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15章 あなたとわたし
第675話 彼女のはかりごと⑩いいなぁ
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「そうやって2年ぐらい経った頃だったか、ある町で悪い女に引っかかってしまったんです」
「悪い女?」
「ええ。優しそうに見えました。父の仕事中、あたくしの面倒をみてくれて。でも父と結婚したとたん本性をあらわした。あたくしが邪魔だと。あたくしのせいで父は幸せになれないと、嫌がらせをされました。そしてやってもないことで、悪さをしたと怒られるようになり……」
どこかで聞いたことのあるような話だと、そっと思った。
「父はそんなことをするはずはないと最初は信じてくれましたが、女に子供ができたとたん、あたくしの心根を治さなくてはと、打たれるようになりました。それで、家を出たんです」
アイラはなんでもないことのように言う。
「ある町で声をかけられました。亡くなった母の幼い頃にそっくりだったからって。母の同郷の方でした。その方に呪術を習って、力を得たんです」
そうにっこりと笑った。
「……おじさんが亡くなったと、噂で聞いたの?」
わたしが尋ねると、アイラはいいえとまた笑って、その話を終わらせる。
「あたくしの昔話なんて、面白くもなんともなかったでしょう? 次の機会にでも、リディアさまのお話を聞かせてください。フランツさまとなぜ別れてしまったのですか? 聞きたいです」
傷口に塩を塗ってくるなぁ。
「あ、噂で聞きましたけど、フランツさまが前バイエルン候のご子息だって本当ですか?」
「そんなわけないじゃない」
わたしはすぐに否定した。
「噂はただの噂かぁ。では、リディアさまがメロディー嬢を唆したと言うのは? ここだけの話にしますから、本当のことを教えてください!」
さっきはコーデリア嬢と言ってたのに、メロディー嬢に戻った。
「わたしはメロディー嬢を唆したりしていないわ」
「あはは、ですよねー。でも、リディアさまは12歳にして、フランツさま、それから第1王子殿下、第2王子殿下と婚約話が出て、実際仲がよくて。王子さまと結婚されたら、妃殿下ですよー。高価なドレスを毎日纏って、毎日おいしいものを食べて、みんなにかしずかれて……」
アイラは王宮の暮らしに夢があるらしく、自分の想像も交えた〝憧れ〟をなぞっていった。なげー。夢いっぱいだな。
ロサやアダムと話しているからか、わたしには王宮暮らしは窮屈に感じる。それに高価なものを身に纏うのに、対価としていっぱいの犠牲を払っている。誰かの〝憧れ〟を身に纏い、幻想を壊さないためにも、彼らはいつも努力している。王族は決して犠牲や努力を見せないようにするけれど……、それが上に立つもののつとめなんだろうけど……、そしてアイラがこれだけ憧れを並べ続けられるのはそれが成功しているってことなんだろうけど……。わたしは手放しにいいなとは思えない。
「素敵ですよねー。そして隣にはあんなにかっこいい王子殿下がいて優しくしてもらって……。一国の王子さまと恋仲なんてすごいことですよ。いいなぁ、リディアさま」
夢見るように言った。
わたしはそれに答えず、うとうとして眠りについたフリをした。
「あら、お眠りになったのね」
つまらなそうに言って、部屋を出て行った。レオもついて行った。
パタンと扉が閉まってから、わたしはのそのそと起き上がる。
もふさまが顔をあげた。
『リディア、クイが来た』
「クイが?」
アリとクイはメラノ公についているはずだ。
もふさまが窓に駆け寄ったので、わたしも急ぐ。クイの姿が見えたので、窓を開ける。
クイが入ってきた。
「クイ、どうしたの?」
ギュッと抱きしめて、頭を撫でる。
『なみなみじぃじはぺしゃんこ公と繋がってた!』
「ぺ、ぺしゃんこ公?」
誰だそれは……。
『えらそー。みんなぺしゃんこ、ぺしゃんこ言ってたぞ』
ぺしゃんこって本人に言ってたの?
『なみなみじぃじと親戚って言ってたぞ』
メラノ公と親戚ってことは……王位継承権を持つ、あの法の改正案を出したペトリス公? ペトリス=ぺしゃんこね、〝ぺ〟しかあってないけど、〝ぺ〟を強くいうところが同じなのか? なるほど!
