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2章⭐︎それぞれの役割編⭐︎

リアムを学園に入れる理由

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-side ノア-



「お兄様。リアム様は本当に大丈夫なのでしょうか?」


 リアム達が死の山に行った後、ミラが不安そうに聞いてきた。
 そういえば、ミラはリアムの従魔が神竜だって知らないんだっけ。
 僕が教えるのも気がひけるし本当のことは言わないでおこう。


「リアムはああ見えてかなり強いから心配しなくても大丈夫だよ。
 レオン殿も一緒に着いてるし。」
「そうなのですね!流石リアム様です。」


 ミラは頬を染めて言う。
 リアムにだけ反応して、レオンに反応しないところを見ると、
 ははーん。そういうことか。
 これは……使えるね。


「ミラ、いいこと教えてあげようか?」
「いいこと?なんですの急に。」
「リアムの好みのタイプは聡明でお淑やかな貴族風な女性だよ。」
「……!!そ、そうなのですね。」


 これでよし。ミラは当分お淑やかになるために努力するだろう。
 悪いけど、ミラを貴族の淑女として一流にするために利用させてもらうよ。リアム。




 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢




 ミラとそんなことを話した後、自室に戻りいつものように書類仕事を行う。
 すると、ヘンリーが入ってきた。


「よお。ノア。」
「こんにちは。ヘンリー様。本日はどのようなご用件で?」
「お、おい。随分他人行儀じゃねえか。」


 そういう態度を僕にされてもおかしくはないことをした自覚をこの人はあるのだろうか。いや、なさそうだしガツンと言っておいた方がいいだろう。


「いや、あんたのせいで最近は殆ど眠れてなかったんだけど。どうしてくれんの?」
 

 つい感情的になって、口調まで乱れてしまったが仕方がない。


「お、おう。どうした、急にそんな口調で。
 そういえば、リアム殿には例の件のこと伝えたのか?」


 はあ。いっそ清々しい程にデリカシーというか考えなしだなこの人は。


「……い」
「ん?」
「だから、言えるわけないって言ってるだろうがこのアホジジイ!」


 いけない。いつぞやに、リアムに言われたことそのままやり返してしまった。
 しかも、王族にあるまじき暴言だ。


「お、お、おう。なんか、すまんな。」


 僕と違ってナイーブなヘンリーは、相手に言い返せずにただただ大ダメージを受けてしまったようだ。


「正直何度も何度も、どう伝えようか考えましたよ。ただね。言えるわけねえのわかんないの?普通に考えて。」
「ノ、ノア様?お言葉が乱れております。」
「あ、ご、ごめん。」


 いけない。側近に注意されてしまった。
 一旦冷静になってから話を続ける。


「出会って間もない人間で、そこまで信頼関係も出来上がってない。
 加えて、これから側近にしようとしている人間に、アンタみたいなクズ人間が周りにいることを伝える?
 アンタみたいな脳筋バカじゃないんだし、そんなことは無理だよ!」
「ぐはあっ……。」
「ノ、ノア様それ以上はおやめください。
 今度こそヘンリー様が死んでしまいます。」
「はっ。僕としたことがつい日頃思ってる本音が出てしまったようだ。
 ご、ごめんヘンリー様。」
「ぐ、ぐははあああ……。」
「え?な、何でダメージ受けてるの?」


 僕は僕で気が動転してしまって、この時ヘンリーの気持ちが考えられていなかった。
 純粋無垢な目を向けてしまう。


「ぐっ……。」


 バタン…。


「「ヘ、ヘンリー様ー!!」」


 そこからしばらく大騒ぎになった。




 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢




「全く、お前らときたら人騒がせな。この忙しい時に。」
「す、すみませんでした。父上。」


 それから、僕は父上に呼び出され事情聴取を受けさせられることになった。
 父上と2人きりで話すことは最近では殆どなかったし、この機会にリアムの事についても聞いておこう。


「心配せずとも良い。実務はお前の兄、バージルに任せている。
 ところで、側近から話は聞いた。ヘンリーに向かって暴言を吐いたとな。
 珍しいではないか。普段冷静なお前が。」
「いえ。その……父上はご存じだったのですか?ヘンリー様がリアムの父上ではないかということについて。
 そのことで、ついカッとなってしまって。心にもないことを言ってしまったのです。」


 本当は心にもありありの事を言っただけなのだが、それはまあ記憶にございませんということで。


「そうか……。うむ、流石は我が愛息子だな。もう突き止めていたか。」


 ……やはり知っていたか。


「たまたまです。ヘンリー様に気になっていたことを聞いたら、教えていただきました。」
「はー。それでこの事態か。
 お前はリアム殿を側近にしたいと言っていたから、その反応も頷けるな。
 正直俺も当時のあいつの行動に振り回された側だし、同情する気もないが。」


 ヘンリー様は過去に一体何をしたんだ。
 父上がこんなにいうなんて珍しいぞ。


「……そうなんですね。ところで、その反応だと知っていたんですね?なぜ、僕にも教えてくれなかったんですか?」


 すると父上は王の顔に変えた。
 その雰囲気で、教えてくれたってよくなかったか?という考え方は間違っていたのかもしれないと考え方を改めた。


「……。敵国の大貴族の令嬢との子だ。表沙汰になったら騒ぐやつが出るだろう。
 知っている人数は絞った方がいいと判断しただけだ。」
「でも、表沙汰になっても何とかできますよね?」
「そんなリスクは取れん。王としてはより安定択を取らねばならないと判断したのだ。」


 どうやら、思った以上に単純な理由だったらしい。少しがっかりだ。


「はあ。そうですか。では話を変えます。これからリアムをどうするおつもりですか?
 これから、その理屈だと、彼が目立てば目立つほど、この国は危うくなるということですよね。
 数少ない精霊術師で、狂犬レオンの弟子。世間に知りわたるのも時間の問題です。」
「うむ。その通りだな。はー。正直ここまで大事になるとは思っていなかったからな。かなり焦ったぞ。
 リアム殿の事に関しては、正直決めかねている。彼はまだ幼い。
 そのような状況でこの国が彼に行ったことを知ると、この国に対して恨みを持つ可能性がある。だからまずは学園に行っていいイメージを刷り込むことにした。」
「……!!だから、学園に行かせるのですね。少しでもこの国に対するイメージを良くするために。」
「ああ……。うまくいくかは分からんがな。彼が目立った時の対策も考えてある具体的には-------。」
「……!!それは、危険ではないですか?今のこの国の現状では。」
「ああ。だが、レオン殿と敵対するよりは大分ましだろう。」
「確かに……それは、そうですけど。」
「まあ、そういうわけだ。今日のところはとりあえず、そんな感じだ。
 お前も、リアムにヘンリーが父親であると言うのは学園卒業の時にでもすれば良い。
 焦らずとも。」
「そうか、そうですよね。」


 確かにその通りか。
 リアムに伝えるのは、気長に待とうか。


「ところで、父上。今現在のアインス王国はどうなっていますか?」
「ああ。それなんだがな。」


 父上はアインス王国の現状について話し始めた。



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