プラス的 異世界の過ごし方

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16章 ゴールデン・ロード

第750話 冒険者の仲間入り①討伐依頼

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 ダンジョンとは常に危険があり何が起こるかわからないものだけど、もふさまたちもいるからか〝なあなあ〟だった。これまで空っぽダンジョン攻略は子供たちだけでも許されてきたが、こういった手に負えないケースもあることが発覚した。100階を超えていることだし、新しい階へ行くのは待ったがかかる。
 じゃあどうしたら新フィールドに挑戦していいのだという話になり、それなら冒険者ギルドに加入して、Dランクになったらいいだろうということになった。初級アンデッド攻略の推奨ランクがそれらしい。

 ステータスは一般には知られていないが、冒険者ギルドにて、魔具を通すと、魔力と魔力の属性の最低限のこととランクがわかる。
 陛下たちにステータスのことを話したけれど、公表はされなかった。
 ステータスがわかったら、それを読み取る魔具とか作っちゃう人がいるからかな? それを秘匿していたことで冒険者ギルド内でどんな勃発が起こるかはわからないけれど、陛下たちは過去の事象から派生する、感情論問題は気にしていないだろう。彼らが気にするのは、これから、今後の民たちに影響を及ぼす点だ。たとえばそういった魔具が巷に出るようになったら、どんな弊害が起こるかということとか。結論が出ていないか、出さない方がいいとしたのかはわからないけれど。

 兄さまの協力で、トカゲの姿から無事人型に戻れた。そして体力が戻ってから、みんなで冒険者ギルドに行った。ちなみにエリンとノエルの謹慎はとけていない。とっっっっっっっっても悔しがっていた。この夏休みはふたりとは遊べない。

 領地にある冒険者ギルドに行くと、ギルド長であるギルバートが出てきた。
 長なんだから自ら出てくることないのに。
 前ギルド長であるハンソンさんは、実は問題のある人だった。ギルドを隠れ蓑にして悪いことを考えていた。それもギルバートの忠告で調べることになったんだけどね。優しげで、人望もあったので、見誤っていた。

 あの時は凄かったな。エリンとノエルが先頭に立ち、領地の子供たちと一緒に、その証拠を掴んできたのだ。子供が自分たちを嗅ぎ回るとは思ってなかったようで、子供にはガードが弱かった。その証拠を持ち、ギルドにそれを訴えると粛正された。それで副ギルド長だったギルバートが長となった。書類仕事は苦手だそうだけど、元高レベルの冒険者であるので、荒くれ者たちも彼の言うことはきくそうだ。

「これはシュタイン家の坊ちゃんに姫さん。今更ギルドに登録する気になったって、どんな心境の変化だい?」

 それを聞くために来たのか。
 父さまの指示だというと、ギルバートは顎に手をやって少し考えるそぶりをした。

「これまた一体、何が始まるというんですかね?」



 ピッカピカの冒険者カードはGランク。
 飴色の片手のひらにおさまるそれには、冒険者登録名とランクが記載されていた。ちなみにわたしは『リディア』にした。
 魔具を使うと、魔力量など隠蔽した数値が出るので、受付ガールに心配された。
 する必要はなかったんだけど、なんとなく冒険者カードを鑑定してみたら、ギルドから教えてもらった自分の情報より、細かい結果が出ている。鑑定結果ではランクは出ていなくてレベル1だそうだ。つまり、レベルでいくつからいくつまでがランクGとか規定があり、それが表示されるようになっているってことだ。そして魔具を使った側に、それは見えている。より細かい結果が。知られて困ることは隠蔽しているからいいけど。
 
 ランクの仕事を受ける必要があるようだ。
 ランクが低いと薬草とりや、お店の修繕だったり、お使いだったり、なんか面白いものがいっぱいあった。わたしは鑑定ができるから、薬草とりは楽勝だ。数日、真面目にこなすと、Fランクにアップした。GからFにあがるのは、そこまで大変ではないそうだ。

