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3章⭐︎新しい家族から学ぶ帝王学編⭐︎

クソガキすぎた

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-side リアム-



 馬車の中には俺と従魔達、レオン、ヘンリーが座っている。
 今俺たちは、俺が治めることになった領地に向かっている最中だ。


 かかる時間は王都から片道2日くらいと言われている。だが、それは貴族が護衛と共に移動する時の時間だ。
 俺たちの場合、Sランク冒険者2人と最強従魔2匹がいて護衛がいらない。
 だから、1日半くらいで着くだろうとヘンリーは言っていた。
 今日の朝出発したので、明日の夜には着く計算である。


 俺の治める領地と言っても、大人になるまでは形だけで実際は父親であるヘンリーに全て任せっきりになりそうだが。


「ところで、これから向かう俺の領地はどのような場所なんですか?
 名前が“サンタウン”ということ以外は分からないんですが。」
「ああ。まあ……特にこれといった特徴もない田舎町だな。
 大体町の半分くらいの人たちが農業に従事していて、米や小麦、野菜や果物の生産が盛んだということぐらいか。」
「ふーん。」


 新鮮な野菜や果物が食べれるのは嬉しいな。
 この3ヶ月間使ってみて分かったのだが、俺が持つ[絶対食堂領域]にも弱点はあるからだ。


①良くも悪くも自分の想像通りにしか食材も家電も出ないため、自分が期待以上の食材や家電に出会えない。
②冷凍食品などの加工品は出てくるが、惣菜系や売られていない完成料理は出てこないという謎の制約がある。(前世の母の料理食べたかったと思った時にわかった。)
③神界など使えない場所は存在するらしい。(だからこの前、ロキに餌付けしようと思って出来なかった。無念。)


 などである。まあ、これらの弱点を持ってしても破格のスキルであることには変わりないのだが。


「あそこは確かに田舎町だがな、飯がとにかく美味しいと評判なんだ。
 農業従事者の内、殆どが料理上手な人たちだからな。陛下はお前が飯に目がないことは知っているから、そういう領地を送ってくれたのだろう。」
「おおー!それはありがたいね。」
「いいよなー。俺もそういう場所がよかったぜ。」
「いいではないか。レオン。魔物と沢山戦えるんだろ?俺としては羨ましい限りだ。」


 どうやら、Sランクなだけあって、ヘンリーも魔物と戦うことが好きらしい。


「そうですけどね。統治は大変ですよ。
 戦争で冒険者が手薄になってしまって、
 魔物の被害にあっているところばかりなので復興を指揮するのも大変なんですよ。」
 

 どうやら、レオン任されたところは戦争での2次被害地域らしい。
 現在、旧アインス王国の7割をドライ王国が、3割を旧アインス王国・フィーア王国連合軍が占領している状況だ。


 勇者召喚未遂以後、戦闘自体はほぼ行われていないが、次いつフィーア王国と戦争になるかまだわからないので、念のため大量の兵士と冒険者を国境沿いに置いているらしい。


 それもあって、手薄になってしまっていた魔物の地域が出ていたが、それを全てレオンが片付けたようだ。


「まあ。そこは、陛下からレオンへの試練だろう。これが出来たら出世させてやると言ったところか。
 今の所、王宮内でのお前の評判はいいみたいだけどな。」


 陛下はどうやら実務能力を測るために領地を与えているらしい。
 ただの報酬ではなかったようだ。
 

「ヘンリー様。目的地に到着いたしました。」
「あい。分かった。」


 そんなことを話していると、馬車に乗せてってくれた人たちが最初の宿泊地に着いたことを教えてくれた。
 俺、何気にこの世界に来てからちゃんとした宿に初めて止まるんだよな。
 少しワクワクしながら入ると、中は派手過ぎないが、かと言って明らかに高いとわかる、品のいい家具で埋め尽くされた空間が広がっていた。


「おおーー。」
「な、いいだろ?この宿。さすがは、元王族御用達といったところだな。」


 そういえば、俺の父親は元王族なのか。
 俺が思っているよりもずっといい宿なのだろう。その後実際に泊まってみて思った感想は“大満足”だ。


 飯はビュッフェスタイルでどれも美味しかったし、部屋の中はどこか日本を感じさせるような清潔感があった。
 特に水回り。歯ブラシが置いてあったり、トイレが魔道具で動くウォシュレットだったり、風呂と湯船がトイレと別れた部屋で日本式だったりだ。
 

 お陰で、この世界に来てから1番よく眠れた日だった。




 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢




 翌日、再び馬車に乗りながら外をぼーっと眺めた。
 既に周りはかなり田舎になっている。


『なあ主人。まだつかないのか?さっきから同じ光景ばっかで、流石に飽きてきたぞ。』
『ワシもだ。』
「(うーん。時間的にはもうそろそろなはずなんだけど……。周り、畑しかないね。
 さっきからスキルのせいかレシピが思い浮かびつづけてる。)」
『はあ……。大体これくらいだったら、俺の体に乗っていけば2、30分で着けたのによお。』
『そうだのお。ここはルーカスに任せるか。』
「(いや待て、任せるか?じゃねえだろ。
 おれは絶対嫌だからな。
 この前みたいなこと。しかも今回はヘンリー様やレオンもいる。)」
『そんなもの。脅せばいいだけだしのお。』
「(待て待て。養子になってから初日に従魔を使って父親脅す息子がどこにいるんだ。)」
『ふん。そもそも養子になる前に散々脅しまくってただろ。今更じゃねえか!』
「(ぐ……それはそれ、これはこれだろう。)」
『主人殿。』


 シルバーが俺の肩に前足を乗っけて笑顔で呟く。


「ん……?」
『……諦めろ。』
「(は?)」
『おい、ヘンリーとやら。“サンタウン”とやらはどこにある?』


 シルバーがいきなり姿を現しそういった。


「(え?ちょ……)」
「な、な、な……フェンリルか!?」
「あ、そういえばフェンリルが従魔になったの言うの忘れてたかも。」
「忘れてたかもってお前っ……!」
『それよりどこだ?』
「あ、ああ。ここからまっすぐ行くと、町が見えるから着くと思うぞ。」
『分かった。感謝する。』


 そういうや否や、シルバーは外で待機していたルーカスにおれを乗せた。


「(ま、待てって。)」
『大丈夫だ。問題ないぜ。』


 そう言って、領地の方へ飛び立った。


「問題ありまくりだろーーーー!」


 ルーカスに乗って2、3分後、町が見えてきた。おそらく、あそこがおれの領地。
 たしかに王都と比べると田舎ではあるが、活気がある町だ。若者も沢山いる。
 村人達は俺たちを歓迎する準備をしていたようで実際歓迎されただろう。


 もし俺がこんな派手な登場をしなければ。


「こ、こんにちはー!サンタウンの皆さん!
 今日から領主になるリアムと申します。
 よろしくお願いいたしまーっす!」


 動揺して、空からでも何かご挨拶を言わないといけないと思ってついやってしまったことだが、流石にクソガキすぎた。



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