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第二話 勇者の条件
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もごもごと口ごもっていたその時、「ヒャッハー!」という奇声が突然上がった。
何事かと見やれば、召喚された人物の一人、モヒカン男が舌なめずりしながら言う。
「さっきからごちゃごちゃうるせえぜ!
異世界の勇者ぁ?
面白そうじゃねえか。その役目、引き受けた! この俺様がエンアポスに調和と秩序をもたらしてやるぜ! ひゃはー!」
そのナリで!?
やって来るのは調和じゃなく世紀末だろ!
俺はそんな感想を抱いたが、セリスは人を見た目で判断しない、公正な人物であるらしい。
モヒカン男に対し、真摯な眼差しで問いかける。
「それでは、自分こそが異世界の勇者だと言うのね?」
「ヒャッハー!」
「わかったわ。それなら女神の審査を受けてもらいましょう」
「ひゃは?」
「伝承によれば、女神によって認められた者には、勇者の証とも言える特殊なスキルが授けられるとあるわ。
女神の審査がどんなものなのか私にも見当がつかないけれど、受ける勇気はある?」
「ひゃっはー!!」
ひゃっはーだけでも会話は成立したらしく、セリスは一つ頷くと、魔道士の一団に合図を送った。
魔道士たちがすぐさま呪文の詠唱に入る。
すると、俺たちの足元に描かれていた魔法陣が、再び強い光を発し始めた。その光が粒子となり、モヒカン男の前に集まっていったかと思えば、ホログラム映像のように人影を形作っていく。
セリスが畏敬の念を込めてぽつりと呟く。
「女神オカミ・サーン……」
燐光を発して浮かび上がったのは妙齢の女性だった。
セリスたちの外見から、ギリシャ神話に出てくるような女神を想像していたが、顔立ちはむしろ東洋人のそれだ。
白い一枚布をまとうような衣装だが、和服の方が似合うのではとさえ思う。
女神オカミ・サーンは、ぽかんと口を開けているモヒカン男を見据えると、一喝するように声をかけた。
「コンノ!」
「ひゃは? いや、俺様は田中……」
「コンノ! そこに、LOVEは、あるんけ?」
その声は俺がじいちゃんの部屋で途切れ途切れに聞いたものと同じだった。どうやらあの時の声はオカミ・サーンのものだったらしい。
……というか、どっかで聞いたような台詞である。
俺がとあるCMのことを連想している間も、オカミ・サーンは問いを重ねる。
「コンノ! お前のドSに、LOVEは、あるんけ……?」
よくわからない問いかけと、女神の圧によって、モヒカン男は僅かにたじろいだ。
しかしすぐさま気を吐いて、「ヒャッハー!」の叫びと共に続ける。
「ドSに愛なんざ感じねえぜ!
この見た目ならアブノーマルじゃないと場を白けさせるんじゃねぇかとSM道具を常に持ち歩く気にしいの男、田中とは俺様のことだ!
ひゃっはー!!」
ごめんね田中!
見た目で判断してました!
こういった繊細な心の持ち主ならば確かに、異世界に調和と秩序をもたらすことができるかもしれない。
オカミ・サーンは果たして、どんな審判を下すのか。
固唾を呑んで見守っていると、オカミ・サーンはカッと眦を決し、大きく手を振り上げた。
そして、
「そこに、LOVEは、ないんかい!」
バチーン!!
と、強烈な平手打ちをモヒカン男にお見舞いする。
「あべしっ!」
モヒカン男が勢いよく吹き飛んだ。そのまま地面に倒れ込むかと思いきや、全身が光りに包まれ、唐突にこの場からかき消えてしまう。
「なっ……!」
慄然となって言葉も出せずにいると、セリスが安心させるよう、横合いから私見を述べた。
「大丈夫よ。あなたたちを召喚した際の光景によく似ていた。
きっと今の人は、勇者ではないと判断されて、元いた世界に戻されたんだと思う」
「ええぇ。手違いで召喚された挙げ句に平手打ちで帰されたの……?」
それはそれでどうかと思うのだが。
何事かと見やれば、召喚された人物の一人、モヒカン男が舌なめずりしながら言う。
「さっきからごちゃごちゃうるせえぜ!
