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1章⭐︎リオンシュタット初心者編⭐︎
リオンシュタット流歓迎
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-side オーウェン-
「……とは言ったものの、ここ、どう見ても、冒険者ギルドなんだけど……。事前に、貰った手紙によるとここで、間違いはないみたいだけど、本当かなあ」
周りには、屈強で、荒くれ者の冒険者ばかり。細マッチョのエルフや筋肉ムキムキのドワーフもいる。俺の今の格好は、代官に会うために、貴族っぽいしっかりとした感じだから、明らかに場違い。
話しかけてこそ来ないが、さっきから視線が痛い。正直、社交界でこんな感じのことは何回かあったから、慣れてはいるけれども。
意を決して、中を開ける。--ん?この、ギルドのドア、俺の屋敷のドアに似ているな?
建てた人がもしかしたら、同じなのかもしれない。雰囲気はともかく、壊れにくく、良い建物なのかもしれない。
--カランコロン
中に入ると、やっぱり、冒険者ギルドそのものだ。とりあえず、ギルド嬢に、聞いてみるか。
「おうおう?お兄さん。そんな格好して、どうしたんだ?ここは、お兄さんみたいな、人が来る場所じゃないんだがな」
--と思ったが、茶髪に、茶色の目をした俺より10cmくらい高めの冒険者風のカッコいいお兄さんが、話しかけてきた。
多分だけど、この人酔ってる。若干酒臭い。
「ああ、えっと、ギルド嬢に、聞いたらすぐに帰るので……」
実は俺、冒険者ギルドとは、あまり関わりたくないと思っている。家でも、学園でも、城でも、あまり良い噂を聞いたことがなかったからだ。
ユリウスくらいじゃないか?冒険者に友達がいるの。あいつは、好奇心旺盛で誰とでも仲良くなれるタイプだから、王族の中、貴族の中でも、変わっているが。
「ほーー!そうか!なるほど……、なるほど!それだったら、応援するぜ!
で?どの子がタイプなんだ?」
「……は?」
目の前のお兄さんは、突然肩を組んできて、ひそひそとした声で話す。
何が、なるほど、なるほどなのか、……なるほど?よく分からない。
「水臭いぜ。お前……、最初から言ってくれたら、応援したのによ!」
「えっ……!?」
水臭い--本来この言葉は、親しい間柄に使うべき言葉であって、初対面の人に対する言葉ではない……よな?
なるほど?さっきから、よくわからん。
助けを求めて、ギルド嬢達の事を見るとみんなして全力で目を逸らされた。どうやら、この男は、ダル絡み常習犯らしい。
「あ、今あっちのギルド嬢見たな!
そうかそうか、あの子が--あいでえ!」
後ろから、赤髪に、青眼の美しい女性が現れたと思ったら、--バシンッ!!という音と共に、冒険者のお兄さんの頭を叩いた。
「何するんですか?姐さん!」
「お前こそ、あたしの客に何してくれてんだい!全く、大変な事をしよって」
「へ--?姐さんの客?この男、姐さんの彼氏なの?--うぐっ!!」
--ドスッ!
