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16章 ゴールデン・ロード
第764話 〝待つ〟を使う④はた織り
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種は撒いたので、また待つ時間になってしまった。
もふさまは大きなあくびをした。
もふもふ軍団とじゃれないと、体がなまると言っていたな。
もふさまたちのじゃれるって……。
もふさまは毛繕い?を始めた。
アラ兄の魔具を見せてもらい、鑑定をかけたりしたけれど、スキルやギフトを入れられたのは、やはりどういうことなのかわからなかった。
ただわたしが使っても、簡易マップに土の強度がわかるようにでて、これを正確な地図に書き込んでいけば、誰でも土地のことがわかってしまう危険なものだとわかった。アラ兄はこの魔具を封印するという。
わたしは反響定位の魔具を作れたら、それだけで軍事系に便利そうなものになるのではないかと話してみた。アラ兄は顔を青くする。
アラ兄も、建前で言っていた魔具が作れてしまった場合、恐ろしい使い方のできるものだということに気づいた。
「リー、ドナイ候は食いついたけど、ユオブリアの強度の情報を渡すのが目的じゃないかもね。もし、反響定位の魔具が作れて、それが外国に渡ったり外国で作り出されたら……」
アラ兄が顔を手で覆う。
「術式の中に変数を入れ込んで、複雑な式にするやり方はまだ一般的じゃないわ。それに超音波の数式を考えられる人はいないと思う。神の領域だもの。アラ兄の場合、スキルと同等なものが術式になったんだろうから……」
アラ兄のスキルやギフトは反響定位とは違うだろう。
「ちょうおんぱ?」
「あ、反響定位で出す振動させる何かのこと」
「リーは知ってたの? 予備の魔具に入れ込んだの?」
「わからないよ、音波の式なんて。それらしく見えるものを入れ込んだだけ」
ロビ兄は少しほっとしたようだ。
「反響定位はアラ兄が考えついたたことじゃないでしょ? 知られていた概念よ」
「でも今までは、それを魔具に入れようと思った人はいなかった……」
「入れようと思っても、まだできないわ」
「…………………………」
アラ兄がうなだれる。
「どこからが悪いことになるのかね?」
「え?」
「だって、便利にしたい、かかる時間を短くしたい。そんなの誰もが思うことよ。こんな魔具があったら便利だ。できるかどうかは別として、そういう欲は人類が発展していくのにあるべきものだと思うし。けれど、間違った使い方をする人がいると、その魔具自体が悪者にされてしまう。悪く使ったことが問題なのに」
「そうだな。悪い魔具になる境界線は一体どこなんだろうな?」
アラ兄と別れ、村の中を歩く。カランカラントントンと音が聞こえたので、行ってみると、はた織り機があって、おばあさんが織物を織っていた。
「おや、お嬢ちゃん」
「あの、見ていてもいいですか?」
優しい目でうなずいてくれたので、わたしは後ろで座り込み、もふさまを抱えた。
優しい織り機の音。
「見ていて面白くもないだろう? 同じことの繰り返しだ」
「面白いです。あのー、模様とか編み込まれたりもするんですか?」
「模様?」
「はい、色の違う糸にしたり……」
お婆さんは少し考えたけど、首を横に振る。
「色の糸は高いから」
「染めたりはしないんですか? お茶の葉でも色はつくし、村でピンシブの実も見ましたけど」
「ピンシブの実がどうしたね?」
「薬草学で習ったんですけど、ピンシブの実は色を定着させることができます」
危険な薬は口にすることがないように、真っ赤な色に着色して、定着させるのにピンシブの実を使うのだ。
「へぇー、それはなんか面白そうだねぇ」
とおばあさんが興味を示して、糸を染めてみることにした。
元の糸は生成色。おばあさんは白いのは高いから、と少し悲しそうだ。
漂白に使う実を持っていると言うと、おばあさんの目が輝いた。
わたしたちが糸を染める実験をしていると、いく人かのおばあさんが集まってきた。昔はこの村ははた織りが盛んだったそうだ。
でも、糸の値段が高くなり、色がついていたりすると尚更で。
糸を紡ぐから布地を作るまでを丸ごと請け負う商会ができると、そっちはコストダウンできて、安く売られてしまったので、この村で織った物は売れなくなってしまったそうだ。
それで、若い人たちも仕事がないわけだから街に行ってしまった。
あれ、この実からなら真っ赤に染まると思ったのに、薄いピンクになった。
「漂白してからじゃないと、色が入りにくいのか」
その見立て通り、最初に漂白してからやったら、色がきれいに入った。
でもわたしは何気にその薄いピンクの色が気に入った。
わたしは編み物でやる飾り編みを、はた織りでも取り入れられないか聞いてみた。
最初は目をパチクリさせていたおばあちゃんたちだったけど、わたしが飾り編みをしてみると、あ、これなら、3回に1回横を先にすればできるのでは?と話し合いに花が咲いた。
染めた糸は乾燥させないとなので明日まで使えないが、生成色一色で、飾り織り案をいろいろ試してみたら、かなりいろいろな織り方が生まれた。
おばあちゃんたち、自分の家の織り機のホコリをとってみようかしらとやる気になってきた。
わたしは夏の上掛けが欲しいとオーダーしてみた。端っこだけピンクの糸で飾り織りをして欲しいと。するとおばあさんは請け負ってくれた。
わーい、かわいい上掛けが手に入るね。
糸も手に入るようになったら、柄の布作って欲しいな。そうするといろいろ広がると思うんだよね。収入にもなるしね。
材料費が高くなるわけだから、必然的に製品も高くなる。それを買ってもらうには、何か付加価値を付けないとだ。そうでないと買ってもらえない。
それが模様だったら?
