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2章⭐︎それぞれの役割編⭐︎

弱みゲット〜

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-side リアム-



「それでは、ドライ王国に無事到着出来たことを祝して乾杯!」
「「「「「乾杯」」」」」


 ホームパーティ。日本ではあまり馴染みのない行事であるが、どうやらこちらの世界では日常的に行っている行事らしい。


 持ち寄りパーティを家で行うといえば分かりやすいだろうか?
 本来はパーティ会場を借りなければできないが、この世界では1軒1軒の家が広いからできるのだ。


 最初、ラルとアレクの2人で用意しているのかと思いきや、他の人たちも各々外に出て買い出しに行ったり、リビングを掃除して配置を変更したりと色々準備していたようだ。


 俺がきた時にはほとんど準備が終わっていて、後悔していた時、


「皆様、リアム様に恩返しをしたくて、準備しているのですよ。」
「お前がいなければ、今頃逃げ遅れていた可能性もあるからな。
 道中飯も大量に食わせてもらったし、俺らなりの恩返しだ。受け取れ。」


 とアレクとリサに言われた。
 どうやら、今回のパーティの主役は俺だったらしい。
 最初の挨拶も俺が行った。上手くできただろうか?


 出てきた料理の品々はなかなかのものだった。この世界の食べ物は家庭料理でもオシャレな食べ物が多いらしい。


 こう言っては失礼だが、むさ苦しい印象のアレクが作ったとは思えない、
 彩り豊かのアボカドやトマト、キヌアが入ったサラダや、パルメジャーノ・レッジャーノの味に似たミノタウロスのチーズとトリュフがまぶしてあるパスタなどが出てきた。


 一般人が食べれるような品々ではない食べ物が「アレクが作ったものです」と出された時には、俺のことを騙しているのかと思った程である。


 思わず「嘘だあ!」と指差して言ったら、「嘘ついてどうするんだよ。おじさん、泣くぞ。」と謎の脅しをかけられたので、流石に絶対に見たくないと手を引いた。


 たしかに周りを見てみても、これくらい作れて当然と言う感じで、みんな当然のように受け入れているし本当なのだろう。


 日本の感覚からすると、まだまだ料理が上手な男性というのはプロの料理人を除くとメジャーではない。
 だから、おっさん男性はオシャレな料理を作ることはできないと勝手に偏見を持って物事を見てしまっていたのかもしれない。


 転生をして、前世とは全く違う文化的価値観に触れ、いかに自分が偏見というものに囚われて生きているかということを実感した一場面であった。


 もちろん、ラルの料理は本職なだけあって流石というべき腕前だった。
 何がプロだなと思うかというと、まずこの短時間で作ったとは思えない程の品数だ。
 加えて見栄えの良さ、味付けの絶妙さ。具材の切り方一つとっても綺麗さが全然違う。


 スキルのおかげで、俺も前世に比べたら大分綺麗な野菜の切り方ができるようになったと思うが、元々才能がある人の切り方を見るとまだまだであると実感させられた。


 俺の作った酢豚も大変好評だった。
 自分で作った料理が一瞬でなくなるのを見るのは、最近の密かな楽しみになっている。



 その後、酢豚のお礼にと、たらふくみんなに料理を食べさせられた。
 そして、冒険者たちが酔っ払ったのを見計らって世話係組にそれとなく逃された。


 主にレオンの口調が、最初の方は、「食いな、食いな」だったのが、最後の方は、「大丈夫。俺たち悪い人たちじゃないでちゅからねー」に変化したのを見計らってである。


 隠れてコソコソパーティ飯を食べていたルーカスと一緒に部屋へ戻り、酢豚セカンドラウンドを開始した。


 作っている最中、


「さっきの、レオンの姿。スマホがあったら、絶対録画していた。この世界に映像保存用の魔道具はないの?レオンの弱みを握りまくれると思うけど。」
『お前……前から思っていたけど中々に面白……、いや腹黒いこと考えるよな。』
「またまたー。ルーカスも大概いい性格してるだろ?面白そうだなという本音がダダ漏れだよ。」
『うぐ……。実は俺もさっきの様子を記憶保存魔法で記録していたからなんも言えねえ。』


 とルーカスの、悪魔の魔法が発覚し、その後、夜中のテンションで寝るまでレオンの恥ずかし映像大会をやっていたのは俺とルーカスだけの秘密である。




 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢




 その翌日。昨日夜中遅くまで起きていたこともあり、まだ眠かったが、無理矢理体を起こす。隣では、ルーカスもまだ眠っている。
 寝ぼけたままリビングに行くと、レオンが起きていた。


「おはよう」
「おう、リアムか。おはよう。」


 朝起きて、親しい者が笑顔で挨拶してくれるのはいいものである。この際、昨日のことは勝手に一人で水に流そう。


「それで……その人たちは。」
「ああ。こいつらは、二日酔いだな。」


 どうやら、他の人たちは世話係も含めて全員が二日酔いらしい。
 この調子だと、今日はみんなでお昼寝コースのようだ。


 暇になってしまうのも、なんだかなと思い、俺はこの国で出来る仕事探しをすることにした。
 なんやかんや、アインス王国では仕事を探せなかったからな。
 気を取り直してリベンジである。


 手始めに、レオンに声をかけてみる。
 するとレオンにまた、「弟子になれ。」と言われた。


 そういえば、昨日の映像に、“Sランクの冒険者の弟子になるのがいかに凄いかを語る酔っ払ったレオン様の映像”があったな。
 後で見返そう。水に流すのはやっぱなしということで。


 確かSランクの弟子は、上級貴族にも匹敵するくらい大きな後ろ盾を得ることになるみたいなことを言っていた筈だ。
 もっとも、それをコミカルに自慢していて、周りから突っ込みまくられていたのが面白すぎたのだが。


 一人で昨日のことを思い出し、黙っていたのを、返答を渋っていると勘違いされたのか、「まあ、とりあえず冒険者ギルドに行ってみようぜ。」とレオンに言われたので、暇だったし散歩がてら、それもありかと思い、ルーカスを起こしてついていくことにした。


 ギルドの中に入る。


 ザワザワ…。


(おい、あれ。確か、“狂犬”レオンさんだよな。なんでこんなところに。)
(知らねえのかよ。昨日アインス王国から来てしばらく、ドライ王国を拠点にするって噂になっていたぞ。)
(おお。本当か。それなら、しばらく困っていた森の地竜の問題とかも片付くかもな。ありがたい。)


 さっきから、すごい視線だ。
 比べては失礼だけど、この前アレクと一緒にいた時は大違いである。
 Sランク冒険者とはどれくらい強いのか俺には想像もつかないが、今の反応を見るに別格という感じなのだろう。


 すると、前方から慌てた様子でお偉いさんっぽい仕事が出来そうな美人が走ってきた。


「こんにちは。レオン様。本日はどのようなご用件でございますか?」
「ああ。ここにいるリアムを弟子に勧誘していてな。手始めに冒険者ギルドに連れてきたんだ。」


 ザワッ…!


 その瞬間、聞き耳を立てていた冒険者が騒ぎ出した。--やられた。
 レオンは俺を弟子にすることを広めて断りづらくすることが狙いだったようである。




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