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15章 あなたとわたし
第656話 vs呪術師⑧古狸
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「第1王子殿下にご挨拶しなさい」
「はい、メラノ公爵さま」
おっとりとした口調。彼女は続ける。
「第1王子殿下にご挨拶申し上げます。あたくしは呪術師のアイリーンと申します」
彼女は自分をアイリーンだと名乗った。
カーテシーをする。一応形になっていたが、幼い子供が習いたてのカーテシーを披露しているようで……アダムも微かに目を細めた。
よくよく彼女を見れば、面影はあるけれど、ずいぶん成長していた。一瞬見ただけで、よくわたしは彼女だとわかったなと思うぐらいには。
少し客観的に眺められるようになると、激しかった鼓動が収まってきた。
……そう。彼女が成長したように、わたしも5歳の時のわたしじゃない。
修羅場もいくつも潜ってきたじゃないか。
わたしはもう、アイラにただ翻弄され続けることはないはずだ。
「こちらは第2王子殿下だ」
「第2王子殿下にご挨拶申し上げます。アイリーンです」
うわっ、びっくりした。浮遊感に驚いた。ロサがもふさまを抱き上げたのか。そして用意されていたアダムの隣の椅子に座る。
アダムはソックスを撫でながら、早速アイラに尋ねた。
「アイリーン、優秀な呪術師だと聞いた。他のふたりからは昨日、我が婚約者の状態をどう見て、どんな術を考えるかを聞いている。お前はどうみる?」
「恐れながら申し上げます。できましたら、シュタインのお嬢さまに触れたいです」
アダムの眉がピクッとした。
わたしもギュッともふさまに抱きつく。触られるのはわたしじゃなくてソックスだろうけど、それもやめて欲しい。
「……優秀と聞いたが、それはメラノ公の間違いだったようだな。赤の三つ目も、トルマリンも、触れることもなくすぐさま感じ取ったぞ」
アイラの顔から、余裕の笑みが消える。
「お待ちくださいませ。より正確にみるには触れるのが一番いいのです。ですから、そう申し上げました。ですが、触れずともわかります」
「……では申してみよ」
わたしはほっと息を吐き出した。
「このお姿のシュタインのお嬢さまは、呪術にかかっているようには見えません……。残滓も見えないわ……」
「見えないのか?」
「あ、いえ。あの。残滓のようなものは感じるのです。けれど、そのお姿からは感じられず……でも残滓はあるのです」
わたしの残滓を感じ取っているのかしら?
呪術師として大成しているのかもしれない。でも受け答えなどは、まだ14、5の未熟な感じが前面に出ている。
「お前は、人型に戻すことはできるか?」
「はい、できます」
間髪入れず、躊躇いもなく、アイラは言った。
「どのような呪術を使うのだ?」
「人型の、シュタインのお嬢さまに戻る、呪術をかけるのです」
「術は高度なものになると危険と聞いた。人型に戻る、とは高度なものではないのか?」
「ああ、人型の設計図がわからないのではないか、というお話ですか?」
アダムは、少し首を斜めにしていたが、軽く頷く。
「それでしたら、問題ありません。確かに、全く別の何かを人型にする場合は人の設計図がないと危険かもしれませんが、お嬢さまは元は人でございましょう? 元の姿に戻る術式なら、危険はありませんわ」
「……では、それは依頼人と術者が同じ、アイリーンお前で、呪術をすることができるか?」
アイラはハッとした。アダムが自分の身に返ってくる術として、危険だと思わないか?と言われたことに気づいたのだろう。
「……依頼人と術をするものは違う方が、術の精度は上がります」
「トルマリン、そうなのか?」
アダムはトルマリンに尋ねる。
「……そういう者もいるようです。ただ、私は昨日申し上げました術が、リディアさまには一番いいと思います」
アダムは頷く。
「赤の三つ目、お前は依頼人と術師は違うべきだと思うか?」
「術師の腕によるのだと思います。トルマリン氏のおっしゃるように、私も元に戻す術は、リディアさまによくないように感じます」
「あなたたち、手を組んでいるのね?」
アイラがヒステリックな声をあげた。
「王族の前で、金切り声をあげるとは! 義兄上、この者は下げましょう」
アイラが息を呑んだ。
「殿下、申し訳ございません。こちらの者は術師として優秀でも、礼儀がなっていなかったようです。ですが、彼女が疑うのも、自分の考える呪術が1番適していると思っている証でありましょう。それもシュタイン嬢を思ってのこと。ここはいかがでしょう? やっと見つけた呪術師3人です。3人に任せてみては?」
わたしはアイラに術をかけられるのは、絶対嫌だ!