水玉は難しいかな? ボーダーは簡単にいけそうだね。ギンガムチェックとか、難しいかな?
次の日、おばあちゃんは早速作ってくれて、とても可愛い上掛けが完成した。わたしはそれを買い取らせてもらって、それからおばあちゃんたちみんなに、Rの店での定期契約を結ばないかと話を持ちかけた。
最初は子供の言うことだし、ぽかんとしていたけど、わたしが証書を出すと本気だったのが伝わったみたいだ。
糸はこちらで買ってきて、届ける。色を染めるのはいろんなのを挑戦してもらいたいけれど、大変そうだったら、色付きをこちらで用意する。
柄は考えてくれてもいいし、こちらがお願いするものを作ってもらう時もある。
7メートルを基準にし、何色の糸を使うか、それと、飾り織りの手数で点を足していく形にして、報酬を出す。無理はしなくていいからと言っておく。
あっという間に話は決まり、ウチの商品に柄の生地が手に入ることになった。
待ち時間で、ひとつとてもいい商品を手に入れちゃった!
何より、おばあちゃんたちがウキウキして、やる気が漲っているのがいい。そうするとおじいちゃんたちも元気が出てきてさー。
良い商談ができたと、わたしは嬉しくなっていた。
もふさまは大きなあくびをした。
もふもふ軍団とじゃれないと、体がなまると言っていたな。
もふさまたちのじゃれるって……。
もふさまは毛繕い?を始めた。
アラ兄の魔具を見せてもらい、鑑定をかけたりしたけれど、スキルやギフトを入れられたのは、やはりどういうことなのかわからなかった。
ただわたしが使っても、簡易マップに土の強度がわかるようにでて、これを正確な地図に書き込んでいけば、誰でも土地のことがわかってしまう危険なものだとわかった。アラ兄はこの魔具を封印するという。
わたしは反響定位の魔具を作れたら、それだけで軍事系に便利そうなものになるのではないかと話してみた。アラ兄は顔を青くする。
アラ兄も、建前で言っていた魔具が作れてしまった場合、恐ろしい使い方のできるものだということに気づいた。
「リー、ドナイ候は食いついたけど、ユオブリアの強度の情報を渡すのが目的じゃないかもね。もし、反響定位の魔具が作れて、それが外国に渡ったり外国で作り出されたら……」
アラ兄が顔を手で覆う。
「術式の中に変数を入れ込んで、複雑な式にするやり方はまだ一般的じゃないわ。それに超音波の数式を考えられる人はいないと思う。神の領域だもの。アラ兄の場合、スキルと同等なものが術式になったんだろうから……」
アラ兄のスキルやギフトは反響定位とは違うだろう。
「ちょうおんぱ?」
「あ、反響定位で出す振動させる何かのこと」
「リーは知ってたの? 予備の魔具に入れ込んだの?」
「わからないよ、音波の式なんて。それらしく見えるものを入れ込んだだけ」
ロビ兄は少しほっとしたようだ。
「反響定位はアラ兄が考えついたたことじゃないでしょ? 知られていた概念よ」
「でも今までは、それを魔具に入れようと思った人はいなかった……」
「入れようと思っても、まだできないわ」
「…………………………」
アラ兄がうなだれる。
「どこからが悪いことになるのかね?」
「え?」
「だって、便利にしたい、かかる時間を短くしたい。そんなの誰もが思うことよ。こんな魔具があったら便利だ。できるかどうかは別として、そういう欲は人類が発展していくのにあるべきものだと思うし。けれど、間違った使い方をする人がいると、その魔具自体が悪者にされてしまう。悪く使ったことが問題なのに」
「そうだな。悪い魔具になる境界線は一体どこなんだろうな?」
アラ兄と別れ、村の中を歩く。カランカラントントンと音が聞こえたので、行ってみると、はた織り機があって、おばあさんが織物を織っていた。
「おや、お嬢ちゃん」
「あの、見ていてもいいですか?」
優しい目でうなずいてくれたので、わたしは後ろで座り込み、もふさまを抱えた。
優しい織り機の音。
「見ていて面白くもないだろう? 同じことの繰り返しだ」
