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2章⭐︎それぞれの役割編⭐︎

王宮にて

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-side リアム-



 王宮までの距離は、ドライ王国で俺たちがいたエッジ町から3日くらいだ。
 アインス王国脱出の時とは違い、道が綺麗に舗装されていたから快適な旅だった。


「いらっしゃい。リアム。レオンさん。」
「おう」「お、お出迎えありがとうございます。」


 王宮に着くと、人払いしてくれた応接室で、ノアが豪華な衣装で出迎えてくれる。
 一緒にいる豪華な衣装を纏った、30代くらいの黒髪黒目のダンディなおじさんは誰だろうか?
 気になり、恐る恐るそちらの方向をみる。


「ぶはっ。確かにノアが言った通りいい子そうだ。」
「でしょ。あ、2人に紹介するね。
 この人はヘンリー=ルイス公爵。
 僕の叔父にあたり、Sランク冒険者だ。
 今回の戦争で指揮をとる人だよ。」
「お、あんたがヘンリー公爵か。
 噂は聞いているぜ。
 この国最強の冒険者だとな。」
「こちらこそ。レオン君が史上最年少Sランク冒険者ということは耳に入っている。
 リアム君もよろしくな。」
「よ、よろしくお願いいたします。」
「あはは。リアム。そんなかしこまらなくて大丈夫だよ。
 この場に他の人はいないから敬語とかもいらないし。」
「う……うん。(みんなのオーラが凄すぎて、自然と敬語になったんだよね。)」
『それについては同意する。ここは俺にも眩しすぎる。』


 それから、しばらくレオンがノアとヘンリー公爵と一緒に談笑していた。


「(リアム。だからと言って俺だけにこの2人を相手させるのも、どうかと思うぜ。)」
「(まあ、ほら。レオンは俺の師匠だから、師匠が弟子のために犠牲になるのは当然ということで。)」
『そうだな。俺もリアムが犠牲になる必要はねえと思う。』
「(え、もしかしなくても四面楚歌かよ?)」


 珍しく静かにしているルーカスも同意見のようだ。あちこち、飛び回っている。


「おや、ふっ。確かにこれは化け物だな。
 リアム君がとんでもないと言った噂は本当だったのか。」


 すると、見えていないのに的確にルーカスを目で追い観察するヘンリー公爵。


「……!見えているのですか?」


 今の言い方、オカルトの言い方になってしまった。いや、実際そうなんだけど。


「いやいや、流石にそこまでは。
 ただ、これだけ強大な力を持っている魔物など今までほとんど、会ったことないからな。
 どこにいるのかくらいはわかる。」
「(他に誰もいないし、姿を見せても大丈夫そうだね。)」
「(ああ。隠してても意味なさそうだしな。)」
『お、いいのか?』


 ポンッ……!


『よお。ヘンリー。これから、リアムがお世話になる。』
「ちょっ。こら、いきなり呼び捨てはだめだろ。」
「ははっ。別に構わない。
 それよりも、凄まじいな。昔会ったエンシェントドラゴンと同等くらいの圧力だ。」
「……!!エンシェントドラゴン。伝説上の魔物ですね。」
『おいおい。確かにエンシェントドラゴンは強いが俺の方が強いぞ。なんせ、俺は神竜だからな!比べるまでもねえ。』
「本当……だろうな。こちらの味方になってくれたら、凄まじい戦力だ。」
「それについては、もう決まっているみたいですよ。」
「ああ。ノアの言った意見が本当ならな。俺は悪くないと思ったぜ。」
「父上には書面で許可は取ってある。後で会う時に確認するだけだよ。」


 流石ノア。10歳にして、大人顔負けの実務能力だ。



「あ、ありがとう。それとこれ。クッキー焼いてきたんだ。よかったら。」
「……!!本当か。リアムの作った飯は美味しいからな。」


 今回作ったのは、プレーンクッキーだ。
 プレーン(plain=簡単な)と言う意味だから、ただのクッキーをお洒落な言い方で言っているだけである。
 バター、グラニュー糖、塩、卵黄、薄力粉を粉っぽさがなくなるまで混ぜて、ラップで包み一旦冷蔵庫で冷やす。
 その後クッキーの形にし、オーブンで焼いたら完成だ。


