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2章⭐︎それぞれの役割編⭐︎
王女と魔法の訓練
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-side リアム-
翌日、今はミラと一緒に魔力制御の訓練をしている。
「ミラ。そこ違う。身体中に魔力を巡らせろ。」
「わ、分かりましたわ。えいっ」
どおおおおおおおん……!!
『(あちゃー。またか。)』
この世界の人間には魔力器官という臓器があり、食べ物を魔法エネルギーに変えて放出しているようだ。
放出するためには、エネルギーの放出加減を個々人に合わせて適度に調節しなければならないのだが、これが結構難しい。
持ってる魔力量や魔力器官の強さが違うため、他人が教えるのには限界があり、結局は自分1人で感覚を掴まないといけないからだ。
特に、魔力量が多いミラとかは大変だろうなと思う。
「ミラ。ちょっと休憩しない?」
昨日、堅苦しいから、お互い呼び捨てと敬語なしにしようということを決めた。
なんでも、ノアに対しては親しいから自分に対しても親しくして欲しかったらしい。
「あ、諦めませんわ。必ず…必ずやり遂げてみせます!」
「その域だミラ。頑張れ!」
「はい。うおおおおおー。」
おお……。熱血。暑苦しいねえ…。
暑苦しかったので、俺は俺で魔法の練習をする事にした。
というのも、実はもう昨日のうちに魔力制御は出来てしまっていたのだ。
どうせレオンのレッスンだと感覚派脳筋に偏るだろうなと思った俺は、
事前にノアに相談して、いろいろ教えてもらったり、魔法に関する本を借りたりしていたのだ。
一通り全部できるようになって、ようやく脳筋派のレオンのレッスンを受けている。
案の定、レオンは基礎練習をすっ飛ばして実践で慣れさせたいというタイプの先生だったので俺の事前の予習は正しかった。
「じゃあ、やるか。“ファイアーボール”」
ボォ……!
かなり小さいが火が出た。
「お、リアム。お前もう魔法を出せるようになったのか。流石俺の弟子だ。」
「ぐぬぬぬぬ……。流石リアム。」
2人がそれを見て褒めてきた。
「あはは……。」
この場で努力の賜物ですとは口が裂けても言えないから、笑って誤魔化す。
「だが、まだまだだ。魔法制御をしっかりできていないから、火の大きさが小さい。
こればかりはとにかく練習するしかないな。今日は魔力量ギリギリまでファイアーボールそ練習するといいぜ。」
「わ、わかった。」
どおおおん……。
後ろでは、また爆発音がした。
「やった。さっきよりも爆発音が小さくなりましたわ!」
「ああ。ミラもいい感じだな。
その調子で練習あるのみだ。
魔力量ギリギリまで頑張れ。」
「ええ。頑張りますわ。」
さっきから、“とにかく練習あるのみ”しかいってない脳筋系レッスンではあるが、
不思議とそれでも上達しているのだ。
やはり、レオンはすごい。化け物である。
「というか、休憩しないんかーい!」
「「『はっ。』」」
「忘れていましたわ。そういえば、お腹が空きました。
そろそろ、ご飯にでもしましょうか。」
「そうだな。俺も腹減ったな。」
『(俺もだ、俺も!)』
ルーカスも念話で伝えてくる。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
今日のご飯は、王城のシェフが用意してくれた弁当だ。パカッ……。中を開ける。
「おおー。」
そこにあったのは、サンドイッチや、おそらく高級であろう白身魚のソテー、オーク肉のテリーヌにこちらの世界の美味しそうな野菜をペースとしたプロが作った高級弁当そのものだった。
「うまそうだな。」
「ええ。」
そう言って、他のみんなが食べ始める。
この世界にはいただきますという言葉はないので、自由に食べ始めることができる。
だが、前世で染みついた習慣は抜けないもので、いつも心の中でいただきますと唱えてしまうのだ。
それはそれとして、俺もいざ実食。
パクリ……!
