プラス的 異世界の過ごし方

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16章 ゴールデン・ロード

第793話 敵影⑦魔石の謎

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 家に向かえば、ミニーが飛び出してきた。
 走ってきたミニーを受け止めるも、ミニーの方がだいぶ大きいので後ろに倒れそうになる。ロビ兄がそんなわたしたちふたりを受け止めてくれた。

「あ、ごめん、お嬢さま! ロビンさま、ありがとうございます」

 そう言ってから、わたしの首にしっかり手を回し、ギュッと抱きついてくる。

「ごめんね、怖い思いをさせて」

 ミニーはわたしの友達ということで、今までに2回、人質にされそうになったことがある。2回とも未遂で済んでいるけれど。

「うーうん、また助けてもらった。リディアだって怖いのに、ごめんね、ありがとう」

 中からアプリコットも走ってきて、わたしに抱きついてくる。

「お嬢さま、無事でよかった。さっきはごめんなさい。お礼も言わなかった」

 アプリコットを抱きしめる。

「うーうん、ごめんね、怖い思いをさせて。悪い奴は捕らえたわ。もう大丈夫だからね」

 ひっ捕らえられた人たち、自警団と共に町に行くことにした。
 証拠の映像だけは、わたしのブローチが録画したものだ。
 証拠は、どうやってその映像が撮れたかということも筋が通ってないとなので、秘匿しているハウスさんがやりました!では話が通らない。
 だから市販の魔具でちゃんと録画した。

 少し大きくなったもふさまにわたしたちは乗りこむ。
 町に行けば、ビリーが待ち構えていて、ミニーとアプリコットを抱きしめる。
 ビリーはわたしにも大丈夫か?と声をかけた。
 わたしは大丈夫だと答えた。

 父さまに抱きしめられる。

「喉は大丈夫か?」

 聞いていただけで映像は見えてないはずなのに、ロビ兄もだし、すぐわかるんだから。

「大丈夫。あの時、ヴェルナーを攻撃したのはナムルなの」

 そう伝えれば、わたしを離して、父さまは眉根を寄せる。

「たとえ、そうだとしても、まだ何を考えているかはわからない。気を許すんじゃないぞ?」

 そうだったと思って、わたしは頷いた。

 家に入り、もふさまにお礼をいい、そしてもふもふ軍団をひとりずつ労う。
 アオとクイは子供たちについていて、夜寝静まったころ、ルームを経由してわたしのベッドに潜り込んできたから、そのときにたっぷり触れ合っている。
 特にさっき合流したレオとアリとベアには念入りにだ。
 そのもふもふボディーに顔を押しつけ、グリグリとして感謝を伝える。

『役に立った?』

「役に立ったなんてものじゃないよ。ヴェルナーにこれで証拠を突きつけられる。山崩れのことも言及できる。みんながいなかったら、フォルガードの店が吹っ飛んでいた。本当にありがとう」

 改めてお礼をいえば、ウキウキとしてつつきあっている。そんなところも、全部可愛い。

 父さまはヴェルナーの件についての書類仕事があるとのことなので、わたしとアラ兄、ロビ兄で王都の家で匿っている子供たちに会うことにした。
 実は聞きたくてたまらないことがある。
 魔法自体を魔石に込められることを知り、やってみた。
 そうしたら魔石が割れてしまったのだ。
 魔法となった状態?を入れ込もうとすると割れてしまう。
 ギフトの力を使って、たとえば水魔法を込めることはできる。
 それから本来の魔具のように水魔法の術式を込めるなら、魔具として成り立ち、水魔法の魔具にはなる。
 でも魔法そのものを閉じ込めようとすると魔石がもたないのだ。

 王都の家にルーム経由で行くと、デルとヘリがいる時間だったので驚かれた。わたしたちはノエルに転移で送ってもらったことにした。
 子供たちはお風呂に入れ、時間は中途半端だけど、食事が終わったところだと教えてもらった。応接室で待ち、子供たちを連れてきてもらう。

 子供たちは入ってくると、アラ兄とロビ兄にびくついている。大きな男性が怖いのかもしれない。

「会うのは初めまして、ね。わたしがリディアよ」

 そういうと、子供たちは一斉に頭を下げた。
 みんなの一歩前にいる少年、彼がキノだろう。唯一の女の子がベル。
 他3人の名前はわからないけれど。

「本当に逃げ出せた、ありがとう。ここに来てからも、きれいにしてもらって、食べ物も、服も、よくしてもらってる。なんてお礼言っていいのかわからない」

「あなたたちはサインを入れるという仕事を引き受けてくれた。その報酬だから気にしなくていいわ。裁判で証言してもらったりがあるから、ここにいてね。同時にあなたたちがこれからどうしたいか、相談に乗るから、一緒に考えましょう」

 子供たちは頷いた。アラ兄とロビ兄に怯えているなぁ。

「二人はわたしの兄よ。双子なの」

 そう言って、わたしはふたりを紹介した。
 そして子供たちの自己紹介を聞いた。
 キノ。5人のボス的な存在。火属性だという。
 ベル。唯一の女の子だ。支援系のスキルを持つ。
 タイチ。風魔法と土魔法の使い手。トルネード玉を作らされていた子だ。
 プラ。水の使い手。
 サンド。風の使い手。
 みんな7歳。

 身寄りがなく、孤児院やストリートチルドレンだったようだ。そこで魔法を使えることを評価され、働かないかと誘われたという。
 最初はいろいろな大人に魔法を披露するのが仕事だった。
 そして引っ張り回され、最終的にあの地下に配属された。
 そこでは生かさず殺さずの方針で、それぞれの魔力量に合わせて魔石に魔法を入れ込み、突発的な仕事が入れば、それもこなさいとならなかった。
 わたしは尋ねた。

「魔石に魔力を込めると普通は割れてしまうものなんだけれど、コツか何かがあるの?」

 少々前のめりで聞いてみると、子供たちは首を傾げてから、キノが思い出したように言った。

「そういえば、魔石は特別なものだって言ってた。うまく込められなくて魔石を無駄にすると殴られた」

 と胸が痛くなることを言う。

 魔石が特別ということも含めて、世界議会に報告すべきことかもしれないな。
 その魔石があったら、誰でも魔法を込められるということだもの。
 術を組み込んだ魔石は存在するけれど、それが魔力そのままでできることで、なにかできそうな気もするし、変わらないような気もする。
 ただ、スキルやギフトを組み込めたら、それは、世界にとって魔法革命が起こるようなことであり、恐ろしいこともできるだろう。

 ……特別な魔石。アラ兄の魔具にスキルとギフトが入り込んだ。アラ兄の魔具を作った元魔石は、〝特別製〟だったということだ。アラ兄によればウチにあった、魔物を倒して手に入れた魔石のひとつだということだけど……。

 
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