺は咄嗟に口を開いた。
「ロニオス王! 俺はセリスと共に行こうと思います!」
「えっ」
セリスがびっくりした様子で俺の横顔を眺める。
俺はさらに続けた。
「魔族なら、もしかしたら異世界の扉を開くことができるかもしれないんですよね?
それなら、魔族との戦いに挑もうとしているセリスと行動を共にしていれば、日本に戻るヒントが何かつかめるかもしれない。
それに、せっかく異世界にきたんだ。色々と見聞を広めたいんですよ」
ロニオスは俺の訴えを吟味するよう、しばし押し黙った。
決断を後押ししたのはきっと、ロニオスの親心だろう。セリスを一人きりにするのは心配だという思いが、俺の願いを聞き届ける決定打となったのだ。
廃嫡した手前、娘のことをよろしく頼むとは言えないロニオスは、素っ気ない口調ながらも、万感の思いを滲ませて告げた。
「……好きにするがよい」
「……これ以上の議論は無駄のようだな。セリスよ、女神の力を一国の王族が独断で行使したのだ。覚悟はできておるな」
「はい、お父様」
「よろしい。では……今この時をもって、ミレトニア王家からセリスを廃嫡する。王城を出て、どこへなりとも行くがよい」
玉座の間がどよめきに満ち、至るところで悲痛な声が渦巻く。
しかし、当の本人であるセリスほ気丈な姿を見せた。この先に待ち受ける苦難に挑むように宣言する。
「承知しました、ロニオス王。
私は私のやり方で魔族に抗し、人類の未来を切り開こうと思います」
他人事とはいえ、俺は少なからず動揺した。何とか取りなすことはできないものかと頭を巡らせるが、ロニオスはこの話題を続けるつもりはないようで、今度は俺に話しかけてくる。
「レンよ。こちらの不手際で大変な状況に置いてしまったな。
だが案ずるな。そなたには何の不自由もない生活を保障しよう」
どうやらロニオスは、俺の生活の面倒一切を見てくれるつもりのようだ。
こちらに来たばかりで寝る場所すらなかったので、正直ありがたい申し出だ。
ロニオスがぱんぱんと手を叩く。
すると玉座の間に、上半身裸で黒い覆面をした男が入ってくる。
覆面の男はマッチョな腕で俺の手を取り、
「さあ、レン様。こちらへ」
と、どこかに連れて行こうとする。
状況の飲み込めない俺は慌てて言った。
「え、ちょっと待って! 何この拷問吏みたいな人! 俺どこに連れてかれるの!?」
「地下にある独房をそなたの部屋として用意させた。ゆっくりと旅の疲れを癒やすといい」
「地下牢が俺の部屋!?」
何でと叫ぶ前に、家臣たちから羨むような声が上がる。
「地下牢ですって。すごいじゃない、国賓級の扱いね」
「朝は歯が欠けてしまうような硬いパン、夜は具のないスープが出るって噂だぞ」
「いいなぁ。オレも独房に入りたいなぁ」
馬鹿な、この世界ではVIP扱いだと!?
それでは何か? 日本に帰れなかった場合、俺は十年もの間、暗くてジメジメした地下牢で過ごすのか?
冗談じゃない!
俺は咄嗟に口を開いた。
「ロニオス王! 俺はセリスと共に行こうと思います!」
「えっ」
セリスがびっくりした様子で俺の横顔を眺める。
俺はさらに続けた。
「魔族なら、もしかしたら異世界の扉を開くことができるかもしれないんですよね?
それなら、魔族との戦いに挑もうとしているセリスと行動を共にしていれば、日本に戻るヒントが何かつかめるかもしれない。
それに、せっかく異世界にきたんだ。色々と見聞を広めたいんですよ」
ロニオスは俺の訴えを吟味するよう、しばし押し黙った。
決断を後押ししたのはきっと、ロニオスの親心だろう。セリスを一人きりにするのは心配だという思いが、俺の願いを聞き届ける決定打となったのだ。
廃嫡した手前、娘のことをよろしく頼むとは言えないロニオスは、素っ気ない口調ながらも、万感の思いを滲ませて告げた。
「……好きにするがよい」
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