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1章⭐︎リオンシュタット初心者編⭐︎
精霊の門
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-side オーウェン-
「はあ、賢者のお前さんを追放--?正気かい、王国は?」
「ふっ……!まあ、正気では無かったことは確かですね」
「笑ってる場合かい……。まあ、今はいいか。それで、賢者ということは、上級光属性魔法も使えるということかい?」
「ああ」
「なるほど。それで、リッチを倒したと」
「そうなりますね。リッチだった事は知りませんでしたが」
「そんな、無自覚に有能さを見せるのやめて欲しいものだねえ」
「そう言われましても……」
本当に、リッチだとは、知らずに倒してしまったし、知っていたら、もう少し用心して、魔法を放っていただろう。
そんな言葉は、口に出さず、エリーゼさんの様子を伺う。彼女は、何か考えた様子で、こちらを見ていた。
「ふむ、あーー、だったら、お前さんに頼みたい事がある」
「頼みですか?」
「ああ。もっとも、すぐに、出来ることでもないだろうがね」
「はい……」
「実はねえ。あの町の近くに、精霊の国へと繋がる門があるらしいんだが……今は、聖女がいないから、光魔法1発で、その門を、開けられる人物がいないんだ。光属性の魔法を使える人物がこんな辺境に来るわけでもなく……、精霊界の門は、閉じたままでねえ」
「へーー」
もしかして、その聖女って、ヒロインの事だったり、するのだろうか?ゲームには、そんな設定無かった気もするのだが。覚えてないなあ。
「正直、別に精霊がいなかったところで、やっていけているから、あたい達にはなんの関係もないと思うんだけど、ここに住むエルフ達に頼まれてね……困っていたところなんだよ」
「ああ--、確かエルフは、精霊を信仰しているんでしたっけ?」
「そうさね。冒険者の中にも、エルフは結構いる。あたいらもポーション作りとかでお世話になっているから、彼らを助けたいという気持ちがあったけど、流石に、光属性持ちの魔法使いをこんな辺境には呼べないからね。そんな時、オーウェン様が来たってわけだ」
「なるほど……、分かりました。引き受けます。領民の願いを領主が聞くのは当然のことですから」
そう言うと、エリーゼさんは、驚いたように目を見開く。
「ククッ……!眩しいねえ。全く、なんでこんな立派な人間が、追放されてきたのか、いや、立派だからか……。どちらにせよ、こちらとしては嬉しい限りだねえ」
「は、はあ」
「今まで、結構ひどい人物が領主の時もあったから、あたいがその度に追い出していたんだけど、お前さんは、その心配もないようだし、安心だね」
「そ、そんなですか」
「ああ。ろくな奴いなかったよ。もっとも、みんなあたいらに愛想を尽かされて、魔境に隣接する土地で、魔物にやられていなくなったと思うが」
「は、はあ」
さらっと、物騒な事言ったなこの人。
しかし、なるほど。どうせそいつらは、冒険者を下に見ていたせいで、反感を買って、色々助けて貰えなかったのだろう。
もし、その状況でも、俺なら一人でもやっていけたか?いや、この魔境で、人の助けがないとかは無理だろう。
冒険者ギルドを敵に回さなくて、良かったな。特に、目の前にいる、エリーゼさん。この人だけは、敵に回すまい。
「ま、昔の話さ。少なくとも、ここ10年くらいは、国もここへ貴族を送り込んでくることも無かった。ユリウス様が、あたいに全て任せてくれていたからねえ」
「へーー」
ユリウスが信頼している人物がいるから、俺はここへ送られて、来たのか。下手に、安全な土地より、確実に信頼できる人物が治めている土地の方が良いからな。
エリーゼさん、敵に回すと怖いけど、信頼は出来そうだし、下手なことをして信頼を損ねない限りは、守ってくれるだろう。
「その様子だと、やっぱり、ユリウス様とがっつり仲がいいみたいだねえ。あんた」
「ええ。まあ……、親友だと思っています。一応は」
「ふっ……!そうかい。あの、人間不信の完璧王子が、懐くなんてあんた、やっぱり相当だねえ」
「あはは……、その言葉、そっくりそのまま返しますよ」
人間不信の王子……懐かしい響きだ。
「言うねえ。あんた。やっぱり、ユリウス様の事を抜きにしても、なんとなくあんたとはうまくやれそうだ。……じゃあ、ま、今日のところは、とりあえずはそんなところで。これからよろしく頼むよ」
「ええ。こちらこそ、お世話になります」
