43 / 51
2章⭐︎賢者の大冒険⭐︎
ふざけんな
しおりを挟む-side オーウェン-
何かを失って疲れ切った俺が今いるのは巨大な山。次の訓練に使うそうだ。
……え?あれで終わりじゃなかったのか?
『もちろんまだあるケロー。2番目の訓練はこれケロー』
「フェアリーケロベロス。精霊の国へ帰ったら言いたいことがある。神殿裏へ来てくれ」
これには流石の俺もにっこりである。
シルフは知らんぷりをしているが、後でこいつも神殿裏に呼び出そう。
『まま、待つケロ!これで最後ケロ……、多分(多分)最後ケロ!』
「本当か?」
『本当ケロ!多分(小声)これが終わったらグリモワール探しケロ!』
ボソボソところどころ何か言っているのが聞こえないが仕方がない。
『それじゃあ行くケロ!魔物の突風の攻撃に対抗するためには、それ以上の強力な突風を発生させなければならないそのため、突風の攻撃力を鍛える特訓をする必要があるケロー』
そう言ってフェアリーケロベロスは巨大な扇風機をいくつか出している。
だんだん嫌な予感がしてくる。というか、不思議な国へ来て嫌な予感がしなかったの最初に来た時だけだと思う。
訓練もまだ始まってないけれど、グリモワール探しも修羅の道だ。
早く精霊の国へ帰りたいんだが?
「……つまり?」
『巨大ファンをご用意したケロー!!頑張って山登りするケロ~!』
「デスヨネー」
ここの訓練が嫌な理由が分かった。おそらくほぼ全てが脳筋だからかだろう。
無茶苦茶だが、理にかなってそうな訓練ばかりだから尚更たちが悪い。
--ビュオオオオオオオ!!
突如現れた巨大ファンに逆らって山登りをする訓練。魔法があるからと言って至る所から突風が吹き、隙あれば下へ落とされるので中々進まない。
純粋な魔法の技術や体の使い方以上に精神力と忍耐力を求められるような脳筋な訓練だった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
最後の訓練も終わった。
今はシルフと一緒にようやく、帰れるかとほっと一息ついている。
ポーションを飲んで回復魔法もかけたので、体力も少しは回復してきたのではないのだろうか?そんなことを考えながらもぼーっとしていると、フェアリーケロベロスこっちにやってきた。
『ファ、ファイナルラストの訓練ケロー!』
「ああ、……って!はあああ?さっき、最後って言ってなかったか?」
『違ったケロ!これが本当に最後ケロ!……じゃなかった、ファイナルラストケロ!』
「ふざけんな」
仮に間違いを認めて、さっきのを最後と言ってしまったと言っても、今度という今度は許さねえからな。
というか、グリモワール探してとっとと帰るかこんな場所。訓練を沢山行ったおかげでだんだん地形が分かってきたような気がするし。
『まま待つケロ!さっきはた、多分最後って言ってたケロ!つまり、間違えてはないケロ!』
「は?」
『本当ケロ!多分って言ってたケロ』
「嘘だな」
『嘘じゃないよ』
さっきまで知らぬ存ぜぬだったシルフが急に話に入ってくる。
「は?」
『小声で言ってた、多分って。僕には聞こえた』
「……」
確かに思い出すと、ところどころ聞こえなかったところがあったな。あれは多分と言っていたのか。
…………。俺が聞こえなかった部分を聞き返さなかったのが悪いのか、フェアリーケロベロスがさっきのを最後だと間違えて、聞き取れるように言わなかったのが悪いのか。
『どっちもどっちケロー』
『そうそう、どうせならファイナルラストの訓練も受けときなよ。ファイナルラストらしいし、きっとためになるよ』
……。きっとためになる。
その言葉にめっぽう弱い俺は訓練を即座に切り捨てて断る事を躊躇う。
『やるケロ?』
『やろうよ』
「………………。エターナルラストとかないんだったら……」
『大丈夫ケロ~。それじゃあ、3番目は瞬時に透明になる能力に対抗する訓練ケロ!これに対抗する手段は魔力の暴力ケロ~!自身の周りに竜巻を起こすケロ~!力こそパワーケロ~!』
「…………?」
今までのに比べて、思っていたよりも簡単そうで拍子抜けだ。
というか、今度もまた脳筋だな。いや、待てよ?流石に捻りが無さすぎないか?
怪しいと思ってシルフの方を向く。
「なあシルフ」
『ん?』
「舐めてんのか?」
『ヒッ!?なんで僕?』
「いや、なんとなくこの訓練考えてるのフェアリーケロベロスじゃなくてお前っぽいなと」
ふざけた感じは不思議な国感あるが、このストレートな脳筋な感じは完全こいつとこいつの部下が考えてそうなんだよな……。
『ソソ……、ソンナコトナイヨ』
「ほーん」
図星か反応が分かりやすすぎる。
そうか、最後の訓練はシルフが考えたからフェアリーケロベロスは忘れていたのか。
色々と納得だ。
『と、ところで、シルフ様。流石にオーウェン殿にこの訓練だけは優しすると思うケロ?この訓練のついでにグリモワールも探すつもりケロ?』
『そうだねそのつもり』
『了解ケロー!』
そうか。不思議な国にシルフが忘れていたグリモワール。いつ探すんだろうと思っていたけれど、このタイミングで探し始めようとしていたのか。
「そういえば、グリモワールってこんな感じか?」
訓練の道中、それっぽい古い魔導書をいくつかとっておいたのをマジックバックに入れてあるからそれを見せる。
この中にあれば良いんだがな。
『全然違う』
『そうケロー!グリモワールはグリモワールでも今時のなうなヤングのグリモワールじゃないケロー!』
「なうなやんぐ?」
……というか、グリモワールであってるはあってるのかよ。
『そうそうペーパーよりもストーンボードに書いてあるペラペラとしたほうが性能面でもスマートでカッコイイデザインだからそれがブリリアントなんだよね』
「カタカナ多いし、なんだそのふざけた理由は!」
グリモワールはグリモワールでも、性能的に石板のほうが良いという事を言いたいのか?にしても、何を若者ぶっているのだろう。背伸びしまくりなのが見え見えである。まったく……。
それはともかく、こいつらは紙より石板派みたいなので、それっぽものを探しに行きますか。
-----------------------------
133
お気に入りに追加
1,672
あなたにおすすめの小説

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる