ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜悪役令息として追放された魔境でヴァイオリン練習し

西園寺わかば🌱

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1章⭐︎リオンシュタット初心者編⭐︎

森が豊かになっていた

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-side オーウェン-



「ここが、我が家だ。えっ……!?」
「どうしたんですか?えぇぇぇぇ………!!」
『これは……』


 冒険者ギルドから、ロンを連れて家に帰ってきた。
 だけど、なぜだろう?森がさらに大きくなっているように気がするんだが?
 見間違いだろうか?神々しいまでに優美なお花畑も出来ている上に、見た事ない木の実がたくさん実っている。
 あと、見知らぬ生物がたくさん駆け回っている気がする。
 何を言っているんだろうか?俺は。いや、見たものそのまんまを話しているのだが。


『あ、主人~!シルフ様~!おかえり~!』
『お帰りなさいですわ~!』
「ただいま!……って、この庭、どうなってるんだ!?」
『ああ……それはですね。主人の魔力と、この庭の、事を聞きつけた聖獣達がみんなここへ集まって来ているのですわ!』
『聖獣達のおかげで、森の木々も元気が出たみたいだぜ!』


 ほえーー。聖獣。
 確か、フェルもそうなんだよな?
 という事は、フェルにも、お友達が出来るかもしれない。正直、俺は勝手にフェルの親みたいな存在だと思っているから、息子に、友達が出来る可能性がある事は喜ばしい事だとは思う。


 しかし、聖獣、聖獣か……、薄々気付いてきたけれど王都にいるウィリアムとかに報告しておいた方がいいレベルの話になっているのか?これは?
 だけど、どこから、情報が漏れるかも分からないし、最悪この事が、ヒロインに漏れたら、全面戦争に発展しなくもない気がする。
 権力だけは持っているからなあ、あいつ。
 非常に取り扱いの難しい問題だと思う。


「キャン!キャン!」
「ニャーニャー!」


 そんな事を思いつつ、フェルを観察する。
 フェルは、黒いスレンダーなイケメン猫と一緒に、お花畑を走り回っている。
 あの新しいお友達は、どう言う聖獣なんだろう?気になる。


「ちなみにあの猫は?」
『あれは、闇の精霊だな!』
「精霊……?いや、聖獣じゃ無いんかい!」
『そりゃ、ここにいる全ての生き物が聖獣な訳ないだろう。俺たちみたいな、こっちの世界に住んでいた、弱っていた精霊も多くやって来た』
「ほーーう」
『みんな、お前に感謝していたぞ!今度、またヴァイオリン聴かせてくれよ!』
「お安いご用だ」


 ヴァイオリンを弾くのは趣味だからな。
 今世では、ヴァイオリンを弾くのはとても楽しい。


 前世では、ヴァイオリンを弾くのは辛い時期もあったからな。
 もちろん、嫌いだったら途中でやめているから、好きで弾き続けていたが、それでも、上手くなるには、もっと、1音1音の音程が狂わないように、もっと、リズムを間違えないように、もっと、いい音色を出せるように、もっと、表現の仕方をこうできるように……、もっと、もっと……。
 --とまあ、段々弾いていると、楽しさを忘れる時期て自分を追い詰めすぎる時もある。


 ちなみに、ヴァイオリンを一人で独学で練習することは稀だ。ほとんどの場合、レッスンして下さる先生がいる。
 正直、自分で追い詰めるだけでなく、指導してくださる先生にも沢山指摘されて、それがすぐに実現できずに悩んでしまうケースも多々ある。……というか、ヴァイオリンを弾く人の悩みの大半はこれではないか?とも思う。


 そう言う時には、普通なら、一旦距離を置くのが良いけど、毎日、弾かないと上手くなれないから、中々休めない事もあるとは思う。
 レッスンも毎週あるし……。俺みたいな、ソリスト--ソロで弾いている人だったら、まだ良いが、これがオーケストラの場合だと、他人に迷惑をかけられないから、余計に練習をサボりにくい。
 さらに、練習をサボりすぎると、ポジション争いに負ける。なるべくなら休まない方がいいので、休めないと言う問題もある。


『……そういえば、冒険の途中で、主人のヴァイオリンを近くで聴いたおかげか、僕も力が以前よりも増しているような気がする。これなら、精霊門も開けるかも!』
『それは、本当ですか!?シルフ様!!』
『ああ……、間違いない。今ならいける気がする。無論、オーウェンには手伝ってならば、だけど』
『なら、早速行きましょう!』
「ちょ、ちょっと待て。シルフも俺も、家に帰ったらばかりで疲れているんだ。明日、絶対やるから、今日は休ませてくれない?」


 それに、さらっと言っているけれど、精霊門を開くだ?精霊門って、前にエリーゼさんが言っていたものなのだろうか?
 だとしたら、開く前にまずは連絡もしたい。背後に控えている、トムとレムの反応を見るに、エルフ達も興味はあるだろう。事前に、色々と根回しが必要だ。
 門を開くメリット、デメリットが分からないと、何が起こるか分からないから非常に不安だ。


『あっ……、ああ。そうでしたわね。テンションが上がって、早とちりしてしまいましたわ。すまねえですわ~!』
『すまねえ、主人。シルフ様』
「大丈夫だ。それよりも、お肉!沢山持って来たから、食おうな」
『本当か!?やったぜ!』
『やたーー!』


 二人は俺の周りをパタパタとはしゃぎ回った。少し落ち着いたところで、周りを見渡すと、口をあんぐり開けたまま塞がっていないロンの姿が見える。
 その姿が、なぜか分からないが、入学試験の時、たまたま試験に顔を出した学園長がしていた姿と重なる。
 そうだ!どこかで見たことあると思ったら、あのローブ。学園長のだ。もしかして、親戚か?娘さんとかかな?


「あの……、ロン?」
「は、はぃぃぃ!こ、これは、ど、ど、ど、どう言うことでしょうか?」
「落ち着け」
「お、お、落ち着きます!」


 だめだな。混乱しているみたいだ。
 とりあえず、一旦、家の中へ入ろうか。




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