プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
777 / 990
16章 ゴールデン・ロード

第777話 いいこと悪いこと⑩問い合わせ

しおりを挟む
 なんか、どうなってしまうのだろう?

 国には世界議会から問い合わせが早速きたようだ。
 神獣が相手となると、全ての大陸そして全ての国にも関係してくる。だから出張ってきて当然か。
 教会に流れてきた映像を、録画できた強者がいたらしい。
 それによって知ることができたが、どうしてああなったのか、セイン国の者は何をして神獣を怒らせたのか知らせて欲しい旨のようだ。

『リディア、録画していたのだろう? 見せてやれ』

 わたしはもふさまを撫でる振りをして耳に小さい声で呟く。

「録画する時は、その前に知らせなくちゃいけないのよ。それに陛下もいらっしゃる席で録画してたなんてバレたらまずいの」

『我が録画をしたことにすればいいだろう?』

 えーーー。ありがたいけど、バレバレだよ。
 もふさまはわたしのブローチ型魔具を器用に咥えて、尻尾をふりふり移動して、陛下の差し出した手の上に落とす。

「リディア嬢、これは?」

 めっちゃ言いにくい。

「あの、申し訳ありません」

 わたしは深く頭を下げた。

「セイン国の殿下に何を言われるのかわからなかったので、……申請しておりませんが、その、録画をしておりました。すみません、わたしの一存でしたことです」

 さすがに陛下は呆れ顔だが、ロサとアダムは堪えきれないというように笑っている。

「陛下、申し訳ありません。私が娘にそうするよう言いつけたのです」

「いえ、陛下、私が頼みました。罰するなら私を」

「罰するなら私に願います」

 父さまと兄さまとロビ兄が陛下に懇願する。

「今回はその証が役立つゆえ罰しないが、録画の事前報告は王の前だからとそういうことではなく、話し合いの場で明かさないことは、そこに企みがあると受け取られるから禁じているのだ。それを肝に命じ、今後はきちんと事前に申告するように」

「はい。申し訳ありませんでした」

 心に刻む。


 ってことで、セイン国の第3王子が神獣さまを愚弄し、神獣さまの言葉を盾にとり、わたしにネチネチ言いがかりをつけていたことは、世界議会が知ることになった。
 つまり、セイン国が神獣の加護がどういったものかを知るのに、わたしにちょっかいを出し、たまたま舞い降りた神獣に質問をし怒らせ、自国の教会を消されたことが、世界に知れ渡った。

 神獣が発信した映像とそれよりも尺が長い映像、かぶる部分の内容が全く同じだったので、その長い方の録画も捏造されたりされていない事実だと承認された。
 これは各教会に送られた映像の通り、神獣の怒りをかったセインの教会に制裁が下った結果だと、皆に認識された。

 そしてわたしが他国の情報を手にはしていない証明にもなっただろう。心の中でどう思うかは自由だけど、神獣がわたしに国の情報を漏らしたことはないと言い、神獣の在り方には矜恃があることが映像からわかる。その矜恃を、わたしをなんとかしたいがために見誤れば、神獣からの制裁がくだる。簡単な図式だ。
 証拠の映像があったのでスピーディーに事は運んだ。お茶を1杯いただく間に、世界議会から片がついたと連絡もあった。


 その後、子供たちは部屋から追い出された。世界議会から別の話があるようだ。父さまもいることから、アラ兄の魔具のことではないかと思われる。
 世界議会が動く案件と認定されるには条件がある。
 ふたつ以上の大陸をまたにかけ、最低4つの国がかかわっていて、国同士の話し合いが見込めそうにないことなどが審査条件。そして世界裁判で通じるような明確な証拠がなくてはならない。

 アラ兄が建前とした魔具があったとしても、ユオブリアでしか使ってないのだから、ひとつの大陸でおきたことだし、ひとつの国しかかかわっていない。そんなのを〝提出〟されて困っただろうな。でももしそんな魔具ができてしまったら、世界を巻き込むことになり得るから受領されたのかしら?


 子供たちだけで部屋を移った。
 メイドさんがお茶の用意をしてくれて、新しいお茶菓子が用意される。

「本当にふたりとも罰せられることはないのね?」

 兄さまとアダムにまず確認だ。

「ああ、大丈夫だよ。心配してたんだね?」

 兄さまはにっこりと笑う。

「当たり前よ」

「っていうか、王宮にて、録画の魔具仕掛けてたことの方が私は驚いたけどね」

 アダムに言われる。

「あれは出来心というか……」

「陛下の魔力に探知されなかったんだ。それもすごいよ」

 え? 魔力探知そんなこともできるの?
 それめっちゃ、やばかったじゃん。

「なんで見つからなかったんだろう?」

「お使いさまの力ってわけでもなさそうだし。邪心がなかったからかもね」

「それにしても、ロビンもリディア嬢も本当に元気でほっとしたよ」

 そう言って、ロサは声を潜めた。

「アランも本当に大丈夫なんだね?」

「はい、元気です」

 ロサもアダムもほっとした笑みを浮かべる。
 わたしもふたりに何かあったって聞いたら、絶対心配するけど、こうして本当に心配してくれてたと伝わってくると、なんかほっこりする。

「神獣さまはノックスさまだけではなかったんだね。もしかして、聖獣さまも森の主人さま以外にもお会いしたことがあるのかい?」

 アダムは言いながらカップに手を伸ばす。

「聖獣さまは皆さまにお会いしたよ。空の主人さま、海の主人さま、地下の主人さま」

 みんなおいしいものが大好きで、誇り高いかたたちだった。

「全く、君が羨ましいよ」

 アダムってわりと珍しいとか新しいもの好きだよね。

「それにしても神獣さまの制裁には驚いたな」

「わたしも」

 ロサに賛同する。
 聖獣であるもふさまとは趣きがだいぶ違う。
 やっぱり仕える方の属性寄りっていうか、あるんだろうな。
 だってもふさまも怒ったことはあるけれど、あんな攻撃的ではないもの。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。  ※一話を改稿しました。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

処理中です...