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16章 ゴールデン・ロード
第770話 いいこと悪いこと④ロビ兄の未来視
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とうとう兄さまが呼び出された。
シュタイン家はその後だ。
わたしにできたのは兄さまにエールを送る、それだけだった。
兄さまもアダムもなんて言うつもりなんだろう?
なんとなく、あることに対しての経済制裁で、個人的なことだ。共謀したわけではない。なぜ国から抗議が?って話を持っていくんじゃないかって、わたしは推測している。
けれど、あちらは王族。
……兄さまたちが罰を受けるなんてことにならないよね?
「リー」
ロビ兄に呼ばれ、顔をあげた。
「リーはどうしたい?」
「え?」
「ユオブリアにいたい?」
「……どういう意味?」
「そのままだよ。今回のことが平穏に終わったとして、世界の終焉なんて恐ろしいことがこの国で始まるかもしれない」
おじいさまがチラッとこちらを見た。
「それでもこの国にいたい? もし兄さまと穏やかに暮らしたいのなら、ここから出たっていいんだ。リーがそう望むなら、おれが絶対にそうしてやる。全てをぶっ飛ばしてでもそうしてやるから、望みを言ってくれ」
ロビ兄は本気で言ってくれてる。
わたしはロビ兄にぎゅーっと抱きついた。
「リ、リー?」
「わたしがこの世界を大切と思うのは、好きな人たちが暮らす世界だからよ。だから、わたしはこの国が大切なの。みんなと出会った、みんなのいるところだから! ロビ兄……いつもありがとう」
ロビ兄も少し力を込めて返してくれる。
「リー、リーの望みはわかった。この国に居たいなら、覚悟を決めろ。兄さまとアダムがどんなことを言われても、理不尽な目にあっても、リーは何もするな。やりこめることができそうだとしてもだ。
ウッドのおじいさまから言われたな? ひとつ先のことが見えるまで動くなって。それは商売の話。王族は隠し玉を持ってるもんなんだ。全てを覆すような、な。だから王族は2つ先、いや、もっと先まで、確実ななにかが見えるまで、争うのは得策じゃない。
だから、リーはどんなに悔しくても、やり返せる何かがあっても我慢しなくちゃダメだ。リーだけは追放されるようなことがあったら、どうにもならなくなるんだ、覆せないんだ。だからちゃんと守られていること。わかるか?」
その説得の仕方は、父さまにそっくりだと思った。
「ロビ兄は、兄さまもアダムも槍玉に上がっていると思ってるの?」
「それはわからない。けど、もし兄さまとアダムが優位に進んでいるように見えたら、それこそ警戒する方がいいと思う」
おさらいする。軽く目を瞑る。
恐らく、わたしたちが呼ばれた時、兄さまとアダムは追い込まれた状態にあるとロビ兄はみている。ドナイ侯があちら側なら、わたしの性格は把握済み。きっとそこを狙った何かがあり、わたしが口を出したら、わたしが窮地に立たされることになりかねないわけだ。
王族は覆す何かを持つ。その通りだ。
ユオブリアの王族は、わたしが民でもあるから、許してくれた部分があるんだろう。
ガーシは言った。わたしはわたしにしか渡り合えない者を倒すべきだと。そしてロビ兄が言うように、それは今ではないんだ。
アダムはわたしの容姿が武器になると言った。
確かにグリットカー氏も、〝子供だけど気をつけろと言われていたが〟と言っていた。ってことは、そう聞かされていたにもかかわらず、わたしの見かけで子供だと油断したということだ。
彼だけではなく、今まで何度かそんなようなことを言われたことがある。
王族だったら余計に思うんじゃない? 他の者には生意気な態度を取れたかもしれないが、王族である自分には違うと納得するんじゃ?
わたしはどんな状況になっても、2つ先、いや確証があるまで、セインに、はむかっちゃいけないんだ。
「わかった。儚く怯えて、あちらの思う通りの令嬢でいればいいのね?」
ロビ兄に頭を撫でられる。
「ロビンもなかなかどうして、卒業したらすぐに領主になれそうだな。どうだ、シュタイン領を継がないなら、ウチを継がないか?」
ええ?
クジャクのおじいさまはテーブルに肩肘を置き、その立てた手に顎をのせていた。
「おじいさまは、クジャク領をノエルに継いでもらいたいんじゃないの?」
ロビ兄はなんでもないことのように言った。
おじいさまは顎を触る。
「ジュレミーには言ったが、お前たちの誰かに継いでもらえないかと思っている。ノエルとエリンは、幼いからだといいが、家族以外に興味がない。ノエルは転移という繋がりはあるが、今のリディアとの会話を聞いて、ロビンに任せられないかと思ったのだよ」
ロビ兄の顔を見て、おじいさまは続けた。
「今すぐというわけじゃない。候補のひとつとでも考えてくれればいい」
ロビ兄は胸に手を当て、頭を下げた。
そしてわたしに向き合う。
「おれはシュタイン領はリーが継ぐのが一番いいと思ってる」
わたしが継ぐ? ああ、結婚して兄さまが継ぐってことかな?
「兄さまがってこと?」
ロビ兄は首を横に振る。
「違うよ、リーがだ」
「女性は領主になれないよ?」
「きっとそれは、ロサ殿下がどうにかすると思う」
え?