「んーー。美味しいですわ!」
「ああ。俺には勿体無いくらいだ。」
「俺にもだよ。正直言って子供のうちからこんないいもの日常的に食べていたら、だめになりそう。」
「ははっ。違いねえ。」
あまりに美味しすぎて、ミラがいるのを忘れてつい庶民的な本音が出た俺とレオン。
「え?私いつも食べていますけど特に変わりませんよ?」
それを聞いて、純粋に反論してくるミラ。
だめになりそうとか言ったことが本当に申し訳なくなってくる反応である。
「じょ……冗談だよ。冗談。」
「そ、そうそう。俺ら庶民の感想で、元々高貴な身分のミラには関係ないよ。」
「そうですか?」
「そうですそうです。」
「ふーん?」
身分のことを言って誤魔化そうとするのは、あまり良くないのかもしれないが、
ともかく、俺とレオンの必死に誤魔化しなんとかことなきをえたのだった。
多少トラブルはあったものの、美味しい昼ご飯を堪能した俺たちはそのまま特訓を再開した。
「ファイアーボール。ファイアーボール。ファイアーボール。はあはあはあ……。」
「おお。だいぶマシになってきたな。」
「はあ……、はあ。まあね。」
魔法を放つのにも体力はいる。
ファイアーボールを2、30発くらい放つと、
大体50m走を全力疾走したくらい体力が削られる。
「だが、まだまだだ。一旦休憩したらまた再開だな。」
「わ、わかった。(分かってはいたが、お、鬼だ。この師匠。)」
俺がファイアーボールを打ちまくっている横では、ミラも特訓していた。
「はあああ。」どおおおおん…。
「はあああ。」どおおん…。
「はあああ。」どーん。
最初のうちは大きかった爆発音も、魔力制御が上手くなるにつれ、だんだん音が小さくなってきたようだ。
魔力制御の上達進捗がどーんっていう音で分かるって斬新だな。
「まだまだ。諦めませんわ。」
頑張るミラ。そしてついに……。
「はあああ。」しーん。
ミラも魔力制御に成功したのだった。
しーん……。
「「お、おおおーーー!!」」
爆発音がなかったため、一瞬シラけた雰囲気になってしまったが成功に喜ぶ。
「やりましたわ!」
ジャンプしながら、満面の笑みをこちらに向けるミラ。
幼さい見た目だが、思わずドキッとしてしまうほどの笑みだ。
「やったな!」
「うん。おめでとうミラ。」
それを見て、思わず俺も笑顔になる。
「……!え、ええ。」
褒められたのが嬉しかったのか、顔を赤くして俯きながらそう言うミラ。
「よかったな。」
そんな幼い反応を見せた彼女が愛らしくて、思わず頭を撫でてしまった俺であった。
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翌日、今はミラと一緒に魔力制御の訓練をしている。
「ミラ。そこ違う。身体中に魔力を巡らせろ。」
「わ、分かりましたわ。えいっ」
どおおおおおおおん……!!
『(あちゃー。またか。)』
この世界の人間には魔力器官という臓器があり、食べ物を魔法エネルギーに変えて放出しているようだ。
放出するためには、エネルギーの放出加減を個々人に合わせて適度に調節しなければならないのだが、これが結構難しい。
持ってる魔力量や魔力器官の強さが違うため、他人が教えるのには限界があり、結局は自分1人で感覚を掴まないといけないからだ。
特に、魔力量が多いミラとかは大変だろうなと思う。
「ミラ。ちょっと休憩しない?」
昨日、堅苦しいから、お互い呼び捨てと敬語なしにしようということを決めた。
なんでも、ノアに対しては親しいから自分に対しても親しくして欲しかったらしい。
「あ、諦めませんわ。必ず…必ずやり遂げてみせます!」
「その域だミラ。頑張れ!」
「はい。うおおおおおー。」
おお……。熱血。暑苦しいねえ…。
暑苦しかったので、俺は俺で魔法の練習をする事にした。
というのも、実はもう昨日のうちに魔力制御は出来てしまっていたのだ。
どうせレオンのレッスンだと感覚派脳筋に偏るだろうなと思った俺は、
事前にノアに相談して、いろいろ教えてもらったり、魔法に関する本を借りたりしていたのだ。
一通り全部できるようになって、ようやく脳筋派のレオンのレッスンを受けている。
案の定、レオンは基礎練習をすっ飛ばして実践で慣れさせたいというタイプの先生だったので俺の事前の予習は正しかった。
「じゃあ、やるか。“ファイアーボール”」
ボォ……!