異世界の勇者ぁ?
面白そうじゃねえか。その役目、引き受けた! この俺様がエンアポスに調和と秩序をもたらしてやるぜ! ひゃはー!」
そのナリで!?
やって来るのは調和じゃなく世紀末だろ!
俺はそんな感想を抱いたが、セリスは人を見た目で判断しない、公正な人物であるらしい。
モヒカン男に対し、真摯な眼差しで問いかける。
「それでは、自分こそが異世界の勇者だと言うのね?」
「ヒャッハー!」
「わかったわ。それなら女神の審査を受けてもらいましょう」
「ひゃは?」
「伝承によれば、女神によって認められた者には、勇者の証とも言える特殊なスキルが授けられるとあるわ。
女神の審査がどんなものなのか私にも見当がつかないけれど、受ける勇気はある?」
「ひゃっはー!!」
ひゃっはーだけでも会話は成立したらしく、セリスは一つ頷くと、魔道士の一団に合図を送った。
魔道士たちがすぐさま呪文の詠唱に入る。
すると、俺たちの足元に描かれていた魔法陣が、再び強い光を発し始めた。その光が粒子となり、モヒカン男の前に集まっていったかと思えば、ホログラム映像のように人影を形作っていく。
セリスが畏敬の念を込めてぽつりと呟く。
「女神オカミ・サーン……」
燐光を発して浮かび上がったのは妙齢の女性だった。
セリスたちの外見から、ギリシャ神話に出てくるような女神を想像していたが、顔立ちはむしろ東洋人のそれだ。
白い一枚布をまとうような衣装だが、和服の方が似合うのではとさえ思う。
女神オカミ・サーンは、ぽかんと口を開けているモヒカン男を見据えると、一喝するように声をかけた。
「コンノ!」
「ひゃは? いや、俺様は田中……」
「コンノ! そこに、LOVEは、あるんけ?」
その声は俺がじいちゃんの部屋で途切れ途切れに聞いたものと同じだった。どうやらあの時の声はオカミ・サーンのものだったらしい。
……というか、どっかで聞いたような台詞である。
俺がとあるCMのことを連想している間も、オカミ・サーンは問いを重ねる。
「コンノ! お前のドSに、LOVEは、あるんけ……?」
よくわからない問いかけと、女神の圧によって、モヒカン男は僅かにたじろいだ。
しかしすぐさま気を吐いて、「ヒャッハー!」の叫びと共に続ける。
「ドSに愛なんざ感じねえぜ!
この見た目ならアブノーマルじゃないと場を白けさせるんじゃねぇかとSM道具を常に持ち歩く気にしいの男、田中とは俺様のことだ!
ひゃっはー!!」
ごめんね田中!
見た目で判断してました!
こういった繊細な心の持ち主ならば確かに、異世界に調和と秩序をもたらすことができるかもしれない。
オカミ・サーンは果たして、どんな審判を下すのか。
固唾を呑んで見守っていると、オカミ・サーンはカッと眦を決し、大きく手を振り上げた。
そして、
「そこに、LOVEは、ないんかい!」
バチーン!!
と、強烈な平手打ちをモヒカン男にお見舞いする。
「あべしっ!」
モヒカン男が勢いよく吹き飛んだ。そのまま地面に倒れ込むかと思いきや、全身が光りに包まれ、唐突にこの場からかき消えてしまう。
「なっ……!」
慄然となって言葉も出せずにいると、セリスが安心させるよう、横合いから私見を述べた。
「大丈夫よ。あなたたちを召喚した際の光景によく似ていた。
きっと今の人は、勇者ではないと判断されて、元いた世界に戻されたんだと思う」
「ええぇ。手違いで召喚された挙げ句に平手打ちで帰されたの……?」
それはそれでどうかと思うのだが。
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