「もふさま、アダムにアイラに術をかけられるのは嫌だって言って!」
もふさまは隣へとジャンプして、ソックスに頬擦りした。ソックスは甘い声を出した。それから何か訴えるように、不機嫌そうな鳴き声を、あげた。
もふさまは、ソックスをひと舐めして宥め、チロリとアイラに目を走らせてから、アダムに耳打ちした。
ロサもメラノ公もその様子を固唾を飲んで見守っている。アイラは顔色をなくしていた。
アダムは息をつく。
「どうも我が婚約者は、新たな呪術師を信用ならないと思ったようだ」
その場にいた人たちが、ロサを含めて息を呑む。
ロサ以外、猫のわたしとは意思の疎通ができないと思っていたに違いない。けれど、お遣いさまを通すことにより可能なのかと、思い当たったのだろう。
「お待ちください。あたくしの話を聞いてください」
「発言の許しを得る前に、義兄上の前で。なんてことだ!」
ロサが非難する。
「メラノ公、あなたをたてていたが、彼女の振る舞いは目に余るものがある」
アダムとロサはアイラの無礼さを非難した。彼らは礼儀のことで声を荒げるような人たちではない。アイラを糾弾することで、新たな呪術師とメラノ公の結びつきがどれくらいかを確認しているんだろう。
「申し訳ございません。術師として優秀とは聞いたのですが、ここまでなっていないとは」
メラノ公は大きなため息をつく。
「ですが、殿下。話だけは聞いてみてはいかがでしょう? 大事なシュタイン家の令嬢を元の姿に戻すのに、間違いがあってはなりません。手持ちの案がいくつもあることは重要です。おふたりも、それが真理だとご存知でしょう?」
メラノ公は慈悲深い笑みを浮かべた。
「殿下、お遣いさまはなんとおっしゃったのですか? 仮の姿の令嬢は、アイリーンを見て、何を感じ取られたというのでしょう? 令嬢は実は人型に戻りたくないということはないですよね? 人型に戻れる機会を、自ら弾くなど、何をお考えなのか、聞かせていただきたい」
さすが古狸。猫のわたしのわがままだと、自らチャンスを潰すとはおかしいと、わたしに非難が集まるように風向きを変えた。
アダムもロサも渋めの表情だ。
「はい、メラノ公爵さま」
おっとりとした口調。彼女は続ける。
「第1王子殿下にご挨拶申し上げます。あたくしは呪術師のアイリーンと申します」
彼女は自分をアイリーンだと名乗った。
カーテシーをする。一応形になっていたが、幼い子供が習いたてのカーテシーを披露しているようで……アダムも微かに目を細めた。
よくよく彼女を見れば、面影はあるけれど、ずいぶん成長していた。一瞬見ただけで、よくわたしは彼女だとわかったなと思うぐらいには。
少し客観的に眺められるようになると、激しかった鼓動が収まってきた。
……そう。彼女が成長したように、わたしも5歳の時のわたしじゃない。
修羅場もいくつも潜ってきたじゃないか。
わたしはもう、アイラにただ翻弄され続けることはないはずだ。
「こちらは第2王子殿下だ」
「第2王子殿下にご挨拶申し上げます。アイリーンです」
うわっ、びっくりした。浮遊感に驚いた。ロサがもふさまを抱き上げたのか。そして用意されていたアダムの隣の椅子に座る。
アダムはソックスを撫でながら、早速アイラに尋ねた。
「アイリーン、優秀な呪術師だと聞いた。他のふたりからは昨日、我が婚約者の状態をどう見て、どんな術を考えるかを聞いている。お前はどうみる?」
「恐れながら申し上げます。できましたら、シュタインのお嬢さまに触れたいです」
アダムの眉がピクッとした。
わたしもギュッともふさまに抱きつく。触られるのはわたしじゃなくてソックスだろうけど、それもやめて欲しい。
「……優秀と聞いたが、それはメラノ公の間違いだったようだな。赤の三つ目も、トルマリンも、触れることもなくすぐさま感じ取ったぞ」
アイラの顔から、余裕の笑みが消える。
「お待ちくださいませ。より正確にみるには触れるのが一番いいのです。ですから、そう申し上げました。ですが、触れずともわかります」
「……では申してみよ」
わたしはほっと息を吐き出した。
「このお姿のシュタインのお嬢さまは、呪術にかかっているようには見えません……。残滓も見えないわ……」
「見えないのか?」
「あ、いえ。あの。残滓のようなものは感じるのです。けれど、そのお姿からは感じられず……でも残滓はあるのです」
わたしの残滓を感じ取っているのかしら?
