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15章 あなたとわたし
第647話 協力者と思惑⑧同じ船
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兄さまは食事の準備をするためにキッチンに篭った。
ソックスはふわふわクッションの上でお昼寝中。
チャンス!と、ソファーで本を読むアダムに聞くことにした。
もふさまに通訳してもらう。
「アダムはトカゲが嫌いだったの?」
「え?」
アダムは意味がわからないという顔をした。
「だって、全く目を合わせようとしないじゃない」
「……それは。結局、君が命を狙われたのは、僕のせいのようなものだから」
あ、それか。
「アダム、わたしたちは今、同じ船に乗ってるの」
「同じ船??」
「そうだよ。乗り越えるべきことが同じでしょ。元婚約者がとんだ貶められ方してるのよ。アダムが、なんとかしないでどうするの?」
「君は面白いな。コーデリアのこと、もう許したの?」
「それとこれは話が別よ」
「べ、別なの?」
「そうよ」
「僕には女性の、そういった区別がよくわからないよ」
「大丈夫よ、わたしもよくわかってないもの」
「……わかってないの?」
ジト目で見られる。
「ノリよ。その時の雰囲気で!」
さらに嫌な目つきで見られる。
「……事態が深刻なんだもの、明るく行こうよ」
「……君、お気楽だねぇ」
「アダムもわたしになってみればわかるよ。呪いを回避できたのはいいけど、トカゲになるしさー。たった12歳で暗殺対象になったりさー。物語が親戚の後ろ盾を考慮してだとしても、多少は認められたと思ったら、それは元婚約者を追い込むためだったとかさー、酷くない、わたしの人生? 真面目に悩んでいたら身が持たないもん。敵が見つかったら、地味な嫌がらせをして溜飲を下すつもりよ」
アダムはなんとも言えない顔をした。ついでにもふさまも微妙な眉下げを見せる。
「わかったよ、君が十分な嫌がらせをできるよう、僕も頭を働かせる」
「頼んだわよ。と言っても、とぼけ顔が亡くなって糸が切れちゃったね」
「そうだね、君が呪いを回避した事実で、敵が釣れなかったっのは痛いな。手を変えないとだね」
「もう考えてあるんでしょ?」
アダムは軽く笑った。わたしは続ける。
「ガインの情報をそのまま信じるわけじゃないけど、敵の目的がメロディー嬢に乗り移ってアダムの婚約者に収まるってことなら、あの噂の持つ意味がしっくりくるものね」
「そうなんだ。あの噂は本当に何がしたいのかよくわからなかったからね。でもガゴチの若君の言う通りだとすれば……。
乗っ取りは、そこまで簡単にできることではなく、彼の言う通り接触することが必要なんだろう。そうじゃなければ、メロディー嬢を乗っ取った者が王室に入り込む必要はないからね。
ただの触れるような接触だったら、臣下や侍女、従僕なんかもできないことはない。でも、その者たちがやったら怪しまれるぐらいのことってのが予想される」
わたしは頷いた。まぁ、そこまで簡単にできることじゃなくてよかったよ。
〝物〟が媒体なんだろうけど、それも呪術のように、触れさせて後で回収してよりももっと直接的に使用しないとだと思われる。遠隔操作はできないみたいだもんね。
「敵はメロディー嬢が僕の婚約者に返り咲くことを望んでいる。だからその餌をぶら下げてみようかと思うんだ」
「餌を?」
「陛下から、呪術師を調べる許可をもらった。そのお目付役にメラノ公がいる。
特別捜査の班にだけある情報を流す。敵がそれを知っていたら、班の誰かが漏らしたことになる。彼が敵かどうかもわかることになるからね」
アダムの中では計画はある程度出来上がっているっぽい。
「僕は……皆の前ではいい子で、猫のリディア嬢を愛していると言うが、そんなのは建前だとするんだ」
