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2章⭐︎賢者の大冒険⭐︎
ふざけんな
しおりを挟む-side オーウェン-
何かを失って疲れ切った俺が今いるのは巨大な山。次の訓練に使うそうだ。
……え?あれで終わりじゃなかったのか?
『もちろんまだあるケロー。2番目の訓練はこれケロー』
「フェアリーケロベロス。精霊の国へ帰ったら言いたいことがある。神殿裏へ来てくれ」
これには流石の俺もにっこりである。
シルフは知らんぷりをしているが、後でこいつも神殿裏に呼び出そう。
『まま、待つケロ!これで最後ケロ……、多分(多分)最後ケロ!』
「本当か?」
『本当ケロ!多分(小声)これが終わったらグリモワール探しケロ!』
ボソボソところどころ何か言っているのが聞こえないが仕方がない。
『それじゃあ行くケロ!魔物の突風の攻撃に対抗するためには、それ以上の強力な突風を発生させなければならないそのため、突風の攻撃力を鍛える特訓をする必要があるケロー』
そう言ってフェアリーケロベロスは巨大な扇風機をいくつか出している。
だんだん嫌な予感がしてくる。というか、不思議な国へ来て嫌な予感がしなかったの最初に来た時だけだと思う。
訓練もまだ始まってないけれど、グリモワール探しも修羅の道だ。
早く精霊の国へ帰りたいんだが?
「……つまり?」
『巨大ファンをご用意したケロー!!頑張って山登りするケロ~!』
「デスヨネー」
ここの訓練が嫌な理由が分かった。おそらくほぼ全てが脳筋だからかだろう。
無茶苦茶だが、理にかなってそうな訓練ばかりだから尚更たちが悪い。
--ビュオオオオオオオ!!
突如現れた巨大ファンに逆らって山登りをする訓練。魔法があるからと言って至る所から突風が吹き、隙あれば下へ落とされるので中々進まない。
純粋な魔法の技術や体の使い方以上に精神力と忍耐力を求められるような脳筋な訓練だった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
最後の訓練も終わった。
今はシルフと一緒にようやく、帰れるかとほっと一息ついている。
ポーションを飲んで回復魔法もかけたので、体力も少しは回復してきたのではないのだろうか?そんなことを考えながらもぼーっとしていると、フェアリーケロベロスこっちにやってきた。
『ファ、ファイナルラストの訓練ケロー!』
「ああ、……って!はあああ?さっき、最後って言ってなかったか?」
『違ったケロ!これが本当に最後ケロ!……じゃなかった、ファイナルラストケロ!』
「ふざけんな」
仮に間違いを認めて、さっきのを最後と言ってしまったと言っても、今度という今度は許さねえからな。
というか、グリモワール探してとっとと帰るかこんな場所。訓練を沢山行ったおかげでだんだん地形が分かってきたような気がするし。
『まま待つケロ!さっきはた、多分最後って言ってたケロ!つまり、間違えてはないケロ!』
「は?」
『本当ケロ!多分って言ってたケロ』
「嘘だな」
『嘘じゃないよ』
さっきまで知らぬ存ぜぬだったシルフが急に話に入ってくる。
「は?」
『小声で言ってた、多分って。僕には聞こえた』
「……」
確かに思い出すと、ところどころ聞こえなかったところがあったな。あれは多分と言っていたのか。
…………。俺が聞こえなかった部分を聞き返さなかったのが悪いのか、フェアリーケロベロスがさっきのを最後だと間違えて、聞き取れるように言わなかったのが悪いのか。
『どっちもどっちケロー』
『そうそう、どうせならファイナルラストの訓練も受けときなよ。ファイナルラストらしいし、きっとためになるよ』
……。きっとためになる。
その言葉にめっぽう弱い俺は訓練を即座に切り捨てて断る事を躊躇う。
『やるケロ?』
『やろうよ』
「………………。エターナルラストとかないんだったら……」
『大丈夫ケロ~。それじゃあ、3番目は瞬時に透明になる能力に対抗する訓練ケロ!これに対抗する手段は魔力の暴力ケロ~!自身の周りに竜巻を起こすケロ~!力こそパワーケロ~!』
「…………?」
今までのに比べて、思っていたよりも簡単そうで拍子抜けだ。
というか、今度もまた脳筋だな。いや、待てよ?流石に捻りが無さすぎないか?
怪しいと思ってシルフの方を向く。
「なあシルフ」
『ん?』
「舐めてんのか?」
『ヒッ!?なんで僕?』
「いや、なんとなくこの訓練考えてるのフェアリーケロベロスじゃなくてお前っぽいなと」
ふざけた感じは不思議な国感あるが、このストレートな脳筋な感じは完全こいつとこいつの部下が考えてそうなんだよな……。
『ソソ……、ソンナコトナイヨ』
「ほーん」
図星か反応が分かりやすすぎる。
そうか、最後の訓練はシルフが考えたからフェアリーケロベロスは忘れていたのか。
色々と納得だ。
『と、ところで、シルフ様。流石にオーウェン殿にこの訓練だけは優しすると思うケロ?この訓練のついでにグリモワールも探すつもりケロ?』
『そうだねそのつもり』
『了解ケロー!』
そうか。不思議な国にシルフが忘れていたグリモワール。いつ探すんだろうと思っていたけれど、このタイミングで探し始めようとしていたのか。
「そういえば、グリモワールってこんな感じか?」
訓練の道中、それっぽい古い魔導書をいくつかとっておいたのをマジックバックに入れてあるからそれを見せる。
この中にあれば良いんだがな。
『全然違う』
『そうケロー!グリモワールはグリモワールでも今時のなうなヤングのグリモワールじゃないケロー!』
「なうなやんぐ?」
……というか、グリモワールであってるはあってるのかよ。
『そうそうペーパーよりもストーンボードに書いてあるペラペラとしたほうが性能面でもスマートでカッコイイデザインだからそれがブリリアントなんだよね』
「カタカナ多いし、なんだそのふざけた理由は!」
グリモワールはグリモワールでも、性能的に石板のほうが良いという事を言いたいのか?にしても、何を若者ぶっているのだろう。背伸びしまくりなのが見え見えである。まったく……。
それはともかく、こいつらは紙より石板派みたいなので、それっぽものを探しに行きますか。
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