「面白いです。あのー、模様とか編み込まれたりもするんですか?」
「模様?」
「はい、色の違う糸にしたり……」
お婆さんは少し考えたけど、首を横に振る。
「色の糸は高いから」
「染めたりはしないんですか? お茶の葉でも色はつくし、村でピンシブの実も見ましたけど」
「ピンシブの実がどうしたね?」
「薬草学で習ったんですけど、ピンシブの実は色を定着させることができます」
危険な薬は口にすることがないように、真っ赤な色に着色して、定着させるのにピンシブの実を使うのだ。
「へぇー、それはなんか面白そうだねぇ」
とおばあさんが興味を示して、糸を染めてみることにした。
元の糸は生成色。おばあさんは白いのは高いから、と少し悲しそうだ。
漂白に使う実を持っていると言うと、おばあさんの目が輝いた。
わたしたちが糸を染める実験をしていると、いく人かのおばあさんが集まってきた。昔はこの村ははた織りが盛んだったそうだ。
でも、糸の値段が高くなり、色がついていたりすると尚更で。
糸を紡ぐから布地を作るまでを丸ごと請け負う商会ができると、そっちはコストダウンできて、安く売られてしまったので、この村で織った物は売れなくなってしまったそうだ。
それで、若い人たちも仕事がないわけだから街に行ってしまった。
あれ、この実からなら真っ赤に染まると思ったのに、薄いピンクになった。
「漂白してからじゃないと、色が入りにくいのか」
その見立て通り、最初に漂白してからやったら、色がきれいに入った。
でもわたしは何気にその薄いピンクの色が気に入った。
わたしは編み物でやる飾り編みを、はた織りでも取り入れられないか聞いてみた。
最初は目をパチクリさせていたおばあちゃんたちだったけど、わたしが飾り編みをしてみると、あ、これなら、3回に1回横を先にすればできるのでは?と話し合いに花が咲いた。
染めた糸は乾燥させないとなので明日まで使えないが、生成色一色で、飾り織り案をいろいろ試してみたら、かなりいろいろな織り方が生まれた。
おばあちゃんたち、自分の家の織り機のホコリをとってみようかしらとやる気になってきた。
わたしは夏の上掛けが欲しいとオーダーしてみた。端っこだけピンクの糸で飾り織りをして欲しいと。するとおばあさんは請け負ってくれた。
わーい、かわいい上掛けが手に入るね。
糸も手に入るようになったら、柄の布作って欲しいな。そうするといろいろ広がると思うんだよね。収入にもなるしね。
材料費が高くなるわけだから、必然的に製品も高くなる。それを買ってもらうには、何か付加価値を付けないとだ。そうでないと買ってもらえない。
それが模様だったら?
水玉は難しいかな? ボーダーは簡単にいけそうだね。ギンガムチェックとか、難しいかな?
次の日、おばあちゃんは早速作ってくれて、とても可愛い上掛けが完成した。わたしはそれを買い取らせてもらって、それからおばあちゃんたちみんなに、Rの店での定期契約を結ばないかと話を持ちかけた。
最初は子供の言うことだし、ぽかんとしていたけど、わたしが証書を出すと本気だったのが伝わったみたいだ。
糸はこちらで買ってきて、届ける。色を染めるのはいろんなのを挑戦してもらいたいけれど、大変そうだったら、色付きをこちらで用意する。
柄は考えてくれてもいいし、こちらがお願いするものを作ってもらう時もある。
7メートルを基準にし、何色の糸を使うか、それと、飾り織りの手数で点を足していく形にして、報酬を出す。無理はしなくていいからと言っておく。
あっという間に話は決まり、ウチの商品に柄の生地が手に入ることになった。
待ち時間で、ひとつとてもいい商品を手に入れちゃった!
何より、おばあちゃんたちがウキウキして、やる気が漲っているのがいい。そうするとおじいちゃんたちも元気が出てきてさー。
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