「建前?」
「そう。陛下や王族に大人しく幽閉され生きると見せかけているだけで、腹の中では、猫と結婚なんて冗談だろって思っている、と。そうだな、ブレドと喧嘩してもいい。ブレドはそんなことをリディア嬢の前で言うなんてとでもいって同情的になる。僕と完全に敵対する」
ロサとアダムがお芝居で敵対するのね。
「そして次に敵を引っ張り出すのに、君を人に戻す儀式をでっち上げようと思うんだ」
「人に戻す儀式?」
「呪術師を見つけたとするんだ。そうだな信頼できる役者に立たせる。君を猫から人に戻して、僕が何を得ることにしようか……」
「そっか。わたしが人に戻ったら、わたしを乗っ取るとかも考えるのかな?」
「! そうか、その着眼点は僕になかった」
アダムがソファーから立ち上がった。
「君が人に戻ったら、君は僕と婚約している。わざわざ君を亡き者にして他の令嬢と婚約させ直すより、君をのっとる方が余程手早い。でも、君をまた危険に晒すことになる」
「長引く方が嫌だわ。いつまでも怯えて暮らすなんて。それに人型に戻りたいし。乗っ取ろうとするなら、その方法もわかって一石二鳥!」
「失敗したら、本当に乗っ取られるかもしれないよ?」
「……それは避けたいから、対策を練らないと。シールドを強化するとかどうかな……」
眠っていようが、気絶していようが、わたしの魂持ち出し禁止だし、誰かの魂が入ってくるのも禁止!
ジェインズ・ホーキンスさんの魅了をシールドが弾いたことから、いける気がするんだよね。
「君の、その自信ってどこからくるんだろう? みんなそこに惹かれるのかもしれないね」
バンと大きな音を立てて、ドアが開いた。
び、びっくりした。兄さまは音を立てるような人じゃないのに。
「失礼しました。手がすべって」
「君の保護者を説得する難関があったか……」
アダムが小さく声にした。
「僕が最初に考えたのは、呪術師を呼ぶとなれば、他の呪術師が名乗り出てくるんじゃないかと思ったんだよ。君の息の根をとめにね」
ど、どうしてそういう恐ろしいことを笑顔で言うかな?
ソックスはふわふわクッションの上でお昼寝中。
チャンス!と、ソファーで本を読むアダムに聞くことにした。
もふさまに通訳してもらう。
「アダムはトカゲが嫌いだったの?」
「え?」
アダムは意味がわからないという顔をした。
「だって、全く目を合わせようとしないじゃない」
「……それは。結局、君が命を狙われたのは、僕のせいのようなものだから」
あ、それか。
「アダム、わたしたちは今、同じ船に乗ってるの」
「同じ船??」
「そうだよ。乗り越えるべきことが同じでしょ。元婚約者がとんだ貶められ方してるのよ。アダムが、なんとかしないでどうするの?」
「君は面白いな。コーデリアのこと、もう許したの?」
「それとこれは話が別よ」
「べ、別なの?」
「そうよ」
「僕には女性の、そういった区別がよくわからないよ」
「大丈夫よ、わたしもよくわかってないもの」
「……わかってないの?」
ジト目で見られる。
「ノリよ。その時の雰囲気で!」
さらに嫌な目つきで見られる。
「……事態が深刻なんだもの、明るく行こうよ」
「……君、お気楽だねぇ」
「アダムもわたしになってみればわかるよ。呪いを回避できたのはいいけど、トカゲになるしさー。たった12歳で暗殺対象になったりさー。物語が親戚の後ろ盾を考慮してだとしても、多少は認められたと思ったら、それは元婚約者を追い込むためだったとかさー、酷くない、わたしの人生? 真面目に悩んでいたら身が持たないもん。敵が見つかったら、地味な嫌がらせをして溜飲を下すつもりよ」
アダムはなんとも言えない顔をした。ついでにもふさまも微妙な眉下げを見せる。
「わかったよ、君が十分な嫌がらせをできるよう、僕も頭を働かせる」
「頼んだわよ。と言っても、とぼけ顔が亡くなって糸が切れちゃったね」
