wor stand→R(ｳｫ-ｽﾀﾝﾄﾞﾘﾀ-ﾝ)

1

安堵。

｢うぉおｯ!!｣
還也が相手の懐へ飛び込む、ただそこで異変が起きた、相手が右手を開いたまま前に突き出し、そこに左手を添えたのだ。いや、それ自体は何も不思議ではない問題は次の行動だ。
右手から衝撃が噴出した
いや、正確にはとてつもなく大きな音が掌から噴出した、と言った方がいいだろうか。
だが還也は吹き飛ばされない、傷すら負わない。どうやら吸収できる箇所に制限はないらしい
｢はっ!!効かねぇよそんなもん!!!!｣
そのままの勢いで懐へ飛び込む。
拳を強く握り締める、右腕を引く、腰を回し、全力で相手の顔面に叩き込む。
殴ろうとした、と言うことは吸収を部分部分で切ることも出来るらしい。
しかし左手で止められた。
だが何かおかしい
左手が動かない、振動すらしない、そう、まるで衝撃を吸収したかのように。
｢吸収!?｣
｢だから言ったろう!?『同じ能力かも』って!!!!だけど違うみたいだなぁ？俺は左手って限定されてるけどお前は無いみたいだしぃ？｣
｢ヒントをどうもありがとうｯ!!脇腹がガラ空きだぜ!?｣
と言いつつ脇腹に蹴りをかます。
馬鹿なのかもしれない。
｢がは……ｯ!!畜生ぉｯ!!ならお前もヒントいえぇっ!!!!｣
｢馬鹿じゃないのか!?次顔面っ!!!!｣
馬鹿だった。
殴り、殴り、殴る。
｢絶対!!俺が負けることはねぇｯ!!!!!｣
そう、絶対に還也は負けない、負けるはずはない。
気合とか気持ちではない。確定事項なのだ。
では理由を説明しよう。
還也の能力は、｢自分に当たったエネルギーを好きなものに変換し、溜めることが出来る｣だ、学校では還也をフィルターとして後ろへ流すことも出来ると言っていたが。
対して相手の能力は、見る限り｢左手で吸収、右手で放出｣だ。
つまり、還也は傷を負わない。ただし相手は、吸収出来るのは左手だけと限定されている。
単なる消耗戦なのだ。
還也はただただ殴っているだけでいい。
それだけで相手に当たる。相手の攻撃は効かない。
一方的。
消耗戦。
完全試合。
負けることはない。
今も還也の拳が相手の顔を、腹を貫いている。
｢もうそろそろ限界だろｯ!!動き鈍くなってんぞ!?!!!?｣
｢ち…くしょう……ぉおおｯ!!｣
｢無駄無駄ｯ!!普通のパンチなんてきかねぇよｯ!!｣
最後の力を振り絞った相手がよろける。
終わりが近づく。
終わらせる。
｢とどめだ。一生こんなことすんじゃねぇよ糞野郎ｯ!!!!!!｣
鋭く突き刺さる。
還也の固く握った拳が、相手の顔面へ……
どグチゃァｯ!!
肉を叩く音がぐちゃぐちゃの路上で響いた。

───────────────
｢終わったか……｣
無傷で佇む還也と。
｢………………………‥｣
路上で倒れた相手。
戦いと言うには余りにも相性が悪い戦いが終わった。
緊張感がまるでなく、相手が可哀想になってくるほど、あっけない戦いが……
還也がこっちに歩いてくる。
解らないように隠した笑みを浮かべながら。
吸収を切っているのか、地面を踏み締めつつ。
だが、
｢危ねぇｯ!!!!!!!!!!｣
翼は思わず羽の先だけを鉄に変え、翼を思い切り振った。
先だけに重量が集中した羽が翼から取れ、還也に向けて高速で射出される。
｢うわぁｯ!!なにすん……｣
ごっ……
言いかけたところで還也の後ろから鈍い音が響いた。
還也が後ろを振り向くと翼の羽をうけた相手が倒れていた。
｢あっぶねぇ……ありがとうな…ってか!!!!!お前傷大丈夫なのかよ!?そんなに大きく羽動かしてもいいのか!?｣
翼は不敵な笑みを浮かべ。
｢ふっ……還也、思い出せ。俺の能力はメタモルフォーゼだ。それを応用すると……｣
｢まさかｯ!!｣
｢その通りｯ!!!!｣
｢ｯ!!てめぇ!!!!｣
｢傷を治せるんだよｯ!!馬鹿めｯ!!ははははは!!!!お役目ご苦労！！ヒーローさん♪Www｣
｢ふっざけんなぁぁあｯ!!!!!!!!!!!!!!｣