プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
729 / 799
16章 ゴールデン・ロード

第729話 力をつけよう<前編>

しおりを挟む
 夏休みはダンジョン三昧になりそうだなー。

 今日も今日とて、シンシアダンジョンを訪れている。
 気を抜くつもりはないけれど、今日は一昨日のより戦闘能力が高い人たちなので、安心感が違う。みんな、もふもふ軍団のことも知っているから、参加してもらっているしね。

 ブライがロックゴーレムに火魔法を放ったけど、それぐらいじゃゴーレムは怯まない。っていうか、火魔法は効いてないような。
 もふもふ軍団が今日のリーダーであるアダムの顔を、チラチラと見ている。

「ブライ、避けろ」

 アダムが指示を出してから、もふもふ軍団に首を振った。
 ブライとロックゴーレムでは相性が悪い。一気に方をつけようと思ったのだろう。
 レオとクイが、ロックゴーレムの身体を足場にして登っていく。
 肩にたどり着いたところで、レオが顔を蹴り上げ、クイが天辺に雷を落とした。

 ゴーレムが衝撃を受けたところで、アリがゴーレムを氷漬けにした。ベアとアオは足を攻撃している。最後にもふさまが、凍ったゴーレムの首に蹴りを入れると、ゴーレムはバラバラになって崩れてくる。崩落が始まり、落ちてくる岩に慌てたわたしを、岩がこないところまでロビ兄が抱えて避難してくれた。ああ、びっくりした。
 わたし以外は各自逃げている。みんな怪我もしてなさそうだ。

「スゲー、金塊じゃん」

 土埃がおさまれば、もふもふ軍団に紛れてブライがドロップ品を見に行っている。

「リーダー、休憩にしないか? リーが疲れたみたいだ」

 アダムにちろっと見られた。

「そうですね、お昼にしましょうか。セーフティースペースに移動しましょう」

 わたしたちはすぐにセーフティースペースに向かった。下ろしてと言ったんだけど、ロビ兄に運ばれてしまった。
 ああ、でも家族とではなく、ダンジョンに日数をそんなあけずってのはキツいかも。一昨日のは班のリーダーだったこともあり、緊張していたからな。もちろん今日だってダンジョンだもの、気を引き締めて参加はしているけど。
 家族となら、わたしのペースでいけるので楽なのだが、人に合わせると物凄く疲れる。こんなんじゃダメだな。



 一昨日は、D組恒例のダンジョン攻略だった。
 1年生の時に行ったシンシアダンジョン。セーフティースペースに魔物が入ってくる珍事が起こった。赤い目をした不気味な強い魔物。トラウマになってもおかしくない状況だったのに、それはダンジョンに挑む時に気持ちを引き締める材料にはなっても、怖いから行かないという選択肢にはならなかった。

 強くなりたいという気持ち、腕試し、それから1番の理由は魔石やドロップ品。長い休みの前に何日か王都に泊まり、シンシアダンジョンを攻略する。家族にお土産を買って帰れるので、D組のほとんどの子が参加している。どうしても用事がある時だけ行かない感じだ。
 去年の途中まではフォンタナ家に協力をしてもらったけれど、みんな割と力をつけたので、ロビ兄とアラ兄、もふさま、そしてわたしの護衛であるガーシがいれば問題ないだろうとみなされ、各休みの次の日はダンジョンに行っている。
 みんなかなり力をつけて、最初ダンジョンが苦手だったダリアでさえ、ひとりで魔物を狩れるようになっている。
 ダンジョンに行くための条件は引き継いでいて、みんなダンジョンに行きたいがために魔法戦の授業に臨んでいたし、冒険者ギルドにも入ったりした。無理している子はいないか心配だったんだけど、家にお土産を持って帰れるのはテンションが上がることらしく、みんな頑張っている。

 D組では6、7階まで上がることが多い。
 今日の生徒会メンバーの時は12階まで来られる。
 生徒会メンバー、5年生の男子のみだけどね。プラス、アダムにロビ兄とアラ兄とわたし、もふさまともふもふ軍団だ。
 D組で来る時は、もふもふ軍団は自由に開放だ。みんな適当にダンジョンを楽しんで、夕方になると戻ってくる。こちらも魔石やドロップ品が凄い。もふさまはわたしと一緒にいてもらって、班の子たちのフォローを一緒にしてもらっている。
 自由に戦えてないのはもふさまだけなので、今日はもふさまの解禁日。好きに暴れてくれていいと伝え済み。もふさまがわたしのガードに入らない時は、大体ロビ兄がわたしをフォローしてくれる。

 生徒会メンバーとアダムは、元々能力が高かったな。
 D組でダンジョンに行くようになると、ロサから打診があったのだ。
 世界の終焉について信じているわけではない。でももしかしたら、何かがあるかもしれない。だから、できるだけ力をつけておきたい。そう思っていたようだ。
 うちのクラスでダンジョンに潜っているのがわかると、同じように自分たちも行ってみたいという。それで父さまたちにも相談して、最初はクラスの時と同じようにフォンタナ家の協力を仰いで行った。
 ロサには護衛がついていたけれど、対魔物になると、フォンタナ家の方が軍配があがる。でもフォローがいったのも最初の3回だけで、このメンバーなら大丈夫だとお墨付きをもらう。頭脳戦だけに向いてそうなダニエルでさえ、強かった。
 ルシオは剣の攻撃は向いてないみたいだけど、神力で一発で倒したりする。

「今日のお昼はなんでちか?」

 首にアオが飛びついてきた。
 びっくりしたー。
 アオを撫でると、肩にアリとクイが登ってくる。

『ご飯はなんだ?』

『ご飯はなあに?』

「それは開けてのお楽しみ! お弁当を作ってきたんだ」

『弁当か?』

「あ、アリ、氷出してくれる? みんなの飲み物に入れたいんだ」

『いいぞ』

 アリは快く用意したお皿に氷を出してくれた。
 これで冷たい飲み物が飲める。

 おにぎり定食にサンドイッチ。わたしとエリンと母さまとで拵えたものだ。
 めちゃくちゃ炭水化物。でも、ダンジョン攻略の時はこういうのが喜ばれるのだ。
 定食には唐揚げもどきと甘い卵焼き、ポテサラとお漬物と野菜の煮しめが入っている。
 サンドイッチは少なめだ。
 スープは丸ネギとトマトンを入れたお味噌汁だ。夏はこれがさっぱりとしていていい。
 冷やした紅茶を持ってきたから、これに氷を入れてっと。
 デザートはプラムとロサの好きな素朴なクッキーだ。

 シートを広げてもらって、そこに各自のお弁当を出していく。
 もちろんデザートもだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

【完結・短編】婚約破棄された悪役令嬢は、隣国でもふもふの息子と旦那様を手に入れる

未知香
恋愛
 フィリーナは、婚約者の護衛に突き飛ばされここが前世の乙女ゲームの世界であることに気が付いた。  ……そして、今まさに断罪されている悪役令嬢だった。  婚約者は憎しみを込めた目でフィリーナを見て、婚約破棄を告げた。  ヒロインであろう彼女は、おびえるように婚約者の腕に顔をくっつけて、勝ち誇ったように唇をゆがめた。  ……ああ、はめられた。  断罪された悪役令嬢が、婚約破棄され嫁がされた獣人の国で、可愛い息子に気に入られ、素敵な旦那様と家族みなで幸せになる話です。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

処理中です...