聞いてはいけない音をさせ、殴られた、お兄さんは、その場でうずくまる。
「なるほど?これが、リオンシュタット……」
「--勘違いしないでいただきたい、領主殿」
領主殿--その言葉が、姐さんと呼ばれた目の前にいる女性から、発せられた瞬間、その場にいた全員がこちらをチラリと見る。
どうやら、その場にいた全員が、聞き耳を立てていたみたいだ。
「はあ……、状況から見るに、あなたが、リオンシュタットの代官、エリーゼさんでよろしいでしょうか?」
「ああ。いかにも、あたしが、リオンシュタットの代官だ。さっきは、うちの部下が失礼した。悪いやつじゃないんだ。ちと、脳みそが筋肉で出来てしまっているだけで」
「あはは……、それより、これからよろしくお願いします。--と言っても、俺は、屋敷にこもっているだけなので、今までと変わらず、この町のことはおまかせする形になるのですが」
「はいよ。任せときな」
エリーゼは慣れた様子だ。
多分、今まで、ここにきた歴代の領主も似たような挨拶をしにきたのだろう。
「では、俺はこれで……」
まあ、色々あるが、仕事も済んだし帰るか。冒険者と必ずしも、関わる必要はないし、エリーゼの人柄も悪くなさそうだ。
この町で、やっていけそうである。
「まちな?」
「--え?」
「あんた、結構、強いだろ?是非、そこで、盗み聞きしている奴らに手合わせして欲しいんだが?一応、その間に歓迎会の準備もするから、その間にどうだい?」
一応、歓迎はしてもらえているような誘いっぷりである。冒険者との関わり、あまり持ちたくは無かったが……。
「……ちなみに、嫌と言ったら?」
「あたしと戦うかい?」
「嫌ですね。」
さっきの、お兄さんを殴った動き、目で追えなかった。きっと、この人、この町で最強だ。俺よりも強い事、間違い無いだろう。
「即答かい。全く。情けない……、だが、実力を弁えている奴は嫌いじゃ無いよ。こりゃますます、うちの連中と手合わせさせたくなった。ちなみに、誰か一人にでも、勝てたら冒険者の資格をあげるよ?この町でも、きっと役に立つはずだ」
「--いらないですよ。やりたくは無いですけれど、これが、リオンシュタット流の歓迎会なら、受けて立ちます」
「うっしっし!うちの冒険者の資格をいらないとは!後で、貰えなくて、泣いても知らないよ?まあ、でも、リオンシュタット流の歓迎の仕方、よく分かってるじゃ無いか。
ふむ。後のことは。そこの助手に色々任せてるから、あとは、そっちでやってくれ。あたしは、料理でもしながら見学してるからねーー」
リオンシュタットの土地の事、現状、聞くんだったらエリーゼさんが一番良いだろう。
ここで、仲良くなるのも、悪くは無い。
その方法が手合わせというのは、よく分からないけど、やるしか無いか。
------------------------------------
[(100倍大人しくなった)ブラン]
[100倍お淑やかになった)エリーゼ]
「……とは言ったものの、ここ、どう見ても、冒険者ギルドなんだけど……。事前に、貰った手紙によるとここで、間違いはないみたいだけど、本当かなあ」
周りには、屈強で、荒くれ者の冒険者ばかり。細マッチョのエルフや筋肉ムキムキのドワーフもいる。俺の今の格好は、代官に会うために、貴族っぽいしっかりとした感じだから、明らかに場違い。
話しかけてこそ来ないが、さっきから視線が痛い。正直、社交界でこんな感じのことは何回かあったから、慣れてはいるけれども。
意を決して、中を開ける。--ん?この、ギルドのドア、俺の屋敷のドアに似ているな?
建てた人がもしかしたら、同じなのかもしれない。雰囲気はともかく、壊れにくく、良い建物なのかもしれない。
--カランコロン
中に入ると、やっぱり、冒険者ギルドそのものだ。とりあえず、ギルド嬢に、聞いてみるか。
「おうおう?お兄さん。そんな格好して、どうしたんだ?ここは、お兄さんみたいな、人が来る場所じゃないんだがな」
--と思ったが、茶髪に、茶色の目をした俺より10cmくらい高めの冒険者風のカッコいいお兄さんが、話しかけてきた。
多分だけど、この人酔ってる。若干酒臭い。
「ああ、えっと、ギルド嬢に、聞いたらすぐに帰るので……」
実は俺、冒険者ギルドとは、あまり関わりたくないと思っている。家でも、学園でも、城でも、あまり良い噂を聞いたことがなかったからだ。
ユリウスくらいじゃないか?冒険者に友達がいるの。あいつは、好奇心旺盛で誰とでも仲良くなれるタイプだから、王族の中、貴族の中でも、変わっているが。
「ほーー!そうか!なるほど……、なるほど!それだったら、応援するぜ!