かなり小さいが火が出た。
「お、リアム。お前もう魔法を出せるようになったのか。流石俺の弟子だ。」
「ぐぬぬぬぬ……。流石リアム。」
2人がそれを見て褒めてきた。
「あはは……。」
この場で努力の賜物ですとは口が裂けても言えないから、笑って誤魔化す。
「だが、まだまだだ。魔法制御をしっかりできていないから、火の大きさが小さい。
こればかりはとにかく練習するしかないな。今日は魔力量ギリギリまでファイアーボールそ練習するといいぜ。」
「わ、わかった。」
どおおおん……。
後ろでは、また爆発音がした。
「やった。さっきよりも爆発音が小さくなりましたわ!」
「ああ。ミラもいい感じだな。
その調子で練習あるのみだ。
魔力量ギリギリまで頑張れ。」
「ええ。頑張りますわ。」
さっきから、“とにかく練習あるのみ”しかいってない脳筋系レッスンではあるが、
不思議とそれでも上達しているのだ。
やはり、レオンはすごい。化け物である。
「というか、休憩しないんかーい!」
「「『はっ。』」」
「忘れていましたわ。そういえば、お腹が空きました。
そろそろ、ご飯にでもしましょうか。」
「そうだな。俺も腹減ったな。」
『(俺もだ、俺も!)』
ルーカスも念話で伝えてくる。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
今日のご飯は、王城のシェフが用意してくれた弁当だ。パカッ……。中を開ける。
「おおー。」
そこにあったのは、サンドイッチや、おそらく高級であろう白身魚のソテー、オーク肉のテリーヌにこちらの世界の美味しそうな野菜をペースとしたプロが作った高級弁当そのものだった。
「うまそうだな。」
「ええ。」
そう言って、他のみんなが食べ始める。
この世界にはいただきますという言葉はないので、自由に食べ始めることができる。
だが、前世で染みついた習慣は抜けないもので、いつも心の中でいただきますと唱えてしまうのだ。
それはそれとして、俺もいざ実食。
パクリ……!
「んーー。美味しいですわ!」
「ああ。俺には勿体無いくらいだ。」
「俺にもだよ。正直言って子供のうちからこんないいもの日常的に食べていたら、だめになりそう。」
「ははっ。違いねえ。」
あまりに美味しすぎて、ミラがいるのを忘れてつい庶民的な本音が出た俺とレオン。
「え?私いつも食べていますけど特に変わりませんよ?」
それを聞いて、純粋に反論してくるミラ。
だめになりそうとか言ったことが本当に申し訳なくなってくる反応である。
「じょ……冗談だよ。冗談。」
「そ、そうそう。俺ら庶民の感想で、元々高貴な身分のミラには関係ないよ。」
「そうですか?」
「そうですそうです。」
「ふーん?」
身分のことを言って誤魔化そうとするのは、あまり良くないのかもしれないが、
ともかく、俺とレオンの必死に誤魔化しなんとかことなきをえたのだった。
多少トラブルはあったものの、美味しい昼ご飯を堪能した俺たちはそのまま特訓を再開した。
「ファイアーボール。ファイアーボール。ファイアーボール。はあはあはあ……。」
「おお。だいぶマシになってきたな。」
「はあ……、はあ。まあね。」
魔法を放つのにも体力はいる。
ファイアーボールを2、30発くらい放つと、
大体50m走を全力疾走したくらい体力が削られる。
「だが、まだまだだ。一旦休憩したらまた再開だな。」
「わ、わかった。(分かってはいたが、お、鬼だ。この師匠。)」
俺がファイアーボールを打ちまくっている横では、ミラも特訓していた。
「はあああ。」どおおおおん…。
「はあああ。」どおおん…。
「はあああ。」どーん。
最初のうちは大きかった爆発音も、魔力制御が上手くなるにつれ、だんだん音が小さくなってきたようだ。
魔力制御の上達進捗がどーんっていう音で分かるって斬新だな。
「まだまだ。諦めませんわ。」
頑張るミラ。そしてついに……。
「はあああ。」しーん。
ミラも魔力制御に成功したのだった。
しーん……。
「「お、おおおーーー!!」」
爆発音がなかったため、一瞬シラけた雰囲気になってしまったが成功に喜ぶ。
「やりましたわ!」
ジャンプしながら、満面の笑みをこちらに向けるミラ。
幼さい見た目だが、思わずドキッとしてしまうほどの笑みだ。
「やったな!」
「うん。おめでとうミラ。」
それを見て、思わず俺も笑顔になる。
「……!え、ええ。」
褒められたのが嬉しかったのか、顔を赤くして俯きながらそう言うミラ。
「よかったな。」
そんな幼い反応を見せた彼女が愛らしくて、思わず頭を撫でてしまった俺であった。
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