「オレの未来視。元王族のメラノ公女に爵位を授けたのは特別処置だ。だからメラノ公女はカウントしない。ユオブリアの初の女性領主は、リーがなるよ、絶対」
ロビ兄はきれいにウインクを決めた。
シュタイン家はその後だ。
わたしにできたのは兄さまにエールを送る、それだけだった。
兄さまもアダムもなんて言うつもりなんだろう?
なんとなく、あることに対しての経済制裁で、個人的なことだ。共謀したわけではない。なぜ国から抗議が?って話を持っていくんじゃないかって、わたしは推測している。
けれど、あちらは王族。
……兄さまたちが罰を受けるなんてことにならないよね?
「リー」
ロビ兄に呼ばれ、顔をあげた。
「リーはどうしたい?」
「え?」
「ユオブリアにいたい?」
「……どういう意味?」
「そのままだよ。今回のことが平穏に終わったとして、世界の終焉なんて恐ろしいことがこの国で始まるかもしれない」
おじいさまがチラッとこちらを見た。
「それでもこの国にいたい? もし兄さまと穏やかに暮らしたいのなら、ここから出たっていいんだ。リーがそう望むなら、おれが絶対にそうしてやる。全てをぶっ飛ばしてでもそうしてやるから、望みを言ってくれ」
ロビ兄は本気で言ってくれてる。
わたしはロビ兄にぎゅーっと抱きついた。
「リ、リー?」
「わたしがこの世界を大切と思うのは、好きな人たちが暮らす世界だからよ。だから、わたしはこの国が大切なの。みんなと出会った、みんなのいるところだから! ロビ兄……いつもありがとう」
ロビ兄も少し力を込めて返してくれる。
「リー、リーの望みはわかった。この国に居たいなら、覚悟を決めろ。兄さまとアダムがどんなことを言われても、理不尽な目にあっても、リーは何もするな。やりこめることができそうだとしてもだ。
ウッドのおじいさまから言われたな? ひとつ先のことが見えるまで動くなって。それは商売の話。王族は隠し玉を持ってるもんなんだ。全てを覆すような、な。だから王族は2つ先、いや、もっと先まで、確実ななにかが見えるまで、争うのは得策じゃない。
だから、リーはどんなに悔しくても、やり返せる何かがあっても我慢しなくちゃダメだ。リーだけは追放されるようなことがあったら、どうにもならなくなるんだ、覆せないんだ。だからちゃんと守られていること。わかるか?」
その説得の仕方は、父さまにそっくりだと思った。
「ロビ兄は、兄さまもアダムも槍玉に上がっていると思ってるの?」
「それはわからない。けど、もし兄さまとアダムが優位に進んでいるように見えたら、それこそ警戒する方がいいと思う」
おさらいする。軽く目を瞑る。
恐らく、わたしたちが呼ばれた時、兄さまとアダムは追い込まれた状態にあるとロビ兄はみている。ドナイ侯があちら側なら、わたしの性格は把握済み。きっとそこを狙った何かがあり、わたしが口を出したら、わたしが窮地に立たされることになりかねないわけだ。
王族は覆す何かを持つ。その通りだ。
ユオブリアの王族は、わたしが民でもあるから、許してくれた部分があるんだろう。
ガーシは言った。わたしはわたしにしか渡り合えない者を倒すべきだと。そしてロビ兄が言うように、それは今ではないんだ。
アダムはわたしの容姿が武器になると言った。
確かにグリットカー氏も、〝子供だけど気をつけろと言われていたが〟と言っていた。ってことは、そう聞かされていたにもかかわらず、わたしの見かけで子供だと油断したということだ。
彼だけではなく、今まで何度かそんなようなことを言われたことがある。
王族だったら余計に思うんじゃない? 他の者には生意気な態度を取れたかもしれないが、王族である自分には違うと納得するんじゃ?
わたしはどんな状況になっても、2つ先、いや確証があるまで、セインに、はむかっちゃいけないんだ。
「わかった。儚く怯えて、あちらの思う通りの令嬢でいればいいのね?」
ロビ兄に頭を撫でられる。
「ロビンもなかなかどうして、卒業したらすぐに領主になれそうだな。どうだ、シュタイン領を継がないなら、ウチを継がないか?」
ええ?
クジャクのおじいさまはテーブルに肩肘を置き、その立てた手に顎をのせていた。
「おじいさまは、クジャク領をノエルに継いでもらいたいんじゃないの?」
ロビ兄はなんでもないことのように言った。
おじいさまは顎を触る。
「ジュレミーには言ったが、お前たちの誰かに継いでもらえないかと思っている。ノエルとエリンは、幼いからだといいが、家族以外に興味がない。ノエルは転移という繋がりはあるが、今のリディアとの会話を聞いて、ロビンに任せられないかと思ったのだよ」
ロビ兄の顔を見て、おじいさまは続けた。
「今すぐというわけじゃない。候補のひとつとでも考えてくれればいい」
ロビ兄は胸に手を当て、頭を下げた。
そしてわたしに向き合う。
「おれはシュタイン領はリーが継ぐのが一番いいと思ってる」
わたしが継ぐ? ああ、結婚して兄さまが継ぐってことかな?
「兄さまがってこと?」
ロビ兄は首を横に振る。
「違うよ、リーがだ」
「女性は領主になれないよ?」
「きっとそれは、ロサ殿下がどうにかすると思う」
え?
「オレの未来視。元王族のメラノ公女に爵位を授けたのは特別処置だ。だからメラノ公女はカウントしない。ユオブリアの初の女性領主は、リーがなるよ、絶対」
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