プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
663 / 736
15章 あなたとわたし

第663話 トルマリンの懺悔②呪術を編んだ人

しおりを挟む
「トルマリンよ、其方は今呪術が使えないのだったな。呪術師は見ただけで、魔力量などがわかるのか?」

 アダムはトルマリンから、あまり知られていない呪術師の情報を得るつもりのようだ。
 彼はわたしから目を外し、アダムに答える。

「人によりけりですね。わたしは魔力のことも、ある程度ならわかります。
 呪術師でしたら、魔力のことはわからないとしても、呪術の波動は独特ゆえ、術の残滓はわかると思います」

 そうか、魔力とはまた違う視点でみるものなんだね、呪術というのは。
 でもそっか、扱うのが〝魔力〟ではなく〝瘴気〟なんだものね。

「今のリディアの状態はどう見える?」

「そうですね……枯渇というほどではありませんが、魔力が十分とは思えません。それから、魔力を移した瘴気が、お嬢さまに悪い影響を与えているようには見えません。赤の三つ目氏は優秀なんですね。全くその残滓が見えません」

 どきっとする。
 本当に呪術をかけてもらったわけじゃないから、残滓がなくて当然だ。
 
「リディアや、お遣いさまのこと。その他なんでもいい、何か気づくことはあるか?」

「聖なる方の遣いのお力はすごいですね。光に満ちていて、その他が霞むほどです」

「他の術師もそう感じるものなのか?」

「亡くなった私のお師匠さまなんかは、しっかりと見える方だったようですが、現在は見える方は少ないのかもしれません。こうして術を成功させた三つ目氏も、それからアイリーンさんも、全く眩しそうにしていませんでしたから」

 もふさまの出している気で、もふもふ軍団のオーラが分かりにくくなってるのかもしれないな。ぬいぐるみ防御は解いているけれど、小さくなっているしね。

「赤の三つ目は、移した魔力が馴染むように、解呪は明日にした方がいいというのだが、お前はどう見る?」

 トルマリン氏は、ことさら指を激しく動かす。

「……残滓が見えないぐらいですから……、解呪しても問題ないと思いますが、術を施した三つ目氏がそうおっしゃるのなら、そうした方がいいと思います」

 よし、言質を取った。

「……トルマリンさん」

 わたしはかすれた声を絞り出す。
 彼はあからさまにビクッとした。

「は、はい」

「あなたにお話があります。明日の朝一番に、秘密裏にここでお会いしたいです」

 わたしはすがるように、アダムを見て、手を握っていてくれるロサの手を握り返す。

「トルマリン、リディアの願いを叶えてくれるか?」

「は、はい」

 トルマリン氏は場の雰囲気にのまれたふうに装っているけれど、そうではないのは見て取れた。

「では、使いをやるので、明日頼む。でも口外はしないでほしい」

 アダムがそういうと、覚悟を決めた顔になり、トルマリン氏は頷いた。
 そしてロサを置いて、アダムはトルマリン氏と部屋を出て行った。



 わたしたちが警戒していないことを示すために、地下の結界の中ではなく、城に泊まった。わたしは動かさない方がいい設定となっているしね。
 アダムやロサも隣の部屋だったし、もふさまと一緒だ。部屋の外では衛兵に守られ。昨晩は何事も起こらなかったようだ。
 手早く朝ごはんを食べ終え、トルマリン氏を呼んでもらう。
 アダムもロサも隣の部屋にいるけれど、わたしはもふさまとトルマリン氏とだけにしてもらった。


 ベッドの上で起き上がる。
 昨日、わたしを見たあたりから、ちょっと様子が変だった。
 あのときには気づいたんだろう。トルマリン氏は本当に優秀な呪術師だったんだ。
 わたしの中にある瘴気が自分の術の残滓か、彼にかかっている痒みの戒めが、わたしのした何かだと気づいたんだろう。

「来てくださってありがとうございます。ベッドの中からですみません」

 彼は短くいいえと言って、指を激しく動かした。

 この人が、母さまを呪い殺す、呪術を編んだ人……。
 ……そういうことをした人と認識しただけで、それ以上の感情は湧き上がらなかった。そこはほっとする。

「7年前のことです。……家族が呪いを受けました」

 わたしはゆっくりと息を吸い込んだ。

「最初は疲れているように見えたんです。それが起き上がっているのが辛そうになり、ベッドから起き上がれなくなり……顔色が白いを通り越して土気色になったときは、ただ恐ろしくて、叫び出しそうになりました」

 どうして7年も経っているのに、母さまの土気色の顔を、忘れられないんだろう? この記憶は色褪せていかないのだろう?

