プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
795 / 823
16章 ゴールデン・ロード

第795話 瘴気談義②手に負えないもの

しおりを挟む
 ウチのブレーンたちは、わたしとナムルの話し合いの映像を何度も見た。見すぎて摩耗してしまうんじゃないかと思うぐらい。いや、実際は擦って何かを見ているわけじゃないので摩耗はしないと思うんだけど。

 いち抜けして、お茶を飲んで、うとうととして起きたところでやっと検証が始まったので、ほっとした。

 みんなナムルの言った

「いいえ。私はユオブリアに興味があるので、悪意なんかありませんよ。ああ、誤解されていたのですね。私はユオブリアに何かしようとは思いませんよ。ユオブリアに欲しいものがあるのでね」

 という台詞は、ナムルの本心だろうと結論づけた。

 2年前、セインが仕掛けてきたやり方は、いい手ではなかった。自分たちの発案だとバレないように、ワーウィッツを脅して矢面に立たせ、女王をたて聖域を作ろうとした。けれどワーウィッツもやらされているだけで、中の人たちはやっていることがよくわかっていなかったし、ワーウィッツの王女がセイン王族にひどい婚約破棄をされたと認識されただけだった。
 そして今回のミッナイト殿下も失礼だけど策略に長けている方には思えない。

 けれど、今回は割とハラハラした。何か仕掛けられていると認識できたのが直前、水面下でやってきたということだ、あのセインが。
 ということは、つまりセイン国はこの2年の間に強力なブレーンができた……。

 セインの目的は、ユオブリアを落とすことだと思っている。
 もうさ、そこが意味不明なんだけど。
 だって同じ大陸の隣の国だというなら、たとえば目障りという身勝手な理由だとしても、近くにいると目についてしまうし、触れ合うっていうか目に付く機会が多いから、そういう心の動きはわかる。
 でも実際は大陸違いで海を隔てているし、ユオブリアはセインの4倍以上は大きな国だ。土地の広さが強さに比例するわけではないけれど、人口も多いわけだし、何よりも4倍以上の領地を束ねる力を持っているのがユオブリアの王なわけで……。しかもツワイシプは元々魔力の多い人が生まれやすい。
 そこに敵意を持ってくるのが、本当なんで?って感じなんだけど。
 落とそうとしているのは2年前明確になった。2年前はエレイブ大陸に聖域を作りさえすれば、ユオブリアに勝てると思っていたのではないかと思う。でもそれは自国に監査を引き込む結果となった。それによってまた、ユオブリアに怒りを昂らせているのかしら?

 今度は両加護のあるわたしをユオブリアから排除するために、いろいろやっていたようだ。
 それが兄さまの逆鱗に触れ、個人的な経済制裁という形で芽吹いた。
 それに気づいた人たちが、同じようにセインから手を切ったーー。
 セインの第3王子、ミッナイト殿下が、それを抗議するために勅使としてユオブリアに。
 話したことでわたしをユオブリアから遠ざけようとしているのも、この時にはっきりとした。
 ミッナイト殿下は、婚姻を結ぶことでわたしをユオブリアから遠ざけようとしたし、いずれ義父になるはずだったドナイ候を使い、わたしの兄であるアラ兄をユオブリアから追放して、わたしもユオブリアから出ていくように企てていた。
 前もって気づかなかったら。対策を立てられずに、追放とまではいかなくても、貴族子息がとんだ傷跡を残したかもしれなかった。

 まさかわたしを国から出すために身近な誰かを追放させるなんて、そんな暴挙をとるとは思っていなかったけれど、でもブレーンたちによると、これは全然計画だという。実際アラ兄が追放されるような証拠が出ていないからだ。
 だからブレーンたちは、もっと強い手を持っていて、勅使がどんなことを仕掛けてくるかと構えていたのだけれど、肩透かしをくう。
 狙いは確かだが、手を抜いているように見えた。それゆえに、ブレーンの狙いがだったのだろうと結論づいた。
 わたしを追放させる気だぞーとアピールしていたにすぎないというのだ。
 アピールですとー?
 本気ではなかった??
 本気ではないということは……、ブレーンの本気ではなかったから。
 そしてその回答はユオブリアに悪意はなく、欲しいものがあるからだ。
 それは本当のように聞こえた。
 それこそがブレーンの目的。ユオブリアには欲しいものがあるから。
 そう思えた。



「さて。じゃあ、君たちの思う、私の欲しているものはなんだと思ってる?」

 ナムルは舐め腐った顔だ。

「ユオブリアの地下に、やっとのことで封じ込めている〝瘴気〟」

 わたしが言うと、大袈裟に肩をすくめる。

「ヒントは出したとはいえ、よくわかりましたね。では、くださるんですか?」

「あなたが条件をクリアすればね」

 ナムルは驚いたようだった。
 そこでただ反対にあうと思っていたのだろう。

「セインのことを伝え、それがあなたたちの利益になるなら、ということですか?」

 ナムルは、的外れな条件を予測した。

「いいえ。封じられている瘴気はとてつもなく大きいもの。世界の7分の6を失わせるぐらいです」

「大袈裟な」

 ナムルは難癖つけられたというように顔を顰めている。

「あなたがその瘴気をどうにかできるなら、どうにかして欲しい」

 フォンからロサの声がする。

「ユオブリアの策士と王子がそろって、そんな確証もないことを信じろというのか?」

「聖女の未来視だ」

 ロサが告げた。
 アイリス嬢から話してもいいとオッケーを取り付けているのだろう。

「は?」

「ユオブリアの地下に閉じ込めている瘴気は、本当に世界を壊すぐらいの力あるものなんだ。お前は世界を壊すことが望みか?」

 一瞬の間があった。
 でもナムルは左右に首を振る。

「どうやってそれを信じろと?」
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

処理中です...