で?どの子がタイプなんだ?」
「……は?」
目の前のお兄さんは、突然肩を組んできて、ひそひそとした声で話す。
何が、なるほど、なるほどなのか、……なるほど?よく分からない。
「水臭いぜ。お前……、最初から言ってくれたら、応援したのによ!」
「えっ……!?」
水臭い--本来この言葉は、親しい間柄に使うべき言葉であって、初対面の人に対する言葉ではない……よな?
なるほど?さっきから、よくわからん。
助けを求めて、ギルド嬢達の事を見るとみんなして全力で目を逸らされた。どうやら、この男は、ダル絡み常習犯らしい。
「あ、今あっちのギルド嬢見たな!
そうかそうか、あの子が--あいでえ!」
後ろから、赤髪に、青眼の美しい女性が現れたと思ったら、--バシンッ!!という音と共に、冒険者のお兄さんの頭を叩いた。
「何するんですか?姐さん!」
「お前こそ、あたしの客に何してくれてんだい!全く、大変な事をしよって」
「へ--?姐さんの客?この男、姐さんの彼氏なの?--うぐっ!!」
--ドスッ!
聞いてはいけない音をさせ、殴られた、お兄さんは、その場でうずくまる。
「なるほど?これが、リオンシュタット……」
「--勘違いしないでいただきたい、領主殿」
領主殿--その言葉が、姐さんと呼ばれた目の前にいる女性から、発せられた瞬間、その場にいた全員がこちらをチラリと見る。
どうやら、その場にいた全員が、聞き耳を立てていたみたいだ。
「はあ……、状況から見るに、あなたが、リオンシュタットの代官、エリーゼさんでよろしいでしょうか?」
「ああ。いかにも、あたしが、リオンシュタットの代官だ。さっきは、うちの部下が失礼した。悪いやつじゃないんだ。ちと、脳みそが筋肉で出来てしまっているだけで」
「あはは……、それより、これからよろしくお願いします。--と言っても、俺は、屋敷にこもっているだけなので、今までと変わらず、この町のことはおまかせする形になるのですが」
「はいよ。任せときな」
エリーゼは慣れた様子だ。
多分、今まで、ここにきた歴代の領主も似たような挨拶をしにきたのだろう。
「では、俺はこれで……」
まあ、色々あるが、仕事も済んだし帰るか。冒険者と必ずしも、関わる必要はないし、エリーゼの人柄も悪くなさそうだ。
この町で、やっていけそうである。
「まちな?」
「--え?」
「あんた、結構、強いだろ?是非、そこで、盗み聞きしている奴らに手合わせして欲しいんだが?一応、その間に歓迎会の準備もするから、その間にどうだい?」
一応、歓迎はしてもらえているような誘いっぷりである。冒険者との関わり、あまり持ちたくは無かったが……。
「……ちなみに、嫌と言ったら?」
「あたしと戦うかい?」
「嫌ですね。」
さっきの、お兄さんを殴った動き、目で追えなかった。きっと、この人、この町で最強だ。俺よりも強い事、間違い無いだろう。
「即答かい。全く。情けない……、だが、実力を弁えている奴は嫌いじゃ無いよ。こりゃますます、うちの連中と手合わせさせたくなった。ちなみに、誰か一人にでも、勝てたら冒険者の資格をあげるよ?この町でも、きっと役に立つはずだ」
「--いらないですよ。やりたくは無いですけれど、これが、リオンシュタット流の歓迎会なら、受けて立ちます」
「うっしっし!うちの冒険者の資格をいらないとは!後で、貰えなくて、泣いても知らないよ?まあ、でも、リオンシュタット流の歓迎の仕方、よく分かってるじゃ無いか。
ふむ。後のことは。そこの助手に色々任せてるから、あとは、そっちでやってくれ。あたしは、料理でもしながら見学してるからねーー」
リオンシュタットの土地の事、現状、聞くんだったらエリーゼさんが一番良いだろう。
ここで、仲良くなるのも、悪くは無い。
その方法が手合わせというのは、よく分からないけど、やるしか無いか。
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[(100倍大人しくなった)ブラン]
[100倍お淑やかになった)エリーゼ]
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