プラス的 異世界の過ごし方

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15章 あなたとわたし

第646話 協力者と思惑⑦切れる糸

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 次の日、ロサたちがやってきて、第二回目の合同作戦会議をした。
 トカゲの姿を、目を見開いて見られた。
 特にブライに気に入られる。なんで?
 もふさまが翻訳の魔具を見せて、それでわたしの言葉を伝えるというと、みんな感動していた。

 ロサの袖口、いいなぁ。ちょうどいい隙間具合。それにフワフワの裏地がついている。

「お嬢さま、なりません!」

 いいなと思ったら、袖口に顔を突っ込んでいた。しまった。
 兄さまに掬われて、胸ポケットに入れられる。
 ここもあったかい。わたしはそこから顔を出した。

「そうか、暖かいところが好きなんだね、わたしの袖でもいいよ」

 うん、ちょっとホワホワが気持ちよかった。乗り気になると

「……なりません」

 兄さまに、駄目押しされた。
 ちっ。



 アダムは淡々とガインとの経緯、そして聞いたことを話した。
 諜報員の正体は、律儀に伝えずにいる。
 発表の時にあったことは、すでに伝えていたみたいだ。
 話し終えると、みんな息を呑んで、そして考え込む。

「なんてことだ」

「義兄上は信じたのですか?」

「符合するところだけ、な」

 ロサの問いかけに、アダムが答える。

「え、どーいうこと? 俺よくわかんねーんだけど!」

 ブライが焦ったように言った。

「ガゴチの若君の言うことが正しいとしたら、敵は王族の身体への乗っ取りを考えていて、それにリディア嬢が利用されたってことだよ」

「その利用ってのが呪いってこと? それも呪いって本当は変化じゃねーよな? 呪って殺されそうになったんだよな?」

 ブライ君、本人前にしているんだから、もうちょっと言葉を選んでよ。

「フランツが巻き込まれた一連のことも、同じなのかもしれないな」

「どういうことです?」

「巻き込むにしてもフランツ、そしてリディア嬢でなければ意味がないんだと思う」

「ふたりが婚約者だったから、関係性があって都合がよかったのかな?」

 ルシオが、かわいらしく小首を傾げる。
 それも不思議ではあるけれど……。やっぱり飲み込めないことがあって。
 わたしはもふさまに通訳してもらった。

「みんなは、あちらが焦っているのは、情報は実は出揃っていて、それに気づかれらた困るからだろうって言ってたでしょ? わたしはそこをもっと掘り下げて聞きたいわ」

 ダニエルは言葉を選びながら、慎重に話す。

「フランツが罪を着せられること。今の時点だと、土地買いの首謀者だ。何かそこで悪いことをしていることにするつもりだろうけど、土地買い自体はそう大して罪にはならない。名前を偽ったことに対してだけだ。ただそれがフランツがクラウスだとされると、元々犯罪者となるから、罪が重くなる。それから前バイエルン侯が何かしていたと真実味を増すとそんなところだ。犯罪者がやったのではなければ、本当に大した罪ではない。
 では、どうして大した罪でもないことを、急いで決着づけようとしているか。もっと大きな犯罪が見つかる前に、小さなものを見せて、これで終わりと納得させたいからだと、私たちは考えた」

「もっと大きな犯罪?」

「買った土地で途方もない悪いことをするつもりなら? でも取り締まられた時、そこは買ったユオブリアの貴族が裁かれる。13年前のバイエルン侯と同じようにね。そして私たちがいつ気づいてもおかしくないぐらい、情報は出揃っているんだ。それか気づきそうと思われる。だから焦っているとしか思えない」

 うーむ。そうか、なるほどね。

「ユオブリアは調べたのかな、その貴族の買われた土地で何が行われているのかを?」

「土地を耕していたそうだ。でもそこまでだった」

 土地を耕す……木を植えるって言ってたから、やっぱりそのつもりだったのかな?

「犯罪につながるような木か……」

 わたしが呟くと、それも、もふさまが通訳してくれた。

「それはないんじゃないか? だって、木は木だろ? 意思があるわけじゃないし」

 腕を組んで考えていたブライに言われる。
 わたしもちょっと無茶苦茶を言っている自覚があるので、それもブライにそう言われると、なんか心にグサっとくるんですけど!

「いつ気づかれるかわからない、それぐらい情報が出揃っている。それが繋がっていないだけ」

 ロサが考え込む。

「決め手がないものな。それでブレドたちはどう動くつもりなんだ?」

「なぜ罪を被せようとしているかはわかっていません。わかっているのは、フランツに罪を被せようと、動き出したということ。
 フランツに罪を被せようとしたのが、どの時点からかはわからないのですが、そこが要だと思うのです。それを探ります。具体的には、キリアン伯、フォークリング社、ヤーガン公に接触してみます」

「あのとぼけた顔の人に、動きはあった?」

 わたしはアダムに尋ねた。

「とぼけた顔?」

「呪われて亡くなったって言った人。あの人、誰?」

 アダムはクスリと笑った。

「ムサ・バガウティー。バガウティー伯の子息だ。バガウティーはエラダ伯の一派。エラダ伯が関わっていたとはな」

「エラダ伯は一昨年、前伯爵さまが突然亡くなってから継いだのだけど、それからメキメキ頭角を現して、派閥を形成していったんだ。バガウティー伯子息はちょっと頼りなさそうだが、ギリェルモ・エラダは尻尾を簡単には出さないだろうね」

 アダムの後をロサが引き継いで教えてくれた。

 とりあえず、発表の場で得た繋がり、ムサ・バガウティーを追うことにしたのだが、次の日、ベッドの上で亡くなっているのが、使用人により発見された。
 争った跡や外傷があるわけでなく、本人がこの頃、体調がよくないと言っていたことから、大して調べることなく突然死と診断された。

 彼が亡くなったことで、またプッツリと、辿っていくべき糸が切れてしまったのである。
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