呪術師として大成しているのかもしれない。でも受け答えなどは、まだ14、5の未熟な感じが前面に出ている。
「お前は、人型に戻すことはできるか?」
「はい、できます」
間髪入れず、躊躇いもなく、アイラは言った。
「どのような呪術を使うのだ?」
「人型の、シュタインのお嬢さまに戻る、呪術をかけるのです」
「術は高度なものになると危険と聞いた。人型に戻る、とは高度なものではないのか?」
「ああ、人型の設計図がわからないのではないか、というお話ですか?」
アダムは、少し首を斜めにしていたが、軽く頷く。
「それでしたら、問題ありません。確かに、全く別の何かを人型にする場合は人の設計図がないと危険かもしれませんが、お嬢さまは元は人でございましょう? 元の姿に戻る術式なら、危険はありませんわ」
「……では、それは依頼人と術者が同じ、アイリーンお前で、呪術をすることができるか?」
アイラはハッとした。アダムが自分の身に返ってくる術として、危険だと思わないか?と言われたことに気づいたのだろう。
「……依頼人と術をするものは違う方が、術の精度は上がります」
「トルマリン、そうなのか?」
アダムはトルマリンに尋ねる。
「……そういう者もいるようです。ただ、私は昨日申し上げました術が、リディアさまには一番いいと思います」
アダムは頷く。
「赤の三つ目、お前は依頼人と術師は違うべきだと思うか?」
「術師の腕によるのだと思います。トルマリン氏のおっしゃるように、私も元に戻す術は、リディアさまによくないように感じます」
「あなたたち、手を組んでいるのね?」
アイラがヒステリックな声をあげた。
「王族の前で、金切り声をあげるとは! 義兄上、この者は下げましょう」
アイラが息を呑んだ。
「殿下、申し訳ございません。こちらの者は術師として優秀でも、礼儀がなっていなかったようです。ですが、彼女が疑うのも、自分の考える呪術が1番適していると思っている証でありましょう。それもシュタイン嬢を思ってのこと。ここはいかがでしょう? やっと見つけた呪術師3人です。3人に任せてみては?」
わたしはアイラに術をかけられるのは、絶対嫌だ!
「もふさま、アダムにアイラに術をかけられるのは嫌だって言って!」
もふさまは隣へとジャンプして、ソックスに頬擦りした。ソックスは甘い声を出した。それから何か訴えるように、不機嫌そうな鳴き声を、あげた。
もふさまは、ソックスをひと舐めして宥め、チロリとアイラに目を走らせてから、アダムに耳打ちした。
ロサもメラノ公もその様子を固唾を飲んで見守っている。アイラは顔色をなくしていた。
アダムは息をつく。
「どうも我が婚約者は、新たな呪術師を信用ならないと思ったようだ」
その場にいた人たちが、ロサを含めて息を呑む。
ロサ以外、猫のわたしとは意思の疎通ができないと思っていたに違いない。けれど、お遣いさまを通すことにより可能なのかと、思い当たったのだろう。
「お待ちください。あたくしの話を聞いてください」
「発言の許しを得る前に、義兄上の前で。なんてことだ!」
ロサが非難する。
「メラノ公、あなたをたてていたが、彼女の振る舞いは目に余るものがある」
アダムとロサはアイラの無礼さを非難した。彼らは礼儀のことで声を荒げるような人たちではない。アイラを糾弾することで、新たな呪術師とメラノ公の結びつきがどれくらいかを確認しているんだろう。
「申し訳ございません。術師として優秀とは聞いたのですが、ここまでなっていないとは」
メラノ公は大きなため息をつく。
「ですが、殿下。話だけは聞いてみてはいかがでしょう? 大事なシュタイン家の令嬢を元の姿に戻すのに、間違いがあってはなりません。手持ちの案がいくつもあることは重要です。おふたりも、それが真理だとご存知でしょう?」
メラノ公は慈悲深い笑みを浮かべた。
「殿下、お遣いさまはなんとおっしゃったのですか? 仮の姿の令嬢は、アイリーンを見て、何を感じ取られたというのでしょう? 令嬢は実は人型に戻りたくないということはないですよね? 人型に戻れる機会を、自ら弾くなど、何をお考えなのか、聞かせていただきたい」
さすが古狸。猫のわたしのわがままだと、自らチャンスを潰すとはおかしいと、わたしに非難が集まるように風向きを変えた。
アダムもロサも渋めの表情だ。
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