「そうだね、君が呪いを回避した事実で、敵が釣れなかったっのは痛いな。手を変えないとだね」
「もう考えてあるんでしょ?」
アダムは軽く笑った。わたしは続ける。
「ガインの情報をそのまま信じるわけじゃないけど、敵の目的がメロディー嬢に乗り移ってアダムの婚約者に収まるってことなら、あの噂の持つ意味がしっくりくるものね」
「そうなんだ。あの噂は本当に何がしたいのかよくわからなかったからね。でもガゴチの若君の言う通りだとすれば……。
乗っ取りは、そこまで簡単にできることではなく、彼の言う通り接触することが必要なんだろう。そうじゃなければ、メロディー嬢を乗っ取った者が王室に入り込む必要はないからね。
ただの触れるような接触だったら、臣下や侍女、従僕なんかもできないことはない。でも、その者たちがやったら怪しまれるぐらいのことってのが予想される」
わたしは頷いた。まぁ、そこまで簡単にできることじゃなくてよかったよ。
〝物〟が媒体なんだろうけど、それも呪術のように、触れさせて後で回収してよりももっと直接的に使用しないとだと思われる。遠隔操作はできないみたいだもんね。
「敵はメロディー嬢が僕の婚約者に返り咲くことを望んでいる。だからその餌をぶら下げてみようかと思うんだ」
「餌を?」
「陛下から、呪術師を調べる許可をもらった。そのお目付役にメラノ公がいる。
特別捜査の班にだけある情報を流す。敵がそれを知っていたら、班の誰かが漏らしたことになる。彼が敵かどうかもわかることになるからね」
アダムの中では計画はある程度出来上がっているっぽい。
「僕は……皆の前ではいい子で、猫のリディア嬢を愛していると言うが、そんなのは建前だとするんだ」
「建前?」
「そう。陛下や王族に大人しく幽閉され生きると見せかけているだけで、腹の中では、猫と結婚なんて冗談だろって思っている、と。そうだな、ブレドと喧嘩してもいい。ブレドはそんなことをリディア嬢の前で言うなんてとでもいって同情的になる。僕と完全に敵対する」
ロサとアダムがお芝居で敵対するのね。
「そして次に敵を引っ張り出すのに、君を人に戻す儀式をでっち上げようと思うんだ」
「人に戻す儀式?」
「呪術師を見つけたとするんだ。そうだな信頼できる役者に立たせる。君を猫から人に戻して、僕が何を得ることにしようか……」
「そっか。わたしが人に戻ったら、わたしを乗っ取るとかも考えるのかな?」
「! そうか、その着眼点は僕になかった」
アダムがソファーから立ち上がった。
「君が人に戻ったら、君は僕と婚約している。わざわざ君を亡き者にして他の令嬢と婚約させ直すより、君をのっとる方が余程手早い。でも、君をまた危険に晒すことになる」
「長引く方が嫌だわ。いつまでも怯えて暮らすなんて。それに人型に戻りたいし。乗っ取ろうとするなら、その方法もわかって一石二鳥!」
「失敗したら、本当に乗っ取られるかもしれないよ?」
「……それは避けたいから、対策を練らないと。シールドを強化するとかどうかな……」
眠っていようが、気絶していようが、わたしの魂持ち出し禁止だし、誰かの魂が入ってくるのも禁止!
ジェインズ・ホーキンスさんの魅了をシールドが弾いたことから、いける気がするんだよね。
「君の、その自信ってどこからくるんだろう? みんなそこに惹かれるのかもしれないね」
バンと大きな音を立てて、ドアが開いた。
び、びっくりした。兄さまは音を立てるような人じゃないのに。
「失礼しました。手がすべって」
「君の保護者を説得する難関があったか……」
アダムが小さく声にした。
「僕が最初に考えたのは、呪術師を呼ぶとなれば、他の呪術師が名乗り出てくるんじゃないかと思ったんだよ。君の息の根をとめにね」
ど、どうしてそういう恐ろしいことを笑顔で言うかな?
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