  Fランクになると、絶対Fランクの仕事じゃないと思うんだけど、アラ兄とロビ兄は護衛の仕事に駆り出された。
 わたしは見た目で不安にさせるから、まだ護衛は無理だと言われた。
 アラ兄たちは体が大きいから、成人したてに見えないこともない。

 Fランクの仕事を地道にやるからいいけど! 夏休み中だし。
 領地内はハウスさんの魔力が行き渡っているし、後ろの山は今やシュシュ族が守っている。ってことで、この辺りでは魔物が出ることはない。

 魔物……そう思いを馳せ、まさか瘴気を体内に溜めるために作られた存在だったなんてと気持ちが暗くなる。
 そう知ってしまうと、心苦しい。そう思いながら容赦無く倒すわたし。この矛盾っぷりどうよと思いながら、だからもふもふ軍団とはいっぱい仲良くしようと思う。

 魔物討伐の依頼があったのはモロールの西側の森だ。ダンジョンではなく、野良の魔物は久しぶりだ。
 対象はカモミンという植物の魔物。
 花に擬態していて、近づいてきた獣や鳥、それから人などがくるとツルを伸ばして巻きついて動けなくし、養分にするそうだ。
 ずいぶん気の長い魔物だ。その性質から、ひとり以上での討伐が望ましいみたい。
 わたしは一人だけど、もふさまも、もふもふ軍団もいるから、ちょうどいいだろう。っていうか、ガーシがいる。薬草とりでも護衛してもらっているので、本当に申し訳ない。今日はまだモロールまで移動するからいいのかな。
 ガーシはもふもふ軍団のことも知っているけど、なにも言わない。
 隠れたところで見守っていてくれて、護衛がいるのをわからせた方がいいところでは姿を見せる。お調子者かと思っていたけど、それだけではなく、そして護衛としてもかなり腕が立つと思う。

 モロールに向かってい歩いていると、ガーシが走り寄ってきた。

「いち姫、今日の依頼受けたのは、ギルドに報告したか?」

「当たり前じゃない」

 ガーシにそんな基本的なことを聞かれて、わたしはむくれた。
 双子兄と一緒じゃなくても、わたし一人でもできるわよ、それくらい。
 ガーシは笑う。

「そんなほっぺ膨らませて怒るなって。聞いただけじゃないか」

「そういえば、昨日もだけど、シモーネはどうしたの?」

 シモーネもしばらくわたしの護衛って言ってたのに。

「今訓練に出てます」

 ガーシはお仕事モードで真面目に言った。

「そうなのね」

 そっか、と頷く。
 わたしの経験値積みだから、ふたりも護衛はいらないんだけどさ。

「今日はモロールの西の森でしたね?」

「ええ、そうよ」

「カモミンを何体ですか?」

「ええと」

 わたしは依頼書をバッグから出した。
 目を走らせてからガーシを見上げれば、あらぬ方を見ていた。

「ええと、5体よ。ガーシはカモミンを見たことある?」

「もさもさした植物だそうですよ」

 見たことはないらしい。

「坊ちゃんたちと一緒じゃないと不安ですかい?」

「まさか。わたし、ちゃんと強いわ」

「はいはい。いち姫の強さは知ってますよ。いち姫。この速度だと到着するのに昼過ぎますよ? ちょっと運ばせてください」

 え?
 ガーシがわたしを抱き上げる。

「走りますよ」

 ええ?
 ガーシはお荷物のわたしをものともせず、すごい勢いで走り出した。
 もふもふ軍団の入ったリュックを背負ったもふさまが、後を追いかけてくる。
 やっと止まった時には、モロールの街へ入るための列に並んでいた。

「ちょっと、ガーシ、モロールの中じゃなくて、モロールの西の森だってば」

「腹が空きました。食事をしてからにしましょう」

 もーー。
 おろしてもらう。
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