プラス的 異世界の過ごし方

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15章 あなたとわたし

第654話 vs呪術師⑥あの頃から?

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『半分わかった』

「半分?」

「奴らはユオブリアに急ぎで向かうことになって、一緒についてきたでち。だから〝最後のツメ〟というのはわからなかったんでち」

 アオが眉を八の字にして、すまなそうに言った。

「ユオブリアに?」

 アリとクイが大きく頷いた。
 わたしたちは顔を見合わせた。

 メラノ公が呼んだ呪術師が、ピマシンの呪術師集団の動きと重なった。
 乗っ取り班の集団、メラノ公はそれかもしれない。

「その半分までを教えて!」

 わたしは意気込む。

『人によってかかる日数は違ってくるって!』

『まず、魔力を流し合うんだって』

『それで砕いた魔石を飲ませてた』

「身体に馴染むまで、かかる時間が人によって違うらしいでち」

『飲んでいるとぼーっとしてくる』

『言うこと聞くようになるんだよ』

 みんなが次々に情報を口にする。

『それで最後に魂を入れるらしいのですが、こちらにくる前に、最終段階に入れなかったようなので、そのままきたのですよ。だからそこまでしかわかりませんでした』

 ベアの言った事で、最後のツメがわからないと言った意味がわかった。

『リー、役に立った?』

『嬉しい?』

「すっごく、役にたつ! 嬉しい! みんなありがとう。危ないことなかった? 怪我とかしてない?」

「そんなヘマしないでち」

 みんな怪我もしていないようだ。
 乗っ取る方法は、魔力を流し合い、砕いた魔石を飲ませる。そしてぼーっとして言う事を聞かせられるようになったら、頃合いで、〝最後の何か〟をする。
 乗っ取りがある程度、時間のかかることでよかった。
 捕らえられ、無理やりその工程をとられたらアウトだけど、魔力を流し合わないようにする、用意された飲み物や食べ物は食べない、これがわかっているだけでも、ずいぶん違うだろう。


 次の日の午後は、ロサも交えて、新たな呪術師を含めた話し合い予定だったので、午前中は地下基地にロサたちを呼び出し、作戦会議をした。
 みんなにウチの子たちを紹介すると大興奮だ。小さい頃見たことのあるドラゴンがレオだとわかったみたいだ。
 ブライから〝お前隠し玉ありすぎ〟と真顔で言われた。
 みんな今はそれどころではないので、もふもふ軍団のことを追求しないことにしたようだ。
 乗っ取り方法の知っているところまで話すと、みんな感心した。もふもふ軍団の喜ぶこと。

 アダムがそちらは進展あったかと尋ねると、この間言っていた人たちと会いはしたが、別段おかしなところは見つからなかったと意気消沈している。

 でも土地買いの人たちが焦っていたのは、本当に謎だ。

「情報が出揃っていたとして、全くこっちは見えてないのにね」

「あの法案ぐらいしか見つけてないものな。それだって、法案は結局通ってないし。だからって外国の土地を買っていても……。何する気だったんだよな? 木を植えるって、メラノ公の農場みたく、果樹園にする気とか?」

「法案、3年前から動きがあったってことか。3年前から表沙汰になった事件を片っ端から繋げてみるか?」

「それいったら、7年前なんじゃん? だって、あのお茶会のキートン夫人と夫人の味方した貴族が狙われたんだからさ」

 ブライが軽い口調で言った。

「……確かに、そうだな。7年前にはもう始まってたんだ」

 ロサが低い声を出す。
 ブライがなぜか、やべって顔をする。

「あれは詐欺事件だったね?」

 アダムが確かめるように言う。

「っていうかさ、そう決まったわけでもないんじゃねーか? 俺らがそう思っているだけで。昔から練られてきたわけでもなく、とんでもない気の短い敵がいるだけかもしれないぜ?」

 ロサの表情を暗くしてしまったのが申し訳ないと思ったのか、ブライがまた明るい声を出した。

「気の短い……か。確かにね。そのとぼけた顔の人だっけ? その人の頓死、実は殺されたのだとしたら、とても気の短い人がいるってことだね」

 かわいい顔をして、ルシオが恐ろしいことをさらりと言った。

「うん、あの素早さは、7年前を彷彿させるね」

 みんなが、腕を組んで言った兄さまの方をみた。

「お嬢さまを攫ったドナモラ伯とコルヴィン男爵夫人。彼らは自殺に見せかけて全ての罪を負わされたんだろうな」

「あれ?」

 とダニエルが言った。

「どうした?」

 ブライが尋ねる。

「いや。……ドナモラ伯が事故にあってから、違う人格になったようだってあれ、まさか……」

 あ……。嘘。あの時、もうすでに?

「……似ているな。性急に事を起こしていることも。今はフランツに罪をなすりつけ、あの時はドナモラ伯とコルヴィン夫人に。よっぽど詐欺のことを調べられたくなかったんだ」

「性急なのは隠したいことがあるから? ……あの時、リディア嬢が拐われた。あれも不思議だったんだ。5歳の女の子をどうして拐う必要があるのか、と。リディア嬢、その時、君はドナモラ伯に探られている感じだったんだよね? 何を聞かれたの? 何を探られたの?」

「えっと……」

 記憶を辿る。人型になっていればよかった。トカゲだと思い出すのに時間がかかるのだ。

「お茶会の読み聞かせとは別に、イダボアの町の子に物語を聞いてもらったの。その物語を誰が考えたのか聞かれた」

「その物語ってどんな内容?」

 え? 働け、頭! えーーーっとえっと。

「花屋敷に住む心のきれいな女性が、そこが気に触る人に虐められるけど、周りのみんなが助けてくれて、困難を乗り越え、好きな人と一緒になる物語よ」

 あと何か聞かれた気がする。……そうだ。

「物語で意地悪な人に宝石を盗まれたとしたんだけれど、それをすごい事を考えついたねって言われた」

「宝石……?」

「そう言えば、コルヴィン夫人はあの時、キートン夫人がワンダ夫人に譲った宝石を持って、お茶会に乱入してきたんだったね」

「そうそう、バザーにあったとか言って」

 あれもあの宝石がキートン夫人のものだってわかる時点で、どうしてわかる?ってなるのに、あの人普通に持ってきたからね。亡くなった方だから、もう悪くも言いたくないけど。

「物語で使った〝盗まれた宝石〟という言葉に反応していた……キートン夫人はその譲った宝石以外に、本当に盗まれた物はなかったのか?」

 アダムが尋ねた。

「あの時、そんなことはおっしゃっていなかったよ」

 ロサが答える。
 アダムが真顔になる。

「キートン夫人が詐欺に遭っていたのは残念なことだと思うけど……。それが実は敵の落ち度で、結果、詐欺だったということに落ち着いただけだとしたら?」

「本当はあの時、もっと大きな犯罪に巻き込まれそうになっていたってことですか?」

 声をあげたロサに、アダムは頷いた。

「盗まれた宝石って言葉に反応していたのだとしたら、キートン夫人が宝石を盗まれたのではなくて、キートン夫人が盗まれた宝石を持っていたという話も考えられないか? 本当はそうなるはずだったとしたら?」

 みんな言葉をなくした。
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