ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜悪役令息として追放された魔境でヴァイオリン練習し

西園寺わかば🌱

文字の大きさ
上 下
39 / 51
2章⭐︎賢者の大冒険⭐︎

忘れちゃったんだよね⭐︎

しおりを挟む
-side オーウェン-



『今の風の精霊竜--エリアスの力は、この杖に封印されている』
「その材質……」


 オリハルコンだ。先端に竜の頭がついている透明感のある黄緑色の杖は直感的にそう感じさせるような圧を放っている。


『そう、この杖は頭から先まで全て、オリハルコンでできている。』
「なんと……!」


 隣で聞いている長老が驚きの声をあげた。
 オリハルコン。風に噂程度にしか聞いたことがないが、バルトシュワルツ王国では、数少ない大貴族が、1カラットくらいしかないオリハルコンの原石を家宝として厳重に保管してあると聞く。近現代では、新たに発見されたものはなく、現存しているものは、神話の時代に発見されたものだけなので、情報通はどこにあるのかが、全て分かっているという。
 この杖一本分のオリハルコン。そんなの貰ったら、下手したら政争の火種になって、王家が出てきそうだ。


「流石にそれは、貰えないよ。」
『いやいや、大丈夫。人間界でこれが見つかっても、君が想定しているような事態にはならないよ』
「なんで?」
『だって、これ自体が精霊竜だもん。だから、持つ人を選ぶよ』
「……?どういうこと?」
『つまり、精霊竜は物質化するとオリハルコンになるってこと』


 何だそれ。ここにきて久しぶりにすごい乙女ゲームっぽくないか?その精霊竜がイケメン攻略対象に変身できたりとかして、ヒロインが聖女として解放してあげるとかだったら尚更それっぽい。
 まあ、あの乙女ゲームに精霊なんて出てきてないから攻略対象の線はないと思うが。


 それで言ったら、まだリオンシュタットの冒険者ギルドに攻略対象がいるとかの方がまだ現実味がありそうだ。
 この世界の元になった乙女ゲームには、全員が行うメインストーリーと、個別キャラストーリーに分かれていて、初期の攻略キャラ以外にもアップデートで攻略キャラが増えていた。
 俺もメインストーリーである本編はクリアしたが、その後の個別キャラのストーリーとアップデートで追加されたのがキャラは、課金したく無かったのと、面倒で気になったキャラしか、やっていなかったからな。そもそも、どんなキャラがアプデ追加されたのか分からない。


 今思うと全ルートやっとけば良かったなと思う。エルフの隠しキャラとか探せばありそう。トムとレムとかめちゃくちゃ攻略対象っぽくないか?そう考えたところで、本題の戻る。


「…………なるほど?精霊には実態がないと聞いていたけど、物質化する事ができると。」
『そうだね。力を使いすぎてしまって精霊としての存在を維持できなくなった時に、身を守るため、物質化して力を貯めるんだ。その際に体がオリハルコンになるんだよ。』


 へーー。待て待て。だとすると、人間界にあるオリハルコンって、力のない精霊が捉えられている姿……?


『ああ、安心していいよ。主人が恐れている事はない。基本、オリハルコンはしっかりダンジョンでごくごくたまに発見される純粋に岩からできているものもあるから。まあ、最近はオリハルコンが出るダンジョンは作られてないみたいだけど』
「ああ、良かった……」


 そういえば、CHAT-GPP作⭐︎テンプレ乙女ゲームのヒロインであるソフィアも、エンディングでオリハルコンに指輪を貰っていた気がする。今思うと、攻略対象は良くそんな大事な物をソフィアに渡したものだ。
 プレーしていた当時はなんとも思わなかったが、好きな相手とはいえ、流石に勿体なさすぎないか?


『それでさ、風龍の杖から風竜を解放するには、風のグリモワールがいるんだけど……』
「ああ」
『実はさ、不思議な国へ置いてきちゃったんだよね⭐︎』
「は?」
『そーそー。だから、一緒に探してほしい。レベルアップもできるし、風龍の力を解放するために必要な、疾風の獣という魔物の討伐にも役立つと思うし!』
「いや、そーそーじゃなくて……」
『あーっと、ちなみに、疾風の獣はこんな特徴があるよ!』


 シルフによる早口解説によると、俺が討伐するべき敵は次のような能力を持っているらしい。


①高速の飛行能力: 速く飛ぶことができ、風の力を駆使して瞬時に場所を変える能力。
②突風の攻撃: 風の力を集め、強力な突風や竜巻を発生させて攻撃する能力。
③瞬時に透明になる能力


「おい、めちゃくちゃ強いじゃねえか」
「うん?強いよ?」


 シルフはケロッと開き直ってこちらをみている。おいこら。


「1、2はともかく3の特徴は無理すぎるのでは?」
『大丈夫だよ!不思議な国で鍛えれば、いけるはず!そうだよね?ケロ?』
『いけるケロー!』
「いや、本当にいけるのかよ?俺で、大丈夫か?」
『本当ケロー、ビシバシ鍛えるケロー!』
「そ、そうなのか。まあいいか、ありがとう。」


 思うところがあるけれど、鍛えてくれて大丈夫だと言っているのだからそうなのだろう。
 それにしても、なぜ俺なんだろうか?
 気になったので聞いてみる。


『ああ、それはね。風の精霊竜を解放できるのは、浄化魔法を使える聖者だけなんだ。』


 またか……。俺がこれだけ頼れる理由。これもしかすると、ヒロインであるソフィアが聖女の仕事サボってるからではないか?
 本来、聖女が真面目に働いていて、浄化できた場所ができていたら、俺に依頼を頼まれる事は無かったのではないか?そう考えると、なんか全てが繋がってきた気もする。


「ところで、シルフ。不思議な国にグリモワール忘れたっていうところを聞きたいんだが。」
『まあまあ、気にしない気にしない』
「気になるわ!」
『チッ……、許されないか?』
「許されねえだろ。そりゃ。」


 というか、今舌打ちが聞こえたんだが?
 後ろめたさマックスじゃねえか。
 じっくり問い詰めようか。


-----------------------------------
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...