上 下
61 / 77
3章⭐︎新しい家族から学ぶ帝王学編⭐︎

温泉に行こうか

しおりを挟む
-side リアム-



「エルフには、人間と違う固有魔法があることは知っておるじゃろう?」
「ええ。なんとなく。」


 確か、精霊魔法と言って、自然の力を借りた魔法だと前にヘンリーが用意してくれた、自宅の家庭教師から習った気がする。


「その中に、世界樹を使って、家出をした子供を探す魔法があるのじゃ。それを使って、ヨルムンガルドを見つける事ができるはずじゃのう。」
「ほうほう。」
「この魔法……家出を繰り返す、エドを探すために、ワシが最近作ったんだがな、大変便利じゃということに気づいたのじゃ。それまでは、エドの暴走を抑えるのに苦労しとったからのう。」
「……。」


 エド……お前、何してるんだよ。--っと思わず、ジト目で見る。


「仕方ないだろ。ポーションを売る先、みんな困っていたんだ。だから、ちょっと、人間の町に寄ろうかなと思って。」


 おお。案外理由はまともだ。
 だけど。


「ちょっとだけでも、……エドみたいな、美少年が一人で、人間の町に現れたら、速攻で攫われて奴隷になりそうだな。」


 俺もそう思う。


「ヘンリーの言うとおり、丁度見つけた時に、賊に攫われかけておってのう。肝が冷えたわい。」


 おうふ……それはそれは。


「あ、あいつらより、俺の方が強かったから、返り討ちに出来たらいいだろう!?」
「たまたまじゃ!たまたま!言っておくが、この中の誰かが、エドを攫おうとした場合、お前は誰にも勝てんのじゃ!」
「え……。」


 ちらっと、俺の方を見る。


「うん。残念だけど、エドより俺の方が強い……かな?」
「う……うそ。お前、何歳だ?」
「5歳。今度、6歳になる。」
「お、……俺より、5歳も年下なのに……。」


 おお、という事はノアと同い年か。
 どちらも、金髪青眼の美少年だけど、向こうは隙がなさそうで、こっちは、よく言えば可愛げがある、言葉を選ばずに言うと、やんちゃで、危うい感じだな。
 同い年でも種族と育ち次第で全然違った、道を歩んでいる事は、見ていてとても面白い。


「--っと、話が逸れてしまったな。
 そういうわけで、ヨルムンガルド探しは可能だ。もっとも、見つかる保証はないのじゃがな。」
「分かりました。ありがとう。探すための魔法に、何か必要なことはありますか?」
「そうじゃな。できれば、ヨルムンガルドの身内のものがあればいい。出来れば体毛とか。」
「シルバーの毛とかでいいってことですか?」
「うむ。」
「もらうよ?」
『ああ。』
「んじゃ--って、ちょっと待って。
 シルバー、お前汚くなってないか?」
『む?そ、そうでもなくないぞ?』
「ちゃんと、旅の間、水浴びしてる?」
『し、しているとも。』
「はい、ダウト。」
『うっ……。』
『俺も最近シルバーと一緒にいる事は多いが
水浴びしているところは、見た事ねえなあ。』
『うぬ……。』


 だよねえ。ルーカスの証言もあるし、尻尾が明らかに垂れたところを見ると、シルバーは、水浴びが苦手なタイプのフェンリルだと言えるだろう。今まで、水浴びしていたのは、地味に我慢していたのかもしれない。
 しかし、まあ、水浴びが苦手になったのは季節によるものも大きい。エルフの村はひんやりしているからな。
 あと、お湯を[絶対食堂領域]で作った湯しか、作れないから、冷たい水しか浴びさせてなかった飼い主の俺にも問題はある。
 後で、対策を考えよう。とりあえず……。


「シルバー。」
『う、うむ。』
「後で、お風呂、入ろうな。」
『う、うむ。分かった。』
「それでしたら、おすすめの場所があるのじゃ~。」
「お、本当ですか?」
「ちょうど、我らが普段瞑想する場所に、温泉が沸いている場所があるのじゃ。エドに案内させるのじゃ。」


 温泉!この世界にもあるんだ!
 入れてもらお!シルバーも喜びそう。


「エド、よろしく!」
「お、おう。」
「ついでに、エドに瞑想の仕方を習うと良いぞ。エルフの瞑想は気持ちが良いからのう。」
「本当ですか!そんなことまで、ありがとうございます!」
「お前……、そういうところ、実は結構分かりやすいタイプだな。」
「ふぉっふぉっふぉ。そういうところは、年相応でいいのう。」


 う……、指摘されると、地味に恥ずかしいな。実年齢を考えると……やめとこうか。


「わしは、その間、夜ご飯の準備をさせてもらおうかの。瞑想が終わったら、来ると良い。精一杯おもてなしさせていただくのじゃ。」
「わっ!何から何までありがとうございます!」


 温泉のあと、豪華なご飯かーー!
 飯!飯!飯!
 至れり、尽せりだな。楽しみだ!


「温泉より、ご飯派か。」
「そのようじゃの。」


 おい。
 当然のように心を読まないでください。



----------------------------------------
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺若葉
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・

y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える! てってれてーてってれてーてててててー! やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪ 一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ この小説の主人公は神崎 悠斗くん 前世では色々可哀想な人生を歩んでね… まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪ 前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる 久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく 色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー 友情、熱血、愛はあるかわかりません! ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

処理中です...