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16章 ゴールデン・ロード
第787話 敵影①ヴェルナーの仕返し
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ナムルを待っている間に、いくつかの動きがあった。
まず、アラ兄の魔具を世界議会に提出した。
議会は魔具に問題はみつからないと判断をした。
ドナイ侯が噛みついて、アラ兄も交えて話し、その時は興奮おさまらないようだったけれど、世界議会が決定したことなので、覆りはしない。
アラ兄に同行して話し合いに行った父さまは、不快さを隠さなかったという。
ドナイ侯の孫娘とセイン国王子の婚約は破談となった。
どちらが言い出したのかはわからない。
セインは今、なんていうか、教会が崇めている神の御遣いである神獣から、セインの教会は腐っていたと目に見える形で示されてしまったので、人々の反応は冷たい。
教会だけでなく、セインは周りの国々のよき隣人ではなかったようで、手を差し伸べるところもなかったようだ。それで孤立している。
正当な理由もなしにユオブリアのような大国に噛みつく国だとも思われているらしい。下手にかかわると、自国にも何が起こるかわからないと距離を置いているのかもしれない。
ドナイ侯はセインに移住する道がたたれ、ユオブリアではウチに喧嘩を売った形なので、ウチの親戚あたりからも目の敵にされ、移住先をフォルガードにしたようだ。
ヴェルナーは何事もないように暮らしていたが、海外で出す店の話がぽしゃった。フォルガードで店を出すつもりだったようだが、裁判待ちなことを知られて、待ったがかかった。
まぁ、待ったがかかったけど、それが解けることはないだろう。そしてエレイブの最大国でダメ出しされたわけだから、お隣のエレイブ大陸ではどの国でも弾かれることが予想される。
ヴェルナーは家で大暴れしたそうだ。
目に見えるものを傷つけ、壊しまくったという。
その様子は魔物から見ても異常だったとレオが教えてくれた。
ヴェルナーはその足で治安が悪い場所にある、酒を飲ませる店に入ったそうだ。
レオたちは小さくなってヴェルナーのポケットやバッグに入った。
お酒を頼み、しばらくするとヴェルナーだけ地下へと案内されたそうだ。なんとなく、頼んだお酒の名前が暗号だったのかな?と思った。
地下に通された部屋、そこには仮面をつけた人がいたそうだ。
秘密の闇ギルドって感じだなと、聞いていて思った。
そこでかなりの大きな範囲の地盤沈下を起こさせる魔具造りを頼んだという。
「王都で何かする気か?」と仮面の男は尋ね、ヴェルナーはある領地を脅すのに使うだけだと言ったそうだ。
絶対、シュタイン領だね。
3日後に作っておくと言われ、ヴェルナーは1日で作れと凄んだらしい。
もふもふ軍団はそこで二手に分かれた。
ヴェルナーについていく派と、この怪しげな店に残る派だ。
怪しげな店に残ったのはアオとベアとクイ。
仮面の男は廊下に出て、奥の部屋にいく。
そこは大きな部屋で、一部に鉄格子があり、そこに5人の子供が身を寄せあっていた。粗末な服をきた子供。
「おい、土魔法の使い手、出ろ」
鉄格子の中の子供のひとりが震えた。
「早くしろ」
少年は痩せ細った体で急いで鉄格子の中から出る。
「大きなトルネード玉を作れ」
「ぼ、僕まだ魔力が回復してなくて」
「いいから作れっつってんだろ?」
男は少年を蹴り上げた。少年は崩れ落ちて蹲る。
「いいか、急いでやれ。死ぬ気でやれ。今日中にできなかったら、わかってるな?」
少年は涙いっぱいの顔をあげて頷く。
男は部屋から出ていった。
ベアだけは男についていき、アオとクイはその場に残った。
「ここにいたくているでちか?」
アオは子供たちに尋ねた。
「誰、どこ?」
少年たちは姿は見えず聞こえる声に怯え、辺りに鋭く見た。