『なみなみじぃじはアリに任せて、ぺしゃんこのところに行ってたんだ。家の中を隅々まで見たら、リーが嫌いなあの女がいた。眠ってる。起きない。呪術師の家で見た何人かも一緒にいた』
「全員繋がってたんだ……」
ペトリス公、メラノ公爵、呪術師の集団、グルだったんだ。
『繋がってるけど、繋がってないところもある!』
「え?」
クイは賢かった。
話ぶりからして、ペトリス公がメラノ公爵に話すことと、他の貴族それから呪術師に話すことが違っていることに気づいた。
メラノ公と話すときは、味方貴族の根回し、それから武器や武力勢の調達、それから今の王家がどれだけ落ちぶれたものになったかをどう民衆に知らせていくかの話をしている。……それって謀反の準備って気がする。
一方呪術師には、魂乗っ取りの算段を詰めている。
現在ペトリス公は陛下のご機嫌うかがいにきているようだ。それに便乗してお城にきて、途中の報告に来てくれた。そのまままた、ペトリス公についていくというから、危険なんじゃ?と心配になったけど、クイは言った。
『早くこれを終わらせて、ハウスに帰ろう! それでいっぱいダンジョンに行こう』
わたしは頷いて、気をつけてと送り出した。
そして急ぎ、クイから聞いたことを書いて、アダムに伝達魔法を送った。
なんとなく、ペトリス公が魂乗っ取り、そして謀反の方にも加担している気がする。
「悪い女?」
「ええ。優しそうに見えました。父の仕事中、あたくしの面倒をみてくれて。でも父と結婚したとたん本性をあらわした。あたくしが邪魔だと。あたくしのせいで父は幸せになれないと、嫌がらせをされました。そしてやってもないことで、悪さをしたと怒られるようになり……」
どこかで聞いたことのあるような話だと、そっと思った。
「父はそんなことをするはずはないと最初は信じてくれましたが、女に子供ができたとたん、あたくしの心根を治さなくてはと、打たれるようになりました。それで、家を出たんです」
アイラはなんでもないことのように言う。
「ある町で声をかけられました。亡くなった母の幼い頃にそっくりだったからって。母の同郷の方でした。その方に呪術を習って、力を得たんです」
そうにっこりと笑った。
「……おじさんが亡くなったと、噂で聞いたの?」
わたしが尋ねると、アイラはいいえとまた笑って、その話を終わらせる。
「あたくしの昔話なんて、面白くもなんともなかったでしょう? 次の機会にでも、リディアさまのお話を聞かせてください。フランツさまとなぜ別れてしまったのですか? 聞きたいです」
傷口に塩を塗ってくるなぁ。
「あ、噂で聞きましたけど、フランツさまが前バイエルン候のご子息だって本当ですか?」
「そんなわけないじゃない」
わたしはすぐに否定した。
「噂はただの噂かぁ。では、リディアさまがメロディー嬢を唆したと言うのは? ここだけの話にしますから、本当のことを教えてください!」
さっきはコーデリア嬢と言ってたのに、メロディー嬢に戻った。
「わたしはメロディー嬢を唆したりしていないわ」
「あはは、ですよねー。でも、リディアさまは12歳にして、フランツさま、それから第1王子殿下、第2王子殿下と婚約話が出て、実際仲がよくて。王子さまと結婚されたら、妃殿下ですよー。高価なドレスを毎日纏って、毎日おいしいものを食べて、みんなにかしずかれて……」
アイラは王宮の暮らしに夢があるらしく、自分の想像も交えた〝憧れ〟をなぞっていった。なげー。夢いっぱいだな。
ロサやアダムと話しているからか、わたしには王宮暮らしは窮屈に感じる。それに高価なものを身に纏うのに、対価としていっぱいの犠牲を払っている。誰かの〝憧れ〟を身に纏い、幻想を壊さないためにも、彼らはいつも努力している。王族は決して犠牲や努力を見せないようにするけれど……、それが上に立つもののつとめなんだろうけど……、そしてアイラがこれだけ憧れを並べ続けられるのはそれが成功しているってことなんだろうけど……。わたしは手放しにいいなとは思えない。
「素敵ですよねー。そして隣にはあんなにかっこいい王子殿下がいて優しくしてもらって……。一国の王子さまと恋仲なんてすごいことですよ。いいなぁ、リディアさま」
夢見るように言った。
わたしはそれに答えず、うとうとして眠りについたフリをした。
「あら、お眠りになったのね」
つまらなそうに言って、部屋を出て行った。レオもついて行った。
パタンと扉が閉まってから、わたしはのそのそと起き上がる。
もふさまが顔をあげた。
『リディア、クイが来た』
「クイが?」
アリとクイはメラノ公についているはずだ。
もふさまが窓に駆け寄ったので、わたしも急ぐ。クイの姿が見えたので、窓を開ける。
クイが入ってきた。
「クイ、どうしたの?」
ギュッと抱きしめて、頭を撫でる。
『なみなみじぃじはぺしゃんこ公と繋がってた!』
「ぺ、ぺしゃんこ公?」
誰だそれは……。
『えらそー。みんなぺしゃんこ、ぺしゃんこ言ってたぞ』
ぺしゃんこって本人に言ってたの?
『なみなみじぃじと親戚って言ってたぞ』
メラノ公と親戚ってことは……王位継承権を持つ、あの法の改正案を出したペトリス公? ペトリス=ぺしゃんこね、〝ぺ〟しかあってないけど、〝ぺ〟を強くいうところが同じなのか? なるほど!
『なみなみじぃじはアリに任せて、ぺしゃんこのところに行ってたんだ。家の中を隅々まで見たら、リーが嫌いなあの女がいた。眠ってる。起きない。呪術師の家で見た何人かも一緒にいた』
「全員繋がってたんだ……」
ペトリス公、メラノ公爵、呪術師の集団、グルだったんだ。
『繋がってるけど、繋がってないところもある!』
「え?」
クイは賢かった。
話ぶりからして、ペトリス公がメラノ公爵に話すことと、他の貴族それから呪術師に話すことが違っていることに気づいた。
メラノ公と話すときは、味方貴族の根回し、それから武器や武力勢の調達、それから今の王家がどれだけ落ちぶれたものになったかをどう民衆に知らせていくかの話をしている。……それって謀反の準備って気がする。
一方呪術師には、魂乗っ取りの算段を詰めている。
現在ペトリス公は陛下のご機嫌うかがいにきているようだ。それに便乗してお城にきて、途中の報告に来てくれた。そのまままた、ペトリス公についていくというから、危険なんじゃ?と心配になったけど、クイは言った。
『早くこれを終わらせて、ハウスに帰ろう! それでいっぱいダンジョンに行こう』
わたしは頷いて、気をつけてと送り出した。
そして急ぎ、クイから聞いたことを書いて、アダムに伝達魔法を送った。
なんとなく、ペトリス公が魂乗っ取り、そして謀反の方にも加担している気がする。
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