「呪術というものは、呪いを返すと、依頼人に返ると聞きました。そのときに思いました。依頼した人が元凶ではあるけれど、術を作った呪術師も罰を受けるべきだと」

 震えてくる手を、もふさまが舐めてくる。
 大丈夫だという合図に、もふさまの頭を撫でる。

「わたしの授かったギフトで、わたしは術師にくだる罰をのぞみました。二度と呪術を使うことができないように。呪術を使おうとすると、身体中が痒くなってとても術に集中できなくなればいいと。
 殿下たちから、あなたが今回のことの褒美に、わたしの父と母に会いたいと言っていると聞きました。そして、あなたからはわたしのギフトの残滓を感じます」

 彼は捨てられた子犬のような目を、わたしに向けた。

「あなたは、父と母に会い、何をいうつもりなのですか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

隠れて物件探してるのがバレたらルームシェアしてる親友に押し倒されましたが

槿 資紀
BL
 どこにでもいる平凡な大学生、ナオキは、完璧超人の親友、御澤とルームシェアをしている。  昔から御澤に片想いをし続けているナオキは、親友として御澤の人生に存在できるよう、恋心を押し隠し、努力を続けてきた。  しかし、大学に入ってからしばらくして、御澤に恋人らしき影が見え隠れするように。  御澤に恋人ができた時点で、御澤との共同生活はご破算だと覚悟したナオキは、隠れてひとり暮らし用の物件を探し始める。  しかし、ある日、御澤に呼び出されて早めに家に帰りつくと、何やらお怒りの様子で物件資料をダイニングテーブルに広げている御澤の姿があって――――――――――。

【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」  高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。  この婚約破棄は数十分前に知ったこと。  きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ! 「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」  だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。 「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」 「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」 「憎いねこの色男!」  ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。 「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」 「女泣かせたぁこのことだね!」 「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」 「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」  さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。 設定はふわっと。 『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。

ティアナの王城事件簿〜ホロゥ(と変わり者公爵)を従え謎を追え!!〜

今泉 香耶
ファンタジー
「今日も元気に切るわよ〜!」 男爵令嬢ならぬ剣捌きで白い霊体をバッサバッサと切り倒すティアナは、神託を授かる聖女だ。そんなある日、美形の変わり者公爵マリウスに止められる。 「ヴァイス・ホロゥを全部祓われると困るんだよね」 マリウスは白い霊体(ホロゥ)を使って、とある事件の謎を探ってるのだという。 協力を求めるマリウスに、ちょうど聖女の威光目当ての求婚にうんざりしていたティアナは協力する代わりに仮の婚約者になってくれと頼む。 そんな2人は、マリウスが追っていた事件を解決しようとホロゥを使って奔走するが―――!? ◆第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしております。投票いただけますと幸いです……!

婚約破棄!? ならわかっているよね?

Giovenassi
恋愛
突然の理不尽な婚約破棄などゆるされるわけがないっ!

転生悪役令嬢の考察。

saito
恋愛
転生悪役令嬢とは何なのかを考える転生悪役令嬢。 ご感想頂けるととても励みになります。

異世界での監禁デスゲームが、思っていたものとなんか違った

天白
BL
巻き込まれ事故で異世界に転移した主人公が、どこかで見たことがあるような監禁デスゲームに強制参加させられ、えっちなお題を受けさせられていくお話。 【登場人物紹介】 ・スグル…聖者として異世界に召喚されたミヤビの兄。主人公。ごくごく普通の人間の男性。二十一歳。ややオタク。小食で小柄な体型をしている。黒髪黒目の日本人。眼鏡っ子。弟が異世界へ召喚される最中に巻き込まれた可哀想な人。元の世界に帰りたい。本名は釘岡逸。 ・ミヤビ…スグルの弟。人間の男性で、十九歳。スグル同様の日本人だが、兄よりも身長が高く日本人離れの体格をしている男前。聖者。茶髪に黒目。常日頃からスグルを見下しており、気に入らないことがあるたびに力づくで言うことを聞かせている。自信家。本名は釘岡雅。 ・セル…異世界の男性。人間。職業は国に仕える最高位の騎士。魔法は少々扱うことができるが、騎士なので剣技が得意。身長は二メートル近くある。青髪青目。一見、厳格そうな性格に見えるが、割と優しい。小動物(リス)を家で飼っている。 ・ルイス…異世界の男性。エルフ。職業は国に仕える最高位の魔術師。詠唱なく魔法を使うことができる。体術はあまり得意ではない。着痩せするタイプで当たり前のように腹筋が割れている。銀髪銀目。一見、優しそうな性格に見えるが、結構腹黒。好きな子は苛めたくなるタイプ。 ・バイロン…異世界の男性。虎の獣人。職業は国に仕える最高位のビーストテイマー。魔法であらゆる獣を呼び出し使役することができる。三人の中で一番体格が大きく、筋肉質。体術も得意。ホワイトタイガーのように白と黒の毛色をしている。虎なので人間の子供からは恐れられているが、本人は人間が好き。人間が、好き。実は甘党。 ※監禁デスゲームとありますが、中身はあほエロBLです。主人公総受け。美形攻め。なんやかんやと巻き込まれて可哀想な主人公ですが、溺愛されるので大丈夫です。バトルシーンなし。ちょっとしたどんでん返しあり。ゆっくり更新。 (※)印のあるページはグロ注意。 ムーンライトノベルズ様でも公開中です。

処理中です...