「おいらアオでち。リディアの役に立ちたくて、ここに来たでち」
「り、リディアって誰だよ?」
「リディアはリディアでち。もう一度聞くでち、なんでここにいるでち?」
「そんなの捕まってるからに決まってんだろ?」
鉄格子の中の少年が答えたそうだ。
「鍵はかかってないでち」
「上には店もある。すぐに捕まる。捕まったら、打たれて蹴られる。だったらここにいる方がいい。飢えないぐらいにはメシもらえるから」
中の唯一の女の子が泣き出した。
「泣かないで欲しいでち。泣かれると悲しくなるでち」
アオはそこでわたしにフォンをかけてきた。そこまでの事情を聞いて驚く。
アオにみんなに聞こえるよう、スピーカーにしてもらう。
「こんにちは、わたしはリディアよ。あなたたちは今、お腹が空いてるかしら?」
子供の声は聞こえないけど、アオがお腹が空いているようだと答えた。
クイは収納袋を持っているはずなので、食べ物と飲み物をあげてと頼むと、しばらくガサゴソと音がした。
「な、なんで食べ物を? 目的はなんだ? あ、待て、食べるな!」
どうやら、ひとりは訝しんで拒絶しているが、目の前にある食べ物に手を伸ばした子もいるようだ。
「お腹が空いていると考えがまとまらないでしょう? ちゃんと食べてお腹がいっぱいの状態で話し合いたいから、食べて欲しいの」
アオが小さな声で、みんな食べ出したと教えてくれた。
わたしはその間に仮説を立てた。
そこは秘密ギルドのようなところで、子供たちは魔力が高いかなんかで、身寄りがない子たちなのだろう。
きっとそこの子供たちの魔力で何かを作らせている。
アオから食べ終わったと報告があった。
「質問があるの。〝トルネード玉〟を作れって言われたんですって? それってどういうものかしら?」
「……竜巻って知ってる?」
ぼそっと声が聞こえる。
「知ってるわ」
「あれを土と風の魔力で作り上げるんだ。それを魔石に入れ込む、それがトルネード玉」
「あなたは2属性あるのね。魔力もいっぱいあるの?」
「土と風を持っているけど、魔力はそこまでいっぱいあるわけじゃない」
と、少年は教えてくれた。
まず、アラ兄の魔具を世界議会に提出した。
議会は魔具に問題はみつからないと判断をした。
ドナイ侯が噛みついて、アラ兄も交えて話し、その時は興奮おさまらないようだったけれど、世界議会が決定したことなので、覆りはしない。
アラ兄に同行して話し合いに行った父さまは、不快さを隠さなかったという。
ドナイ侯の孫娘とセイン国王子の婚約は破談となった。
どちらが言い出したのかはわからない。
セインは今、なんていうか、教会が崇めている神の御遣いである神獣から、セインの教会は腐っていたと目に見える形で示されてしまったので、人々の反応は冷たい。
教会だけでなく、セインは周りの国々のよき隣人ではなかったようで、手を差し伸べるところもなかったようだ。それで孤立している。
正当な理由もなしにユオブリアのような大国に噛みつく国だとも思われているらしい。下手にかかわると、自国にも何が起こるかわからないと距離を置いているのかもしれない。
ドナイ侯はセインに移住する道がたたれ、ユオブリアではウチに喧嘩を売った形なので、ウチの親戚あたりからも目の敵にされ、移住先をフォルガードにしたようだ。
ヴェルナーは何事もないように暮らしていたが、海外で出す店の話がぽしゃった。フォルガードで店を出すつもりだったようだが、裁判待ちなことを知られて、待ったがかかった。
まぁ、待ったがかかったけど、それが解けることはないだろう。そしてエレイブの最大国でダメ出しされたわけだから、お隣のエレイブ大陸ではどの国でも弾かれることが予想される。
ヴェルナーは家で大暴れしたそうだ。
目に見えるものを傷つけ、壊しまくったという。
その様子は魔物から見ても異常だったとレオが教えてくれた。
ヴェルナーはその足で治安が悪い場所にある、酒を飲ませる店に入ったそうだ。
