プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
787 / 823
16章 ゴールデン・ロード

第787話 敵影①ヴェルナーの仕返し

しおりを挟む
 ナムルを待っている間に、いくつかの動きがあった。

 まず、アラ兄の魔具を世界議会に提出した。
 議会は魔具に問題はみつからないと判断をした。
 ドナイ侯が噛みついて、アラ兄も交えて話し、その時は興奮おさまらないようだったけれど、世界議会が決定したことなので、覆りはしない。
 アラ兄に同行して話し合いに行った父さまは、不快さを隠さなかったという。

 ドナイ侯の孫娘とセイン国王子の婚約は破談となった。
 どちらが言い出したのかはわからない。
 セインは今、なんていうか、教会が崇めている神の御遣みつかいである神獣から、セインの教会は腐っていたと目に見える形で示されてしまったので、人々の反応は冷たい。
 教会だけでなく、セインは周りの国々のよき隣人ではなかったようで、手を差し伸べるところもなかったようだ。それで孤立している。
 正当な理由もなしにユオブリアのような大国に噛みつく国だとも思われているらしい。下手にかかわると、自国にも何が起こるかわからないと距離を置いているのかもしれない。

 ドナイ侯はセインに移住する道がたたれ、ユオブリアではウチに喧嘩を売った形なので、ウチの親戚あたりからも目の敵にされ、移住先をフォルガードにしたようだ。

 ヴェルナーは何事もないように暮らしていたが、海外で出す店の話がぽしゃった。フォルガードで店を出すつもりだったようだが、裁判待ちなことを知られて、待ったがかかった。
 まぁ、待ったがかかったけど、それが解けることはないだろう。そしてエレイブの最大国でダメ出しされたわけだから、お隣のエレイブ大陸ではどの国でも弾かれることが予想される。

 ヴェルナーは家で大暴れしたそうだ。
 目に見えるものを傷つけ、壊しまくったという。
 その様子は魔物から見ても異常だったとレオが教えてくれた。

 ヴェルナーはその足で治安が悪い場所にある、酒を飲ませる店に入ったそうだ。
 レオたちは小さくなってヴェルナーのポケットやバッグに入った。
 お酒を頼み、しばらくするとヴェルナーだけ地下へと案内されたそうだ。なんとなく、頼んだお酒の名前が暗号だったのかな?と思った。
 地下に通された部屋、そこには仮面をつけた人がいたそうだ。
 秘密の闇ギルドって感じだなと、聞いていて思った。
 そこでかなりの大きな範囲の地盤沈下を起こさせる魔具造りを頼んだという。

「王都で何かする気か?」と仮面の男は尋ね、ヴェルナーはある領地を脅すのに使うだけだと言ったそうだ。
 絶対、シュタイン領だね。
 3日後に作っておくと言われ、ヴェルナーは1日で作れと凄んだらしい。
 もふもふ軍団はそこで二手に分かれた。
 ヴェルナーについていく派と、この怪しげな店に残る派だ。

 怪しげな店に残ったのはアオとベアとクイ。
 仮面の男は廊下に出て、奥の部屋にいく。
 そこは大きな部屋で、一部に鉄格子があり、そこに5人の子供が身を寄せあっていた。粗末な服をきた子供。

「おい、土魔法の使い手、出ろ」

 鉄格子の中の子供のひとりが震えた。

「早くしろ」

 少年は痩せ細った体で急いで鉄格子の中から出る。

「大きなトルネード玉を作れ」

「ぼ、僕まだ魔力が回復してなくて」

「いいから作れっつってんだろ?」

 男は少年を蹴り上げた。少年は崩れ落ちて蹲る。

「いいか、急いでやれ。死ぬ気でやれ。今日中にできなかったら、わかってるな?」

 少年は涙いっぱいの顔をあげて頷く。
 男は部屋から出ていった。

 ベアだけは男についていき、アオとクイはその場に残った。

「ここにいたくているでちか?」

 アオは子供たちに尋ねた。

「誰、どこ?」

 少年たちは姿は見えず聞こえる声に怯え、辺りに鋭く見た。

「おいらアオでち。リディアの役に立ちたくて、ここに来たでち」

「り、リディアって誰だよ?」

「リディアはリディアでち。もう一度聞くでち、なんでここにいるでち?」

「そんなの捕まってるからに決まってんだろ?」

 鉄格子の中の少年が答えたそうだ。

「鍵はかかってないでち」

「上には店もある。すぐに捕まる。捕まったら、打たれて蹴られる。だったらここにいる方がいい。飢えないぐらいにはメシもらえるから」

 中の唯一の女の子が泣き出した。

「泣かないで欲しいでち。泣かれると悲しくなるでち」

 アオはそこでわたしにフォンをかけてきた。そこまでの事情を聞いて驚く。
 アオにみんなに聞こえるよう、スピーカーにしてもらう。

「こんにちは、わたしはリディアよ。あなたたちは今、お腹が空いてるかしら?」

 子供の声は聞こえないけど、アオがお腹が空いているようだと答えた。
 クイは収納袋を持っているはずなので、食べ物と飲み物をあげてと頼むと、しばらくガサゴソと音がした。

「な、なんで食べ物を? 目的はなんだ? あ、待て、食べるな!」

 どうやら、ひとりは訝しんで拒絶しているが、目の前にある食べ物に手を伸ばした子もいるようだ。

「お腹が空いていると考えがまとまらないでしょう? ちゃんと食べてお腹がいっぱいの状態で話し合いたいから、食べて欲しいの」

 アオが小さな声で、みんな食べ出したと教えてくれた。
 わたしはその間に仮説を立てた。
 そこは秘密ギルドのようなところで、子供たちは魔力が高いかなんかで、身寄りがない子たちなのだろう。
 きっとそこの子供たちの魔力で何かを作らせている。
 アオから食べ終わったと報告があった。

「質問があるの。〝トルネード玉〟を作れって言われたんですって? それってどういうものかしら?」

「……竜巻って知ってる?」

 ぼそっと声が聞こえる。

「知ってるわ」

「あれを土と風の魔力で作り上げるんだ。それを魔石に入れ込む、それがトルネード玉」

「あなたは2属性あるのね。魔力もいっぱいあるの?」

「土と風を持っているけど、魔力はそこまでいっぱいあるわけじゃない」

 と、少年は教えてくれた。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...