 サクサクサク……。


 みんながその場で食べる。
 事前にルーカスにも美味しいと言ってもらえてはいたが、緊張する。


「……!!美味しい!こんな美味しいクッキー初めてだよ。」
「確かに。これは美味しいな。」
「うまっ。」


 ホッ。どうやら好評のようだ。
 スキルを得た後でも、自分の作った料理を他人に食べてもらうのは、緊張する。
 前世でも作ったご飯が、不味いとは言われたことはないけど、美味しくないという反応は見ただけで分かるしな。
 だから、今回みんなが、本気で喜んでくれているようでよかった。


「ありがとう。」


 ギーー、ガチャ…。


 その時、ドアが開いた。場に緊張が走る。
 ルーカスは透明になった。




 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢




「ここですわね。美味しそうな香りがするところは。」


 見ると、金髪青眼の美少女がいた。
 それはもう、思わず見惚れてしまう程の。
 年齢は俺と同い年で、5歳くらいだろうか?


「なんだ。ミラか。誰かと思って、驚いたよ。一応人払いしてたから。」
「お、お兄様。それに、ヘンリー叔父様まで。えっと、そちらのお二方は?」


 どうやら、ノアの妹みたいだ。
 言われてみれば、似ている。


「はじめまして。レオンと申します。以後お見知り置きを。」
「(……!レオンって、そんな丁寧な挨拶もできるんだ。)」
『なんつーか。似合ってねえな。』
「(わかる。イメージ崩れるよね)」
「(聞こえてるわ、お前ら。
 ほら、リアムもさっさと挨拶しろ。)」
「はじめまして。ミラ様。リアムと申します。
 よろしくお願いいたします。」


 軽くお辞儀をして笑顔を作る。


 ジーーーーー。


 すると、ミラはしばらく俺の方を見てきた。……っと言うより、ぼーっとしているのに近いだろうか。
 頬も赤い。大丈夫だろうか?この子。


「こら、ミラ。お客様にご挨拶。」
「あ、そ、そうでしたわ。私はミラと申します。ノア兄様の妹でこの国の第一王女です。
 よろしくお願いいたしますわ。」


 ミラは優雅にお辞儀をする。


「「よろしくお願いいたします。」」
「あの……ところで、美味しそうな甘い香りがしたのですが。」
「ああ。それはリアムが作ってくれたクッキーだよ。1枚いる?」


 そう言って、ノアはクッキーを差し出す。


「あ、ありがとうございます。」


 俺とノアにお礼を言ってから、ミラはクッキーを食べる。
 クッキーを食べる所作も優雅だ。


「……!!美味しいですわ。」


 ミラは満面の笑みを浮かべた。


「もしよければ、余っているクッキーもありますが、いかがですか?」
「まあ、いいんですの?お願いしますわ。」
「こら、ミラ。お礼。はしたないぞ。」


 ノアが兄の顔をしている。少し新鮮だ。


「あ、そうでした。心より感謝申し上げますわ。リアム様。」
「あ、う、うん。(正直餌付目的だからね。貴族のご令嬢は甘いものに目がないって話だし、媚び売っといて損はない。)」
「(お前……幼気な少女の気持ちを弄ぶなんて。サイテーだな。)」
『人の心がないよな。こんな可愛い子目の前にして、そんなこと思えるとか。もしかして、真の化け物はこいつかもな。』
「(それな。悪魔よりも悪魔だとおもうぜ。)」
「(おいこら。言いたい方がいいやがって。この化け物ども。)」


 何はともあれ、こういう形でノアとの再会を無事果たしたのだった。
 明日には、国王との謁見らしい。
 無事終わると良いなあ。



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[2018年女の子の名前ランキング]
 14位 ミラ(意味: 親愛なる、愛しい、可愛い、贈り物)←ヒロイン
[他]
 レオン(Leon)は、男の子の名前ランキングに入っていませんが、同意義のレオ(Leo)が50位にランクイン。
 (意味:ライオン)←師匠、兄貴。

[キャライメージ]
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