レオたちは小さくなってヴェルナーのポケットやバッグに入った。
お酒を頼み、しばらくするとヴェルナーだけ地下へと案内されたそうだ。なんとなく、頼んだお酒の名前が暗号だったのかな?と思った。
地下に通された部屋、そこには仮面をつけた人がいたそうだ。
秘密の闇ギルドって感じだなと、聞いていて思った。
そこでかなりの大きな範囲の地盤沈下を起こさせる魔具造りを頼んだという。
「王都で何かする気か?」と仮面の男は尋ね、ヴェルナーはある領地を脅すのに使うだけだと言ったそうだ。
絶対、シュタイン領だね。
3日後に作っておくと言われ、ヴェルナーは1日で作れと凄んだらしい。
もふもふ軍団はそこで二手に分かれた。
ヴェルナーについていく派と、この怪しげな店に残る派だ。
怪しげな店に残ったのはアオとベアとクイ。
仮面の男は廊下に出て、奥の部屋にいく。
そこは大きな部屋で、一部に鉄格子があり、そこに5人の子供が身を寄せあっていた。粗末な服をきた子供。
「おい、土魔法の使い手、出ろ」
鉄格子の中の子供のひとりが震えた。
「早くしろ」
少年は痩せ細った体で急いで鉄格子の中から出る。
「大きなトルネード玉を作れ」
「ぼ、僕まだ魔力が回復してなくて」
「いいから作れっつってんだろ?」
男は少年を蹴り上げた。少年は崩れ落ちて蹲る。
「いいか、急いでやれ。死ぬ気でやれ。今日中にできなかったら、わかってるな?」
少年は涙いっぱいの顔をあげて頷く。
男は部屋から出ていった。
ベアだけは男についていき、アオとクイはその場に残った。
「ここにいたくているでちか?」
アオは子供たちに尋ねた。
「誰、どこ?」
少年たちは姿は見えず聞こえる声に怯え、辺りに鋭く見た。
「おいらアオでち。リディアの役に立ちたくて、ここに来たでち」
「り、リディアって誰だよ?」
「リディアはリディアでち。もう一度聞くでち、なんでここにいるでち?」
「そんなの捕まってるからに決まってんだろ?」
鉄格子の中の少年が答えたそうだ。
「鍵はかかってないでち」
「上には店もある。すぐに捕まる。捕まったら、打たれて蹴られる。だったらここにいる方がいい。飢えないぐらいにはメシもらえるから」
中の唯一の女の子が泣き出した。
「泣かないで欲しいでち。泣かれると悲しくなるでち」
アオはそこでわたしにフォンをかけてきた。そこまでの事情を聞いて驚く。
アオにみんなに聞こえるよう、スピーカーにしてもらう。
「こんにちは、わたしはリディアよ。あなたたちは今、お腹が空いてるかしら?」
子供の声は聞こえないけど、アオがお腹が空いているようだと答えた。
クイは収納袋を持っているはずなので、食べ物と飲み物をあげてと頼むと、しばらくガサゴソと音がした。
「な、なんで食べ物を? 目的はなんだ? あ、待て、食べるな!」
どうやら、ひとりは訝しんで拒絶しているが、目の前にある食べ物に手を伸ばした子もいるようだ。
「お腹が空いていると考えがまとまらないでしょう? ちゃんと食べてお腹がいっぱいの状態で話し合いたいから、食べて欲しいの」
アオが小さな声で、みんな食べ出したと教えてくれた。
わたしはその間に仮説を立てた。
そこは秘密ギルドのようなところで、子供たちは魔力が高いかなんかで、身寄りがない子たちなのだろう。
きっとそこの子供たちの魔力で何かを作らせている。
アオから食べ終わったと報告があった。
「質問があるの。〝トルネード玉〟を作れって言われたんですって? それってどういうものかしら?」
「……竜巻って知ってる?」
ぼそっと声が聞こえる。
「知ってるわ」
「あれを土と風の魔力で作り上げるんだ。それを魔石に入れ込む、それがトルネード玉」
「あなたは2属性あるのね。魔力もいっぱいあるの?」
「土と風を持っているけど、魔力はそこまでいっぱいあるわけじゃない」
と、少年は教えてくれた。
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