昨日今日で、どっと疲れた俺は、一旦、家に帰ることにしたのだった。
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「はあ、賢者のお前さんを追放--?正気かい、王国は?」
「ふっ……!まあ、正気では無かったことは確かですね」
「笑ってる場合かい……。まあ、今はいいか。それで、賢者ということは、上級光属性魔法も使えるということかい?」
「ああ」
「なるほど。それで、リッチを倒したと」
「そうなりますね。リッチだった事は知りませんでしたが」
「そんな、無自覚に有能さを見せるのやめて欲しいものだねえ」
「そう言われましても……」
本当に、リッチだとは、知らずに倒してしまったし、知っていたら、もう少し用心して、魔法を放っていただろう。
そんな言葉は、口に出さず、エリーゼさんの様子を伺う。彼女は、何か考えた様子で、こちらを見ていた。
「ふむ、あーー、だったら、お前さんに頼みたい事がある」
「頼みですか?」
「ああ。もっとも、すぐに、出来ることでもないだろうがね」
「はい……」
「実はねえ。あの町の近くに、精霊の国へと繋がる門があるらしいんだが……今は、聖女がいないから、光魔法1発で、その門を、開けられる人物がいないんだ。光属性の魔法を使える人物がこんな辺境に来るわけでもなく……、精霊界の門は、閉じたままでねえ」
「へーー」
もしかして、その聖女って、ヒロインの事だったり、するのだろうか?ゲームには、そんな設定無かった気もするのだが。覚えてないなあ。
「正直、別に精霊がいなかったところで、やっていけているから、あたい達にはなんの関係もないと思うんだけど、ここに住むエルフ達に頼まれてね……困っていたところなんだよ」
「ああ--、確かエルフは、精霊を信仰しているんでしたっけ?」
「そうさね。冒険者の中にも、エルフは結構いる。あたいらもポーション作りとかでお世話になっているから、彼らを助けたいという気持ちがあったけど、流石に、光属性持ちの魔法使いをこんな辺境には呼べないからね。そんな時、オーウェン様が来たってわけだ」
「なるほど……、分かりました。引き受けます。領民の願いを領主が聞くのは当然のことですから」
そう言うと、エリーゼさんは、驚いたように目を見開く。
「ククッ……!眩しいねえ。全く、なんでこんな立派な人間が、追放されてきたのか、いや、立派だからか……。どちらにせよ、こちらとしては嬉しい限りだねえ」
「は、はあ」
「今まで、結構ひどい人物が領主の時もあったから、あたいがその度に追い出していたんだけど、お前さんは、その心配もないようだし、安心だね」
「そ、そんなですか」
「ああ。ろくな奴いなかったよ。もっとも、みんなあたいらに愛想を尽かされて、魔境に隣接する土地で、魔物にやられていなくなったと思うが」
「は、はあ」
さらっと、物騒な事言ったなこの人。
しかし、なるほど。どうせそいつらは、冒険者を下に見ていたせいで、反感を買って、色々助けて貰えなかったのだろう。
もし、その状況でも、俺なら一人でもやっていけたか?いや、この魔境で、人の助けがないとかは無理だろう。
冒険者ギルドを敵に回さなくて、良かったな。特に、目の前にいる、エリーゼさん。この人だけは、敵に回すまい。
「ま、昔の話さ。少なくとも、ここ10年くらいは、国もここへ貴族を送り込んでくることも無かった。ユリウス様が、あたいに全て任せてくれていたからねえ」
「へーー」
ユリウスが信頼している人物がいるから、俺はここへ送られて、来たのか。下手に、安全な土地より、確実に信頼できる人物が治めている土地の方が良いからな。
エリーゼさん、敵に回すと怖いけど、信頼は出来そうだし、下手なことをして信頼を損ねない限りは、守ってくれるだろう。
「その様子だと、やっぱり、ユリウス様とがっつり仲がいいみたいだねえ。あんた」
「ええ。まあ……、親友だと思っています。一応は」
「ふっ……!そうかい。あの、人間不信の完璧王子が、懐くなんてあんた、やっぱり相当だねえ」
「あはは……、その言葉、そっくりそのまま返しますよ」
人間不信の王子……懐かしい響きだ。
「言うねえ。あんた。やっぱり、ユリウス様の事を抜きにしても、なんとなくあんたとはうまくやれそうだ。……じゃあ、ま、今日のところは、とりあえずはそんなところで。これからよろしく頼むよ」
「ええ。こちらこそ、お世話になります」
昨日今日で、どっと疲れた俺は、一旦、家に帰ることにしたのだった。
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